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光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~  作者: 世界


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新たな仲間

 ガンディーノとその部下達は、そのほとんどが捕まった。Neckとして手配されたガンディーノは元より、彼が率いていた部下のチンピラやゴロツキ達は、彼の権力を傘に着て街のあちこちで横暴や無法を行っており、それぞれに罪が認められた形だ。元が札付きのワルばかりを集めた愚連隊のようなものだったし、それ自体は当然の結果といえるだろう。

 結局、命を落としたのは、ロレンツォが殺害したトグサと、そのロレンツォの二人である。


 片腕を失ったガンディーノ自身は重傷だったが、命に別状はないらしい。しかし、憲兵達が調べた所によると、彼は手配された内容だけでなく悪質な鉱山利益の着服を行っていて、領主はかなりご立腹のようだ。恐らく、縛り首は免れないだろう。彼にはこれから厳しい取り調べと処刑が待っている。その意味では、捕まった方が地獄だと言えるかもしれない。


「これで、いいかな。……お父さん、お母さん。どうか、安らかに」


 ドルトの片隅に整えられた区画には、この街で死んだ人達を祀る墓地がある。その中に、今回亡くなったボッシュと、二年前に病死したジーナの母、ファリの墓があった。ジーナは墓前に手を合わせて、二人の冥福を祈っていた。


「…………」


「どうした?ジャンヌ。らしくない顔してるぞ」


「るっさいわね。私らしい顔ってどういう顔よ。……ねぇ、ソロ。ジーナのことなんだけど」


 祈りを捧げるジーナの背中を、少しだけ離れた場所からジャンヌ達が見守っていた。ガンディーノを始めとした、彼女を狙う者達はもういないので護衛をする必要はないのだが、ジーナはまだ13歳の子供である。両親を失った今、独りにさせておくのはよくないだろう。そう思って、ボッシュの依頼が果たされた今も彼女の傍についているのだ。


「……またその話か。悪いが同意は出来ないぞ、あの子を俺達の旅に連れて歩くなんて危険すぎる」


「でも!ジーナにはもう頼れる人はいないのよ?いくらガンディーノ達がいなくなったと言っても、ううん、ガンディーノがいなくなって、街の権力者が変わるって時に子供が一人でやっていける訳ないじゃない。せめて、私達だけでも傍にいてあげれば……」


「あのな、ジャンヌ。君の気持ちは解るが、俺達と一緒に来るって事は、普通の暮らしを捨てるってことなんだぞ。俺達と一緒にいれば、当然、命の危険だってある。それに、いくら身寄りが無くなったとはいえ、ここはあの子の故郷だ。それら全てを捨てて俺達と一緒に来いと、そう言うつもりなのか?」


「そ、それは」


「もし仮に、君がこの街に一人残ってあの子の面倒を看るというなら、それでもいい。だが、魔法も使えない君がどうやってあの子を育てるんだ?」


「…………っ」


「俺達に出来ることは、せめてあの子が一人でも生きていけるよう、まとまった金を渡してやることくらいだろう。……ここにガンディーノとロレンツォの懸賞金が、合わせて600万ドルゴある。これをあの子に渡す。それでいいな?」


「…………わかった、それでいいわ」


 どれほど言葉を重ねても、ソロの正論には歯が立たないとジャンヌは感じた。一時の感情でジーナに寄り添おうとしても、ジャンヌには出来ない事の方が多すぎる。そもそも、ジャンヌはまともに生きることが難しいからこそ、MIRAの世界に飛び込んだのだ。無論、ソロにしても、ジーナを一人で残していくことに忍びない気持ちはあるのだろう。だから、自分達に出来る精一杯の事として、今回の賞金を全て渡そうと考えたのだ。


 600万ドルゴは確かに大金ではあるが、一生遊んで暮らせるというほどのものでもない。無駄遣いをしなければ、ジーナが大人になるまでは十分食べていけるだろうが、それだけだ。そこから先は、彼女が自分の力で生きて行かねばならない程度の金額である。頼れる身内を無くし、天涯孤独となってしまった子供には心許ない額の金だ。だが、ただでさえ普段から金がないジャンヌ達には、それ以上のモノを渡してやれないのもまた事実である。それを考え出すと、やはり面倒を看てやる方がいいのでは?という思いが頭に浮かぶのだが、それも出来ないという堂々巡りになってしまうのだ。


 そんなジャンヌとソロのやり取りが終わる頃、墓前で祈りを捧げていたジーナは静かに立ちあがり、しっかりとした足取りでジャンヌ達の方へ歩き出した。その表情はどこか清々しささえ感じさせるようで、真っ直ぐに前を見て歩く姿は、ずっと泣き伏せていた少女のものとは思えない堂々とした振る舞いだ。向かい風も全く気にしていないどころか、強い決意を秘めた顔つきだ。ジャンヌとソロは、そんな彼女の変わりっぷりに、どこか圧倒されそうになっている。

 

 そうして、ジャンヌ達の元へ来たジーナは、深く頭を下げた後でこう言った。

 

「ジャンヌさん、ソロさん、本当にありがとうございました。お父さんのことは悲しかったし、残念だったけど、お二人のお陰できちんと見送れてお別れできたと思います。何から何まで、お世話になりっぱなしですみません」


「なに言ってるの。ジーナ、あなたはまだ子供なんだから、そんなにかしこまったり気にしたりしなくていいのよ。私達はただ、ジーナの事が心配だっただけなんだから。ね?ソロ」


「ああ、そうだな。…………それで、ジャンヌと相談して決めたんだが、これを受け取ってほしい」


「これって?……お、お金じゃないですかっ!?それも、凄い大金……!一体どうして?!」


 手渡された袋の中身を見て、ジーナ思わず声を上げた。年齢から言っても、彼女はこんな大金を手にした事はないだろう。それを突然あげると言われて、理解出来るはずもない。ソロはジーナを落ち着かせるように肩に手を置き、普段よりももっと優しい口調で答えた。

 

「これは、Neckとして手配されたガンディーノと、ロレンツォに懸けられた懸賞金だ。俺達には旅があるから、これから先も君について守ってやることは出来ない。だからせめて、この金を君の為に、とね」


「そんな!?そんなお金、受け取れません!」


「聞いて、ジーナ。あなたはまだ13歳よ。身寄りのいないあなたが大人になるまで、独りでお金を稼いで暮らしていくのは無理だわ。でも、このお金があれば何とかなるはず……だからどうか、受け取って頂戴」


「でも……でも、私っ」


「ジーナ、一緒にいてあげられなくてごめんね。また、会いに来るからね」


「ジャンヌさぁんっ……!う、うぅ……」


 そう言って、今度はジャンヌがジーナをぎゅっと抱き締めると、ジーナの瞳からまた大粒の涙がこぼれた。最愛の父と別れた直後に、ジャンヌ達と別れねばならないのは、まだ若い彼女にとってどれほどの寂しさと悲しみを与えることになるのだろう。それでも、人はその悲しみを堪えて前に進まなければならないのだ。結局、泣き続けるジーナを放っておく訳にもいかず、ジャンヌ達はジーナの家に戻り、翌日出発することにした。


 そしてあくる日の午後、ジャンヌとソロは荷物をまとめ、旅を再開する準備を整えていた。昨晩のジーナは何かを必死に考えているようだったが、良い答えが見つかったのか、朝にはとても晴れ晴れとした表情に変わっていた。あの様子なら、きっと大丈夫だろう。そうして出かける算段が整った頃、ふと、ジャンヌはジーナの姿が見えない事に気付く。


「あら?ソロ、ジーナを見なかった?どこにもいないみたいなんだけど」


「少し前に出かけたようだぞ。そう遠くへ行くような装いじゃなかったし、すぐ戻って来るんじゃないか?あの子が帰ってきたら、俺達も出発しよう」


「そうね……」


 心配そうにうつむくジャンヌの横顔を目にして、ソロもまた複雑な思いを抱いているようだ。ソロ自身、身寄りのないジーナを一人にしておくことには抵抗があるのだ。わずか二週間ほどとはいえ、一緒に暮らした中で、ジーナとボッシュ親子はとても好人物であった。普段からNeckという悪党ばかりを相手にしているせいか、ジャンヌもソロも、好意を抱ける人物には少し甘くなることが多いようだ。二人がMIRAという生き方を選んだのも、そうした悪に踏みつけられる人々を減らし、救いたいという気持ちがあるからである。巻き込む形にはなってしまったが、サシャ親子に同情し、肩入れしていたのもそれが理由だ。


 そこへちょうど、ジーナが戻って来た。手にはかなり大きめの旅行鞄を携えていて、笑顔ではあるがどこか緊張した面持ちだ。ジャンヌはジーナの様子を訝しみながらおかえりと声をかける。


「おかえり、ジーナ。……その鞄、どうしたの?ずいぶんと大きいけど」


「ただいまですっ。このトランクは、仕立て屋のウネラおじさんに譲ってもらいました!魔獣の皮を使ってるから、見た目よりずっと軽くて丈夫で、しかも収納魔法がかかってるからたくさん荷物が入るんですよ!」


「ええっと……出所を聞いてるんじゃなくてね。なんでそんなのを持ってるのかなって」


「そうですね。……すぅ、はぁ…………あ、あのっ、ジャンヌさんソロさん!私をお二人の旅に連れて行ってもらえませんか!?」


「へえぁっ?!」


 ジーナの思わぬ返答に、ジャンヌの声は完全に上ずって、おかしな言葉になってしまっている。隣にいたソロもこれには予想外だったのか、完全に絶句してしまっていた。ソロの肩に留まっているアーデだけは、どこか嬉しそうだが。


「ちょ、ちょっと待て、ジーナ。悪いが、君を連れて行くなんて出来ない。俺達の旅は本当に危険な旅なんだ。昨夜のジャンヌを見ただろう?ああして生傷が絶えない日々で、命の危険なんてしょっちゅうだ。観光であちこちを廻っているんじゃないんだぞ!?」


「それは解ってます!でも、お父さんがくれた最後の手紙には、私が後悔しない人生を歩めって書いてあったんです。私は、色々な土地を廻って世界をこの目で見たいんです。そうして、この街に帰って来た時にお父さんとお母さんに私が視てきたもの、経験してきたことを報告したいと思ってます。だから!」


「ダメだ!いくらなんでもそれは許可出来ない!」


「……どうしても、ですか?」


「ああ、どうしてもだ」


「そうですか………………じゃあ、これで」


 ソロの目をまっすぐに見つめながら、ジーナは腰から下げていた革袋を差し出した。そこそこ重量がありそうだが、その袋が何だというのだろう?その意図が読めず、怪訝な顔をするジャンヌとソロに、ジーナは大きな声で宣言する。


「この中に、500万ドルゴあります。私は、このお金でお二人を雇います!だから私を、レガリアへ連れて行ってくださいっ!」


「ええっ!?れ、レガリアって月光教の本部がある、あのレガリア?」


「はい!」

 

「な、なんだと!?」


「お父さんは、私に加護の力があるって言っていました。……正直、私にはよく解りませんけど、お父さんが嘘を吐いていたとは思えません。もしも、私にそんな力があるのなら、それを確かめたいんです。私に、何が出来るのか。今回だって、私に特別な力があれば、お父さんを守れたかもしれないのに……」


「ジーナ……」


 そんな彼女の本心を聞かされては、流石のソロも無碍に断る事は出来なかった。当然ながら彼女の気持ちは解るし、少なくとも加護を自覚することは、彼女が今後生きていく上でプラスになるのは間違いないからだ。加護を持っているかどうかも不明な一般人とは違い、ソロもジャンヌも、ジーナに何か特別な力が備わっている事は確信しているからこそ、それを確かめる事には大きな価値がある。ただ漠然と自分達についてくるという話ではなく、仕事として雇うというのであれば断る理由はほとんどないだろう。

 そして何より、今のジーナの瞳からは相当な覚悟が垣間見えた。もしここで話を断ったら、彼女は大金を持ったまま、一人ででもガレリアへ向かうだろう。その方が遥かに危険だ。それならば、自分達の目の届く所に置いた方がマシである。


「………………解った、俺の負けだ。君が俺達を雇うというのなら、依頼を受けよう。ただし、危険な場所には絶対に近づかないこと。それと俺達の言う事はきちんと守ってもらうぞ?」


「はいっ!ありがとうございます!」


 ソロは溜息を吐きながら頭を掻き、自分の甘さを痛感しているようだ。一方のジャンヌは喜びのあまり、ジーナと抱き合っている。かくして、新たな仲間を加えたジャンヌ達は一路、レガリアへと向かう事になったのだった。

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