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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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イセ新選組と老人たちの極めて一方的な戦い 後編

「よし……それじゃあ、突入だ」


 プランB——給糧艦アマテラス制圧作戦には、複数の班が投入されており……。

 そのうち一つを率いる班長ヤンキーが、ドッキングアーム内から、アマテラスへと接続しているハッチの開閉操作を行う。


 ——プシュリ。


 ……という音と共に、ドッキングアーム側と合わせ、何重かの隔壁になっている人送用のハッチが、一気に開いていった。

 意外な事実であるが、通常、戦艦のハッチというものは、中から閉め切りにすることができない。

 これは、不慮の事故で外へ置き去りにされた船外作業員が、せっかく艦まで辿り着いたのに内部へ入れず、酸素切れで死亡するという悲惨な事故を回避するため……。


 冗談のような話だと、後世の人間には思えるだろう。

 しかし、現実として、二重三重に不幸が重なった結果、通信機器も不調をきたしてそのような最期を遂げた事例というのが、宇宙入植時代の黎明期に複数発生してしまっているのだ。

 その反省を活かした技術者たちは、宇宙船のハッチは必ず外部から開けられる設計にすることを、義務付けていたのである。


「行くぞ……」


 その恩恵を受け、突入の先陣を務める班長ヤンキーだ。

 通常、この手の部隊において、指揮官役が真っ先に敵陣へ突っ込むということはあり得ない。

 指示を下す者が倒された場合、残った者たちはどうすればよいのだという話になるからである。


 しかし、彼らは正規兵ならぬイセ新選組。

 打倒帝国の志を燃やす、地元超大好きなマイルドヤンキーたちの集まりであった。

 ヤンキーの世界においては、漢を魅せてこそ人を率いる資格がある。

 ゆえに、一番槍という最も危険な役割を、班長ヤンキーが引き受けているのだ。


「異常はないな」


「ああ……外の騒ぎが聞こえていねえはずもないんだが」


「爺さんと婆さんだろ?

 耳が遠くなってて、聞こえないんじゃないか?」


「だとしたら、楽ができていい。

 変に混乱してて、荒事になったら大変だからな」


「違いねえ」


 軽口をかわしながらも、互いの死角をアサルトライフルの銃口でカバーしながら歩む。

 戦艦内の通路というのは、メインストリートと俗に呼ばれるそれを除けば、狭いのが相場。

 まして、彼らが突入口に選んだハッチは人送用のものであったから、成人男性二人分ほどの幅しかない通路を中腰で歩んでいくことになる。

 突入の順序こそあり得ないデタラメさだが、こういった身のこなしだけは、アルファードやフリーレーン自由商業同盟の生き残りが教導しただけあって、なかなか堂に入ったもの。

 そのアンバランスさが、イセ新選組という組織をそのまま表しているといえた。


「立派な装備だな。高かっただろう?

 壊すのは惜しいな」


 そんな彼らにかけられた声は、曲がり角の向こうから聞こえてきたのだ。


「誰だ!?」


 ——ジャカカッ!


 各パーツのきしむ音を響かせながら、イセ新選組の各隊士がアサルトライフルの銃口を、前方に向ける。


「おいおい、興奮するな。

 こっちは、丸腰だ」


 そう言いながら、両手を軽く上げてゆっくりと通路に姿を現した男……。

 それは、あまりにハンサムな顔立ちの——ハゲたイギリス男だったのである。


「アマテラスで働いているジジイの一人か?」


「ああ、商売に失敗してな。

 最初は、養蜂家だ。

 それが駄目だったんで現場監督に転職したんだが、そっちはもっと駄目だった。

 見学に来た連中から、『安全帯を着けろ』だの『もっとちゃんとヘルメットを被れ』だの、色々と口うるさく言われてな。

 結局、現場作業員(ワーキングマン)としてまともに過ごした時間は、30分にも満たなかっただろう」


 見るからに非武装と分かるラフな格好の初老が放った言葉に、新選組隊士たちは互いの顔を見交わす。


「一体、なんの話をしてるんだ?」


「脱サラ開業が上手くいかなかったって話だろ」


「うちの親父も、ラーメン屋やって三年もたなかったなあ……」


 しみじみと漏らす隊士の一人である。

 飲食の世界は過酷な戦場。生半可な覚悟で立ち入ってはいけない世界なのだ。


「まあ、とにかくアマテラスで働いている爺さんの一人であるのは、間違いないみたいだな?

 悪いが、拘束させてもらうぜ。

 なあに、悪いようにはしねえさ」


 班長ヤンキーが手招きすると、ハゲたハンサム男がニコリと笑いながら、こちらへ歩んでくる。

 見た者を問答無用で安心させるあまりにも男前な笑みを浮かべ、軽くとはいえ、ホールドアップしながらゆっくりと進んでくるのだ。

 給糧艦とはいえ、戦艦の制圧作戦という危険で重要な任務に臨んでいるヤンキーたちが気を緩めたのは、致し方のないことといえるだろう。

 だが、あと数歩で接触可能という距離まで近付いてくると、ハンサム男は一瞬で無表情となり……。

 恐るべき勢いで踏み込むと、班長ヤンキーが手にしたアサルトライフルの銃口を掴み上げたのだ。


「なあ——」


「——シッ!」


 班長ヤンキーに、驚く暇は与えられない。

 そうするよりも先に、ジャブと裏拳を合わせたかのような右手の一撃が、その鼻っ柱を押し潰していたのである。


「っうお!?」


 ハンサム男の攻撃は、それに留まらない。

 班長ヤンキーが悶えている間に、銃口のみならず、銃身とトリガーをも確保。

 そうして、下に向けたアサルトライフルのトリガーを引いたのだ。


 ——ダアンッ!


「——ぐおっ!?」


 発射された弾丸が、班長ヤンキーの左ももを撃ち抜く!


「ゴム弾を使っていたか、いい心がけだ。

 痛い目をみるだけで済むぞ。

 運が良ければな」


 非殺傷性のゴム弾といえど、至近距離から直撃すれば、金属バットのフルスイングか、あるいはプロボクサーのストレートに近い衝撃を受ける。

 到底耐えられずに悶える班長ヤンキーの後頭部を、奪ったライフルの銃床で殴りつけたハンサム男が、残る新選組隊士たちを無感情に見据えた。


「う、うおお……!」


「うああ……!」


 班長ヤンキーを失った隊士たちが、それぞれアサルトライフルを構えるが……撃てない。

 至近距離ゆえに、同士討ちの恐れがあるからだ。

 それに対し、ライフルを捨てたハンサム男が、次から次へと無駄のない拳打や蹴り、あるいは投げ技を見舞っていく。


「メーデー!

 乾いたスポットライトが……牙を剥いてる!」


「うるせえよタコ」


 他班へと送ろうとしたポエミーな通信は、しかし、途中で打ち切らされた。




--




 また、艦内のある場所では、タクティカルベストにリボルバーの早撃ち六連射を受けたヤンキーが、ベスト越しに内臓を襲った衝撃により、すでに格闘戦で倒された仲間たちと同様、気絶し倒れ……。


「駐車場係の仕事さえない俺にとっちゃ、貴重な職場なんでな。

 悪く思うなよ」


 葉巻を口にした老人……。

 消耗品(エクスペンダブル)という言葉から最も縁遠い男が、感情のない眼差しでつぶやいた。




--




「オッケーイ!」


 ——ズドンッ!


 ……またある箇所では、醜い顔をしたエイリアン退治から州知事に至るまでどんとこいのマッチョメンな老人が、銃声の嵐を巻き起こしていた。

 いい音でしょう? 余裕の音だ。火力が違います。




--




「……」


 また、ある場所では、聖職者のような表情を浮かべた黒人の老爺(ろうや)が、しかし、ガラス玉のように無機質な瞳で、倒れたヤンキーたちを見下ろしており……。

 そっと、左手に巻かれたスマートウォッチのタイマーが止められる。


 無軌道な若者たちが、なんらかの思想にかぶれてこのような襲撃を企てた……。

 あるいはそれは、なんらかの不平等さを是正しようという心の表れであったのかもしれない。

 しかし、それは本来、このような行為に頼らず、正しき手順でなされるべきであり……。

 彼らが生み出そうとした不平等こそが、今ここに平等化(イコライズ)されていた。




--




 要するに、である。

 プランBで送り込まれた新選組隊士たちは、残らず返り討ちにあっていた。

 他ならぬ……ジジイたちの手によって!

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― 新着の感想 ―
こんなヤツラがそろいもそろって 除隊後の開業で失敗してるんだよなぁ・・・
知 っ て た
 なんで艦内が往年のハリウッドスターまみれなんですかねぇ!!?  その内米だけじゃなくて、英のどれだけ命を落としても平然と職場復帰する伝説のスパイ(を演じた歴代のお歴々)とかも出てくるでしょ!
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