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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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合流

「不気味なくらい静かだな。

 これは、ただ避難しているからだとは思えない」


 このイセタウンへ来る時にも使ったレンタカーのアクセルをベタ踏みしながら、つぶやく。


「イラコ、次を右折して」


 だが、エステに右折を指示されたので、すぐにのんびりとした感想は引っ込めた。


「よっしゃ、合図で右に体重を寄せてくれ!

 1、2の……3!」


 言いながら、やや乱暴にハンドルを回す。

 ドリフトに耐えるだけの足回りなど、期待すべくもないオートマのバンである。

 夜のハイウェイをほぼフルスピードのまま右折した結果、曲がり切れずに左側の前輪後輪で二輪走行するような形になった。

 そこで活躍するのが、女性陣。


「「「「「せーの!」」」」」


 助手席のエステと、後部座席のマミヤちゃん、シレーネさん、ディート。

 それから、荷台のママが一斉に右側へ体重を寄せることで、片輪走行する形で傾いていた車体はどうにか元に戻り、本来の四輪走行状態がカムバックした。


「おー、アトラクションみたい」


 シートベルトはしているものの、当然のように上下へ跳ね飛ばされそうになるエステを空いた手で押さえつけてやっていると、なかなかふてぶてしい感想を漏らしてくる。


「のん気なもんだな。

 こっちは、慣れないバンでの曲芸運転だから、事故らないよう、なけなしの精神を削ってるってのに」


 ただでさえ月に相当する衛星が存在しない上、景観保持の観点から、街灯などが極端に少ないイセタウンのハイウェイだ。

 暗闇の中、ハイビームにしたヘッドライトを頼りに爆進する。

 すでに郊外の方へ出ているため、歩行者などが急に飛び出してくる心配をほぼせずに済むのが幸いだった。


「イラコ! 死ぬ気でエステを押さえてなさいよ!

 ケガでもさせたら、承知しないんだから!」


「あーあー、任せとけい」


 ディートの言葉に、バックミラーすら確認せずうなずく。

 今見るべきは、前方。

 鈍重な車体で夜道をカッ飛ばしている以上、後ろを気にしている余裕は——。


「——わわ。

 ユカタがズレた! 胸が!」


「——なんだと!?」


 シレーネさんの言葉を聞いて、即座にルームミラーへ目を向けようとする。


 ——パリン!


 だが、ルームミラーは今時珍しい帝国硬貨の投てきによって粉々に砕かれ、俺の視線を受け取ることはなかった。


「イラコ様ー?

 さすがに今は、よそ見をしている場合ではありませんよー?」


「はいい! 安全運転でやらせて頂きます!」


 ママの言葉に背を正す。レンタカー屋さん、ごめんなさい!


「イラコ殿下、アマテラス艦隊から通信!

 私が送っている位置情報をトレースし、合わせてくれるそうです!

 いっそ、一度停車して、迎えを待てばいいのではないでしょうか?」


「いや、惑星上の基地を襲っている連中がM2を使っていて、しかもアマテラス艦隊の動きを把握している以上、すでに追っ手は差し向けられているはずだ!

 迎え撃つにしても、できる限りイセタウンから離れないと、アルファードたちに顔向けができない!」


 愛用のタブレット端末で大気圏外(うえ)と連絡を取り合ってくれているらしいマミヤちゃんに、車の速度は落とさず答える。


「M2は全領域対応型の機動兵器。

 当然、単独での大気圏離脱能力も備えていて、飛行可能。

 アマテラス艦隊を追ってイセタウンに飛んでくるのは、朝飯前」


「電磁シールドの防御力にモノを言わせて空気抵抗殺してるのが大きいし、当然、相応の加速時間は必要だけどな」


 銀河最新鋭の機動兵器は、伊達じゃない。

 そこのところを、開発にも関わる専門家のエステと、ついでに俺が、門外漢に近いマミヤちゃんへ解説する。


「つまり、首尾よくアマテラスと合流できたとして、ほぼ同時に敵を迎え撃たなければならないわけか——誰か、安全ピンか何か持ってないか?」


「持ってますよー」


「ママ上殿、かたじけない」


 何やらゴソゴソしっ放しな気配を感じさせるシレーネさん。慌ててユカタのまま出てきたけど、着替えた方がよかっただろうか?


「あるいは、賊の方が早い可能性もあったけど、さっさと動いた甲斐があったわね」


 ディートがそう言ったのは、遥か雲上の彼方から、この車を捉える視線に気付いたからだろう。

 これは、俺やママが日頃から見せているような、生物の気配を察知する技ではない。

 光学カメラ越しの視線を感じ取るパイロットの本能だ。


 ——ドオオオォォ……!


 次いで、上空から鳴り響くのは、大昔のジェット旅客機とどちらが上だろうかと比べたくなるほどの噴射音!

 空気のない世界を抜けて惑星上に降りてきた三隻もの戦艦が一斉にプラズマジェット噴射をしていると、寝た子が目を覚ますどころか、死人も墓から飛び出してきそうなやかましさだ。


「マミヤ少尉、道路脇の適当な場所に着陸するよう伝えてくれ!

 こっちが直接向かう!」


 その爆音に負けないよう、俺は後部座席に向かって叫ぶのだった。




--




 宇宙空間を航行している時は当然ながら比較対象できるブツなど周囲にないし、宇宙港や宇宙基地などに接続している際は、それら拠点自体がさらに上をいく巨大建築物であるため、やはりスケールを実感することはない。

 しかし、イセタウンに立ち並んでいた昔ながら——いっそ古代といっていい——の木造建築物に目が慣れた状態でアマテラス、クシナダ、フレイヤの三隻を迎えてみると、やはり、宇宙戦艦というものは人類の叡智を結集した巨大兵器であるのだと、しみじみ理解できた。


 輸送及び艦内製造に特化した結果、箱型の船体に二基の後部スラスターを取り付けた外観となっている給糧艦——アマテラス。

 船体両舷に巨大なマシンアームと、艦そのものを覆えるほどバカデカい電磁シールドが取り付けられたシールド艦——クシナダ。

 サメを思わせる攻撃的かつ流麗なシルエットの艦首に、分厚く巨大な電磁ブレードを備えた赤き斬撃艦——フレイヤ。


 全長400メートル。それぞれ200名を超す乗員が収まる宇宙戦艦が三隻もハイウェイ脇へ着陸すると、いきなり巨大化したスケール感に、どこか別の世界へ紛れ込んだのではないかと思わされる。

 だが、脳をバグらせている場合ではなく……。

 すぐさまアマテラスへと乗り込んだ俺は、素早く艦内を歩むのであった。


「——乗れてない人員は?」


「お爺ちゃんやモリーさんなど、まだ惑星上(おか)に残っていた一部を欠いている状態です!」


 ——カッ! カッ! カッ!


 ……と、普段なら軍靴の音を鳴らす廊下に、これだけはちゃんと履き替えといた革靴の足音を響かせる俺に、マミヤちゃんが黒髪をはらいながら答える。


「メケーロがいない分は、なんとなくついてきてるイラコママがどうにかしてくれる。問題ない」


「はいー。

 せっかくついてきちゃいましたので、ママがんばっちゃいますー」


 歩幅の関係上ついてこれないため、俺にお姫様抱っこされる形のエステと、いつも通りニコニコ笑顔で滑るように歩むママが軽く請け負ってくれた。

 ……うん、そういや、なんでママいるんだろ?

 冷静に考えると先生と一緒に留守番していてもらうべきなのだが、特に疑問を抱くこともなくここまで同行されてしまっている。

 まあ、いいか。ママいいか。


「んで、ディートがフレイヤに戻ったのは自分の艦だから当然として、シレーネ殿下をクシナダの方へ向かわせたのはどうしてだ?」


 俺が尋ねると、無表情ながらもふんすーと鼻息を荒くしてみせるエステだ。


「シレーネが乗っていた王立連合主力M2(ピノキオ)は、こんなこともあろうかと改修してある。

 今更裏切るも裏切らないもないし、戦力は有効活用すべき」


「普通の兵卒ならそうなんだけどなー。

 シレーネさん、死なせるっつーか傷一つ付いてもまずい立場の人だぞ?」


「自分で出撃しようとしてる第四皇子が面白いことを言ってる。

 それに、改修したピノキオは、イラコ機(タイゴン)よりもディート機(ベレンジャー)よりも、対多数に向いた機体。

 何も問題はない」


 こいつがそう言う時は、真実、問題がない時。


「そっか……。

 なら、自分が死なないよう、フンドシ締め直さねえとな!」


 ゆえに、俺はキリリと顔を引き締めるのだった。


「え?

 イラコ殿下は、黒のトランクスパンツを愛用しているのでは?」


「なんで知ってんの!?」


 マミヤちゃんの言葉で、すぐにシリアス顔は崩れた。

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― 新着の感想 ―
有能な従者はご主人のパンツくらい把握してて当然でしょ(すっとぼけ)
そこは『フンドシってナニ?』じゃないの!? マミヤさんフンドシが下着の一種だと認識している、だと!?
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