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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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イセ新選組、蜂起ス。

 宇宙港に接続されていた銀河帝国軍所属の戦艦群が、ハッキングにより荷電粒子砲や光子魚雷による破壊をもたらしていた一方……。

 惑星レクの地表においてもまた、電撃的な武力蜂起が行われていた。

 各地に存在する領主軍の基地が、あらかじめ仕掛けられていた爆発物や、あるいは密かに惑星上へ持ち込まれていたM2——ドンナーの攻撃により、次々と制圧されていたのである。


 各地を襲うドンナーたちの外見的特徴は、いずれも、青空を思わせる浅葱(あさぎ)色に胴体部が染め上げられていること。

 そのうえで上腕部に白い山形の模様——ダンダラがペイントされており、これはジャパンの歴史に明るい者ならば、幕末の動乱時代に活躍したシンセングミを模しているのだと理解できた。


 最後のサムライ集団を彷彿とさせるのは、機体カラーだけでなく、武装もである。

 万力じみた形状のマニピュレーターに、サブマシンガンを思わせる形状の粒子小銃を保持しているのは、銀河帝国軍が運用している通常装備の機体と同じ。

 しかし、惑星レク各地の軍事基地を襲ったドンナーたちは、それとは別に、各々の腰へカタナを装着しているのであった。


 カタナ、そう、カタナだ。


 オプション装備として用いられる近接戦用の兵装——折畳式電磁ブレードとは、全く異なる兵器である。

 いや……鈍器か。

 M2に用いられる装甲材の見た目を、サムライが使う武器に寄せただけであるそれの実態は、単に殴打して使うだけの棒切れであった。

 だが、それがもたらす心理的な効果たるや、絶大なり。


『ど、ドンナーに……!

 サムライのドンナーに、襲撃されている……!』


 ある基地が、この惑星における頭脳である領主邸へと入れた通信が、良い例。

 大昔のブラウン管テレビを彷彿とさせるドンナーの頭部——つまり、生産性を何よりも重視していて、人型でありながら人間的な感情を一切感じさせない鋼鉄の巨人が、腰にカタナを装着しながらこちらを見据えてくるのだ。

 言いようのない剣呑さが、兵装としての性能以上に、襲撃されている側の精神を削っているのである。


 だが、サムライ・ドンナーたちよりも領主兵たちに精神的な威圧感を与えている存在は、他にいた。

 そのM2は最も強固に守られている襲撃地点——惑星レク首都郊外の軍事基地において、まさしく縦横無尽の戦いぶりを見せていたのである。


 月に相当する衛星が存在しない夜闇の中、18メートル級の巨体がバッタのごとく跳ね回り……。

 遅れて通過していく荷電粒子ビームの光によって、白一色の装甲が照らし出されていく……。

 頭部に備わった四つものカメラアイが宿すのは、ただ視界を得るためだけなら不要の凶暴な光であり、これもまた、敵に対する心理的な威圧を目的とした備えであるのが見て取れた。


 この機体が武器とするのは——蹴り。

 電磁光に輝く足の裏……電磁ソールとでも呼ぶべきそれを、華麗な足技により、変幻自在に突き出してくるのである。

 通常のM2からは考えられないほど薄く少ない装甲と、それにより得られた関節可動域の広さが可能とする俊敏な回避運動と蹴撃(しゅうげき)

 これを相手取る領主軍のドンナーにとっては、まさしく格が違う相手であった。


 都合十機以上ものドンナー……M2中隊規模の戦力が出撃したというのに、この白いM2にはかすり傷一つ与えられず、ばかりか瞬く間にインファイトへ持ち込まれ、電磁の蹴りで撃墜されていくのだ。


 これは……!

 この白いM2は……!


『た、タイゴンだ……!

 白いタイゴン——タイゴン弐式が、反旗を翻している』


 ある領主軍のパイロットは、通信ウィンドウに向けてそう叫んでいるところで、機体の電磁シールドも装甲も貫いてきた電磁ソールの一撃により蒸発した。

 死の蹴りを繰り出した白いM2は、人型機動兵器にまったく不要である両腰のポケットへと両手を突っ込みながら、燃え盛る基地の中でそびえ立っていたのである。




--




「だらしねえもんだなあ、おい。

 こんな連中が、俺たちのことを頭から押さえつけていたのかよ」


 イセ新選組隊長——アルファード・ヤマモトは、いつも通りの格好をしたまま愛機のコックピットに収まり、自分が先頭となってもたらした惨状を見つめていた。

 正面に備わっている姿見めいたメインモニターは、弐式のカメラアイが捉えた映像をクリアに映し出している。

 軍事基地というよりは、倉庫を寄せ集めた流通センターじみているこの基地が、あちこちから立ち昇らせている爆煙を……。


 カメラアイを下部に向ければ、逃げ惑っている領主軍の兵士たち。

 漆黒の銀河帝国軍士官服を身にまとい、アルファードが物心ついた時から我が物顔でこの惑星を闊歩していた連中も、同じく黒一色に染められた野戦服で地元の住民を威圧していた連中も、今は捕食者に襲われた小動物のよう。


「なんとも言えねえ快感だなぁ……。

 本性(ココロ)表情(カオ)野望(ユメ)……。

 隠していたリアルをさらけ出してのハイド&アタックはよ」


 アルファードがそうつぶやいている間にも、背後に控えていた二機のサムライ・ドンナーたちが前へと歩み出し、基地の掃討戦へと移っていく。


 ——ギュイイイィィン!


 彼らのアクチュエーター駆動音は、やや重い。


「やっぱ、音が悪いよなあ。

 エステが設計した帝国軍主力M2(ドンナー)は、本来こんな音を出す機械じゃないぜ?」


 眉をしかめながら、つぶやく。

 手下——イセ新選組隊士たちが乗っているのは、イラコとの運命的な出会いを演出するため、人民入植共同体の工作員に横流ししてやった機体と同様、正規ルートでは製造されていないデッドコピー品なのだ。

 それはつまり、ドンナーというM2が祖先機であるタイゴンの基礎設計を受け継ぎつつ、部品公差を大きくすることで生産性の高さを確保していることをも意味していた。

 大元のタイゴン自体が、人間に近い関節可動を確保するという単純明快な思想に基づいて設計されているからこそ、エステもそれが可能だったのだろう。


 と、脳内で身内(エステ)を褒めてやったところで、反帝国連盟から供与されたドンナーが、正規品よりいくらか性能で劣る粗悪品であることが変わるわけではない。

 首都を防衛するこの基地があっさりと陥落したのは、アルファードとタイゴン弐式の活躍があってこそである。


「やっぱ、欲しいよなあ。

 もっと頼りになる味方が。

 俺とカワハラの二枚看板じゃ、帝国とやり合うには力不足だぜ」


 今頃は他の基地を制圧してるだろう特攻隊長のいかつい顔を思い浮かべながら、携帯端末を取り出す。

 そろそろ、報道などでも惑星レク各地での蜂起や宇宙港での騒ぎが報じられて、イラコもそれを目にしている頃。

 あるいは、アマテラス艦隊に残している当直のクルーから、すでに連絡を受けているかもしれない。


「んで、あいつの尊敬している爺ちゃんが、俺の代わりに説得してくれてるってわけだ。

 これはきくぜ?

 イラコのやつにとっちゃ、親父である銀河皇帝よりもオヤジの立場なのが、爺ちゃんだ」


 祖父イゾーロの、西郷隆盛を思わせる顔を思い浮かべながら、つぶやく。

 要するに、である。

 イセ新選組……ひいては、反帝国連盟の旗印となるようイラコへ促すには、頃合いなのであった。


 ——PRRRRR!


 このような時でも回線がパンクすることなく情報のやり取りをできるのは、タキオンネットという情報インフラの優れている点であろう。


『アルファードか? 私だ』


 電話の相手——祖父イゾーロは、ほんの数秒で通話に出た。


「よう、爺ちゃん。

 イラコの説得はどんな塩梅だ?

 こっちは、予定通り惑星上の基地を襲撃しているところだぜ。

 遊撃隊長によるアマテラス艦隊のハッキングは、コケたけどな」


 ここまでは、おおよそ予定通り。

 ハッキングの失敗も、相手がエステの設計による戦艦であることを思えば、ある程度は織り込んである。

 ゆえに、ここからも予定通りであると考えてしまったのは、これが初の実戦となるゆえの浅はかさであっただろう。


『アルファード。

 残念ながら、イラコ君はお前に転ばないだろう』


 電気信号に変換された祖父の声は、生のそれよりも硬質なものとして感じられた。

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― 新着の感想 ―
そもそも皇族の立場としては無難に生きるなら反体制派に所属するのはデメリットしかないから 鎮圧する側に回るよね
そりゃあ敬愛する……敬愛する? 多分敬愛するママに銃口向けた組織と仲良しこよしは出来んわなって…… そも自分より弱い相手に何故? って根本的な問題もあるし
手を出すなって言ったのに余計な事したアイツらのせいかな?
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