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光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~  作者: 世界


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謎の手掛かり

「なんだ、お前ら宿探してんのか?だったらうちに来いよ。二部屋くらいならよゆーだぜっ!」


 そう語るテリーは胸を張り、自信満々な様子だ。テリーの事情を聴きだそうと世間話をしていた所、流れでジャンヌ達が宿を探していることを話してしまったら、これだ。一応、渡りに船といった展開ではあるが、なにせ相手は子供である。ジーナのようにしっかりしている子ならともかく、やや粗暴な男の子といった印象のテリーの言葉をまるっと信用していいものか、そこはかとない不安がよぎっていた。

 

「テリー、君の家は宿屋なのか?」

 

「ああ、今はちょっと事情があってちゃんと店開けてないけど、お前らくらいなら大丈夫!」


「……大丈夫かしら?」


「まあまあ、せっかくだし行ってみませんか?」


 同じような年頃で親近感が湧いたのか、ジーナはテリーをすっかり信頼している様子だ。ジャンヌにしてみても、ここで疑って文句を言った所で宿のアテが見つかる訳でもない。それになにより、さっきの連中がどこかで待ち伏せしている可能性もある。ここはひとまずついて行ってみようという結論になり、一行はテリーの案内で街を進んでいった。


 そうして辿り着いたのは、街の中心部から少し離れた川辺に立つ、小さなペンションのような建物だった。ただ、テリーの言う通り今は営業していないらしく、周辺は火が消えたように静かである。雰囲気はとてもいいのに、何故営業していないのかが気になる所だった。


「とーちゃん、ただいまーっ!」


「テリー!どこへ行ってたんだ。こんな時に……ん、なんだ?あんた達は」


「すみません、ご子息についてくるよう言われまして。ご迷惑かとは思ったのですが、実は――――」




「――ほんっとうに、申し訳ございません!うちのバカ息子がとんだご迷惑を!まったく、何を考えているんだ!?お前は!」


「ごめんよぅ、とーちゃん……でも、炎に咲く花があれば、かーちゃんが……」


 ソロから事情を聴いたテリーの父親ケインは、平謝りをした後で烈火のごとき怒りをみせた。テリーも悪いことをしたと思ってはいるのだろう、父親からカミナリを落とされて、すっかり涙目になってしまっている。


「まあその辺にしてあげて下さい。テリー君にも何か事情があったようですし」


「いえ、そんな!あなた方が来てくれなかったらテリーはどうなっていたか……まったく、仕方のないやつだ。テリー、ちょっと裏へ行って薪の支度をしてこい」


「はぁい……」


 すごすごと肩を落として去っていくテリーを見つめて、ソロはそっとアーデを付き添わせた。サシャの時の轍を踏まない為だ。これでもしもさっきの連中が来ても、アーデがいれば即座にソロへ伝わるはずだ。

 そうしてテリーの姿が見えなくなると、ケインは溜息を吐きながら事情を語り始めた。

 

「実は今、妻が病を患って入院しておるのです。即命に関わる病気でもないんですが、かなり長患いになりそうでして。うちは普段、夫婦でやってる小さな宿ですから、あいつがいないとお客も取れないもんで……あいつは、それを気にしているんだと思います。それで、炎に咲く花だなんて噂にすがって……」


「そうだったんですか。ところで、つかぬことを窺いますが、その炎に咲く花というのは本当にあるのですか?」


「まさか!そんなものがあったら、大変な騒ぎになっていますよ。それこそ、領主様や国王様が血眼になって探すでしょうね」


「それもそうですね」


 ――あるわよ、その花なら。


「えっ!?」


 突然、ハバキリから衝撃の事実を聞かされたジャンヌが飛び上がって大声を上げた。ケインもジーナもびっくりして目を白黒させているが、ジャンヌはまさかハバキリの事をケインの前で話す訳にもいかず、たははと照れ笑いをしながら恥ずかしそうに顔を赤らめ、座り直した。

 

「それはともかく、皆さんは宿が無くて困っているというお話でしたね。もしよろしければ、このままうちに泊まっていってください。急なお客様なので満足なサービスは出来ませんが、うちは風呂が自慢なんですよ。ぜひ、そこだけでも味わってもらえれば。もちろん、お代は結構ですので」


「そ、それはいいわねっ!お言葉に甘えましょ、ね?ソロ!」


「それは願ったりですが……押しかけたのはこちらですし、宿代はきちんと払わせて下さい。ご主人も奥様のことで、何かと物入りでしょうから」


「な、なんとお優しい……!ありがとうございます。精一杯サービスさせて頂きますので!」


 涙を流して感謝するケインに、ソロは苦笑するしかなかった。ジーナは感動の目でソロを見つめている。そうして、ジャンヌ達は無駄な散財を避けることが出来たのだった。



 その日の夜。ケインは満足なサービスを提供できないと言っていたが、中々どうして食事の質は高く、ケイン自慢の風呂は広さや清潔さだけでなく、窓から見える風景も最高であった。特に、他の地域では見たことがない入浴剤の香りも素晴らしい。これで文句を言うなど、罰が当たると思えるほどだ。そんな大満足の食事と風呂を終え、のんびりしているジャンヌ達の部屋に、ソロがやってきた。


「ジャンヌ、少しいいか?」


「あ、ソロ。どうしたのよ?珍しいわね、こんな時間に。まだ起きてるつもりだったけど」


「いや、寝ようと思ったんだが、どうにも君の行動が引っかかってね。昼間、ケインさんと話をしていた時、突然大声を出して騒いだだろう?あれはなんだったんだ?」


「あー……あれね。いや、その、ハバキリが本当にあるっていったのよ。炎に咲く花がさ」


「なんだって!?どういうことだ?何故ハバキリがそんな事を知っている?」


「それが、あの後何度かこっそり聞いてみたんだけど、どうして知ってるのかとかは教えてくれないの。ただ、実際にあることだけは知ってるって言うだけで、どこに生えてるのかとかはだんまりなのよ」


「うーん……それが事実なら、とんでもない事になるぞ。ケインさんの言う通り、領主やこの国の王侯貴族が出張ってきてもおかしくない事実だ。というか、他の国だって黙っちゃいないだろう」


「どうしよう?やっぱり聞かなかったことにした方がいいわよね。でも、テリー達の事情を聞いちゃうとなぁ……」


 いくらジャンヌ達が息子を助けた恩人とはいえ、妻が入院して男手一つという大変な時に、ここまでジャンヌ達に良くしてくれたケイン一家の事情を知ると、放っておけないと思うのがジャンヌのお人好しな所である。もちろん、ソロも目をつぶるべきだとは思っているが、やはり、彼らの事情を考えると見て見ぬふりをするのは心苦しいようだ。二人は結論を出せぬままお互いの部屋に戻り、それぞれ夜を明かした。


 そして翌朝、あまりスッキリしない気分で朝を迎えたジャンヌは、気分転換にハバキリを持って街へ出る事にした。仕事が見つかれば御の字だし、仮に見つからなくても身体を動かせば考えもまとまるだろう。時折、困った様子の人に話しかけたりしながら歩いていると、見覚えのある男達が宿から出てくるのが見えた。


「あいつら……あの宿に泊まってたんだ。もしかして、急な連泊の団体客ってあいつらのこと?」


 荒くれ者の男達は、それぞれが何か紙のようなものを手に持っていて、それを覗き込んでいるせいかジャンヌに気付いていないようだ。奇妙な胸騒ぎを感じたジャンヌは、こっそり彼らの後を尾けてみることにした。

 男達が覗き込んでいるのは、地図のようなものらしい。どうも彼らは、何かを探しているように見える。昨日の今日で炎に咲く花の事が頭に残っているジャンヌにはどうしてもそれらが結びつきそうになってしまう。


 (てっきりテリーを探してるのかと思ったけど、そうじゃないみたい。あいつらが探してるものって………………まさかね)


 ジャンヌは少し距離を置いて隠れながら後を追い、考えた。もし、彼らの探しているものが炎に咲く花に関連するものだとして、彼らはそれをどうやって手に入れたのだろう。ジャンヌ達はハバキリの言葉があってさえも確信が持てていないのだ。そもそも、ハバキリが情報源を黙秘しているので、別ルートで情報が流れている可能性もある。だが、それならもっと早く情報が広まっていてもおかしくないが、今の所そんな様子はない。


「やっぱり別の何かを探してる……のかしら。でもなぁ」


 ――!ジャンヌ、後ろよ!


「っ!?あっ!」


 突如背後から強烈な衝撃を受け、ジャンヌの意識は刈り取られた。そこには、ゆらゆらとゆらめく陽炎が立ち上っていた。

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