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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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進化せしイセタウン

 さすがは現場仕事をいとわぬ者も数多いマイルドヤンキー属性の持ち主たち。

 スズメたちが鳴き出すのとほぼ同じくアルファードたちが訪ねてきた……つーか、帰宅してきたのは、惑星レクの時刻で午前七時となる少し前のことであった。


「あー……頭痛い」


 というのは、胸元ゆっるゆるの状態で頭を押さえていたディートの言であるが、飲み過ぎで調子が狂っているのは俺も同じ。

 第三皇女との連続ドロー記録をまたも更新したのだと理解しながら、とりあえずアルファードたちには待っていてもらって、全員身支度を整える。

 具体的にいうと、昨夜に続き浴室を借りての朝シャンなど。

 今日はちゃんと男女明白に分かれているので、昨晩のようなピンチに満ちた入浴ではない。

 せいぜい、どこの母子も当たり前に行っているように、一緒に入浴したママが髪を洗ったり髭を剃ったりしてくれただけだ。

 普段は頑固一徹な我が縮れ毛たちも、相手がママとなると、死の恐怖からなされるがままトリートメントを浸透させるのである……それでも、縮れたままだけど!


 その後は、朝餉の用意。

 すでに支度を始めていたアルファードたちに加わって、準備を進める。

 さしものママといえど、俺をマ枕に寝かせたままではなんの支度もできないわけだが、そこで活躍したのが、昨晩は泊まっていたらしいメケーロ爺ちゃん。


「準備はバッチリだぜ。

 『復活したイケオジシェフが『プロテイン・ダイナミクス社』総帥の母が丹精込めて育て上げたニワトリの卵と乳牛のミルクをふんだんに使った卵液へ一晩浸すことでしみしみにしたハチミツ風味のフレンチトーストのサワークリーム添え』のな。

 こいつは、火加減が命だ。

 お前たち、弱火でじっくり焼き上げろよ!」


「「「押忍!」」」


 マイルドヤンキーの世界は、年功序列の世界。

 大人数の会合も想定しているのか、業務用サイズの調理器具が並ぶ厨房でメケーロ爺ちゃんの指導を受けたアルファードたちが、じっくり弱火で『復活したイケオジシェフが『プロテイン・ダイナミクス社』総帥の母が丹精込めて育て上げたニワトリの卵と乳牛のミルクをふんだんに使った卵液へ一晩浸すことでしみしみにしたハチミツ風味のフレンチトーストのサワークリーム添え』(まだサワークリーム添えてない)を焼き上げていく。


「あらあらー。

 ママ、今朝はとっても楽ができてしまいましたー。

 メイドとしては失格ですねー」


「いや、イラコママは別に爺ちゃんちのメイドじゃねーんだけどな」


 なんともいえぬ微妙な表情のアルファードはさておき、俺とママも協力して、大人数用の座卓がいくつか設置されている居間に、出来上がった朝食を並べていく。

 やはり、女性陣の身支度は時間がかかるということだろう。


「おー、メケーロのフレンチトースト」


「ジャパン風のお食事が続いていたので、少しほっとしますね」


「この香りは、間違いない……アマテラスで育てているジャージー種のメルセデスちゃんから搾ったミルクを使っているな!」


「え?

 イラコの艦って、飼ってる牛一頭ずつに名前つけてるの?」


 ようやく、昨日と同系統の旅装へ着替えた女性陣が合流したところで、準備完了、朝食の時間となった。


「ヤミー……。

 こいつは、ヤミーだな」


 何しろ、幼い頃からイイもん食って育っている俺やエステが、美味い美味いと言いながら食っているアマテラス製の卵とミルクがたっぷり使われたフレンチトーストだ。

 イセタウンの新鮮な海の幸によって育ってきたイセ新選組の三人には、普段と系統の異なる美味であり、アルファードも童心に帰ったかのごとくバクバクとこれに食いついている。


「へへ……。

 おれっちたちは普段、米の飯食ってるからパン食だとどうにも物足りなく感じるもんだが……。

 こいつは、ちげえな。

 ズーンと腹にたまってきやがる」


「フゴフゴ! フゴフゴゴ! ……っはぁ。

 ああ、カワハラの大きなハラもみちるってもんだぜ」


 カワハラとゼファーのやつも、これには大満足だ……別にカワハラ、デブキャラじゃねえけどな。

 特にゼファーの方は、大口開けてフゴフゴとこれに食らいつくくらい、気に入ったらしい。

 ラド婆ちゃんと、宇宙港のアマテラスで牛さんの世話をさせられてるらしい『プロテイン・ダイナミクス社』総帥レオンにこのことを教えてやったら、きっと喜ぶことだろう。


「フ……まさか、あの日の三等兵がこうも料理上手になるとはな。

 長生きはしてみるもんだ」


 イゾーロ先生がこう言っているということは、メケーロ爺ちゃんは若い頃、フリーレーン自由商業同盟の兵士だったのだろうか?

 会いに来たのは、その縁かな?

 まあ、深くは聞かないでおこう。

 おそらくは昨夜、男二人でハードボイルドな語り合いをしたことだろうから……。


「んで、あそぼっつってたけどよ?

 なんかアテがあるのか?

 お前が知ってるようなイセタウンのスポットって、当然俺も知ってるし、マミヤ少尉たちの案内は自分でするつもりでいたんだけど?」


 濃厚なフレンチトーストとの相乗効果でさらに美味しくなる朝のビタミン源。

 フレッシュ野菜のサラダをもりもり食べながら、アルファードに尋ねる。


「おいおい、男児も町も、三日会わずばだぜ?

 もう、イセタウンはお前やエステの知ってるイセタウンじゃねえ。

 未知なる広がる夢の町、お前に見せてやんよ」


「まー、あんたがそうまで言うんなら、SNSとか調べてネタバレ踏むのはやめとくかね」


 楽しい朝食の席……。

 グラスのオレンジジュースを飲み干した俺は、そう答えるのだった。




--




 イセタウンの中核となっているのは、各種の資料を基に再建された伊勢神宮であり、そのお膝元に広がっているのが、やはり銀河歴現代の技術を用いて再建されたエドやメイジの時代を思わせる木造建築。

 これらは、そのまま土産物を売る商店や、ニンジャなどのちょっとした仮装を楽しめるコスプレショップとなっており、観光都市としての心臓部にもなっている。


「はーい!

 あの『勇者武闘タイゴン』の実質後継機!

 きっと多分、実質改良機種!

 タイゴン弐式と写真を撮ったら、SNSにハッシュタグ『イセタウン最高!』と入れて投稿してくださーい!」


 その入口部で、いつの間にか宇宙から下ろしていたらしいタイゴン弐式がハンズインポケットのまま直立し、見たことないほど大勢いる観光客向けのフォトスポットと化しているのは、まあいい。


「はーい!

 『イラコ君赤福』! 名物『イラコ君赤福』はこちらだよ!

 保存料なんか入ってないからね! 賞味期限が短いのには、注意してね!」


 どの土産物屋にも並んでいるのが、皆さんご存知『イラコ君赤福』。

 地球文明時代の伊勢から脈々と受け継ぐ名物菓子である赤福の上に、カラフルな練り切りで作られた俺のデフォルメ顔をトッピングした逸品だ。


「はーい!

 『スーパーイラコ君』とのチェキ会場はこちらでーす!

 ただいま一時間待ちとなっておりまーす!」


 あちらでチェキ待ちの列を生み出しているのが、ご当地ゆるキャラの『スーパーイラコ君』。

 やはりデフォルメした俺の姿を着ぐるみにしたキャラクターだが、本物との差異として、瞳が青く、縮れ毛は金に染まって天へと逆立っていた。


「君も第四皇子になれる!

 『イセ新選組イラコ皇子なりきりセット』! 数量限定で販売中だよ!」


 繁華街でシルバーとか扱ってそうな感じのチャチな出店で売られているのは、ゼファーや他の売り子たちが着ている水色と白のダンダラ模様で染め抜かれたTシャツと、しょっぱい黒の天然パーマカツラを抱き合わせたセット。

 これは……。

 今のイセタウンは……。


「おー。

 右を見てもイラコ。

 左を見てもイラコ」


「……肖像権ンンンンン!」


 テディベアを抱きながら感心したようにつぶやくエステの言葉に、オーダーメイドスーツでまたも地面に突っ伏しながら、俺は叫んだのであった。

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― 新着の感想 ―
ちゃんと高等教育と淑女の振る舞いを身につけたハイソな生まれながら、一卒を率いて誰よりも前線に出向くノブリスオブリージュの鑑みたいなエクストリーム自殺行為も辞さない責任感を持ち、それでいて畜舎作業なんて…
楊弓屋「はーい、この回転する大きな的の一番細い所に3本の矢の内1本でもこの弓で当てられたら、乗用車がもらえますよー。 お、お客さん挑戦しちゃう? さーさお試し運試し、当たれば車の運試し! …………あ〜…
皇室の許可さええられれば肖像権なんて⋯⋯ねぇ? ところでイラコ様、この木刀一本お持ちになりません? ええ、ちょっと構えていただいて写真1枚取るだけでいいんで はい、ついでに写真にサインもいただけたら…
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