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光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~  作者: 世界


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強敵再び

「アイツ……エルドレッドと一緒にいた、ヴィヴィアンって女だわ!もう一人のローブを被ってるヤツは誰だか解らないけど。アイツらがここに来たってことは」


「目的は、ジャンゴ様とアメーリア様か。……ん?待て、ジャンヌもう一人いるぞ!」


 ソロの言う通り、窓の外に立つ人影は全部で三つだ。ヴィヴィアンの他はローブを被っており、一人はやや小柄で、大柄な方の陰に隠れて見えなかったらしい。わずか三人で伯爵家に攻め入るのは無謀に過ぎるが、裏を返せばそれだけ彼女達の実力に自信があるということだろう。だが、彼らにとって不測の事態な事が一つある。それは、この場にジャンヌ達がいるということだ。


「一体、何が……警備兵達は何をしている?」


「いけない!窓から離れてっ!アイツらの狙いは……きゃっ!?」


 近づいて外を確認しようとしたジャンゴを制止したのとほぼ同時に、応接室の窓に張られていた大きなギィス(ガラス)が轟音と共に割れた。咄嗟にジャンヌが止めていなければ、ジャンゴは巻き込まれて大怪我を負っていたかもしれない。その直後、巻き上がる埃の陰から、ゆらりと三人が室内へと侵入してきた。


「あれあれぇ~?ジャンヌちゃんじゃ~ん。どういうコト~?ジャンヌちゃんってば虐待されてたパパママと仲悪くって出禁になってるって話じゃなかった~?もう、アネットちゃんの情報使えないなぁ~」


「あんた……!そんな事までっ!」


「ヤダヤダ、コワ~イ~!そんな顔で見ないでよぉ~、しょうがないでしょ~、カタストロフの封印を解くにはぁ、そこのパパママを始末しとかないとってエルドレッドサマが決めたんだからぁ~。邪魔しないでよね~っ!」


「ふざけた喋り方して!……私の目の前でそんなこと、やれるもんならやってみなさいよ!」


 勢いよくハバキリを抜いたジャンヌは、すぐさまヴィヴィアンへ斬りかかった。刀の峰を右肩に掛け、走り込んだ勢いそのままにそこから振りかぶるようにして上段への唐竹割りを放つ。この技は刀身が身体に隠れる為、刃の軌道が読めなくなる。つまり、防御を困難にさせるのだ。


「あんっ」


 気の抜けた声と共に、脳天から腰まで真っ二つになったヴィヴィアンは、血飛沫を上げながらその場に崩れ落ちた。やけに呆気ない、ジャンヌがそう思った瞬間、背後からヴィヴィアンの声がして、ジャンヌの背中を斬りつけた。


「ばあっ!」


「なっ!?くぅっ!」


 ジャンヌは咄嗟に前方へ飛びこみ、前転した後、振り向きながら立ち上がる。多少背中をかすめたようだが、すぐに治る傷だ。よく見ると、ニヤニヤと笑みを浮かべたヴィヴィアンが、無傷のままで立っていた。そしていつの間にか、たった今ジャンヌが斬ったはずのヴィヴィアンの死体が消えている。ジャンヌが驚いた表情をみせると、それに気をよくしたのかヴィヴィアンはコロコロと笑った。

 

「死体が、無い?……今のは」


「ジャンヌちゃんやるぅ~!私に加護を使わせただけじゃなくて、攻撃まで避けちゃうんだもん~。今の、一発で仕留められると思ったのになぁ~」


「あんた、加護持ちだったのね。エルドレッドの奴、どっからあんたみたいなの集めてくるのよ?そういや、ナタンってのも加護を持ってたけど……あいつもあんた達の仲間だったわけ?」


「ああ、ナタンのおじさんねぇ~。そうだよぉ。我は殺人鬼だぁ!とか言って自慢ばっかしてさぁ、鬱陶しいおじさんだったよぉ~。人なんか、ワタシだってたくさん殺してるのにぃ」


「……サイテーね、あんた達。反吐が出そうよ」

 

 悪びれる様子もなく、むしろ楽しげに人を殺したと語るヴィヴィアンは、とても醜悪な人間に見える。彼女の見た目が派手な服装の少女に見える分、余計に邪悪さが強調されているのだろう。だが、その軽い見た目や話し方とは裏腹に、彼女はかなりの難敵だ。たった今斬り捨てたはずの遺体が消えたのと、彼女の加護には何か関りがあるに違いない。しかし、通常、加護を持つ者はそれを詳らかにしないものだ。手の内を明かす事になるのだから当然だが、それをやるのはよほど自分に自信があるものだけだろう。


 (さっきのは幻覚だった?ううん、確実に肉と骨を斬る感触があった。あれは、幻なんかじゃない……だとしたら、それがこいつの加護の正体。それを突き止めないと、勝てない!)


 ジャンヌは小さく息を吐き、目の前のヴィヴィアンの動きをつぶさに観察する事に決めた。戦いはまだ始まったばかりだが、時間はかけていられない。敵はまだ他にもいるのだ。


「ジャンヌ……俺の相手はこちらか。相手は二人、アーデを車に置いてきたのは失敗だったな。騒ぎを聞いて、ライナスが駆けつけてくれると助かるが」


 ソロは自分の前に立つ、二人のローブの人物を見据えて呟いた。曲がりなりにも目上の貴族の屋敷で面会するのに、使い魔を連れて行くのはマズいだろうと街の外に置いた魔力車(クルルス)にアーデを置いてきてしまったのだ。とはいえ、今のソロは再びアーデと使い魔の契約をして繋がっているので、すぐに状況は伝わるはずだ。車で留守番をしているライナスもそう時間はかからずやってくるだろう。それまでを凌げればいい。


 その時、ちょうどタイミングよく、屋敷に常駐する警備兵達が集団で現れた。これで、彼らに任せておけば、パルテレミー夫妻の安全は守れそうである。それでも油断しないようソロが槍杖を呼び出して構えると、それまで黙っていた大柄な方のローブの男が笑った。

 

「フフフ、久しいな。バーソロミュー・サマーヘイズよ。まさかこんな場所で再会するとは……決着をつける良い機会だ。今度こそ、貴様をこの手で潰してくれる!」


「なに……?お、お前は赤鬼(レッド・オーガ)っ!ゴーシュか!?」


 大柄の男がローブを脱ぎ捨てると、そこから現れたのは、以前戦ったあの赤鬼(レッド・オーガ)こと、ゴーシュであった。身体のあちこちに、ジーナによってつけられた無数の傷跡が残っている。しかし、今も変わらず真紅の手甲を身に着けて立つその威圧感は健在だ。思いもよらぬ強敵との再会に、ソロの槍杖を握る手に力が入る。

 

「ゴーシュ、生きていたか。あの後、お前の死体が見つからなかったと聞いて、もしやと思っていたが……まさかメタノイアの一味になっていたとは」


「ふん、勘違いするな。俺は元よりメタノイアの構成員よ。招集がかかるまでは自由に過ごしていいと言われていたのでな。適当に村や集落を襲って遊んでいたまでのこと。あの時は、カジノとやらを襲ってやろうと領主に近づいたが、まさか奴らが俺を騙って貴様らに接触するとは思わなんだ。あれは中々、面白かったぞ」


「強がりもその辺にするんだな。俺と決着を望んでいたというなら、ジーナに負けたお前にとっては屈辱の記憶だろう?……一つ聞いておく。エルドレッドが攫った、ジーナは無事か?」


「ハハッ!あの小娘なら今の所は大事に扱われておるさ。エルドレッドはあやつの力が気になるようでな。お陰で、そこのヴィヴィアンめが嫉妬でうるさくて敵わん」


「うっさいわねぇ~!黙ってなさいよ、アカオニさんっ!あんな子、珍しいからちょっと可愛がられてるだけだって~!エルドレッドサマのお気に入りは私だもんっ!」


 緊張感のない会話ではあるが、ソロとジャンヌにとっては、何よりも聞きたかった答えだ。少なくとも現時点では、ジーナは彼らに非道な扱いをされていないようである。一刻も早く助けなくてはならない事に変わりはないが、ひとまず命の心配はいらないだろう。ここで彼らと出会ったのはむしろ好都合だ。誰か一人でも取り押さえ、居場所を聞き出せればいい。

 

 こうしてそれぞれの相手と対峙する中、最後に残った小柄な男が、静かにローブの下で笑っている事には誰も気付いていなかった。

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