表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~  作者: 世界


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/121

妹との再会

 帝都・フォルトゥナ。ここは、代々エンデュミオン皇国の皇帝が住まう皇国最大の都市であり、多くの臣民達がこの都市を支え暮らしている場所だ。また、各地に散らばっている魔法兵や騎士達を統率する騎士団長や魔法師団長もこの都市に居を構えている。皇帝やその側近達が住む大きな城とその城下町は、何とも言えない重厚な威圧感を持っているようだ。


 ジャンヌ達は、ダルクの運転する魔力車(クルルス)を使い、半日ほどかけてここまでやって来た。法律上、都市の中では魔力車(クルルス)を使えない為、近くの森に車を停めて、徒歩でフォルトゥナへ入る所だ。


 フォルトゥナは都市全体が巨大な防壁で囲われていて、有事には都市そのものが非常に強固な城として機能するよう設計された街である。もっとも、建国以来、フォルトゥナが攻め込まれた事など一度もなく、ダンジョンが健在であった頃から優秀な魔法兵達によって安全を確保されてきた為、有事が起きたことなど一度も無いのだが。

 

 そんなフォルトゥナへの出入りは、本来自由であり、特に見張りの警備兵などは配置されていないのが常だ。しかし、ジャンヌ達が到着した時、フォルトゥナの門は固く閉じられていて、街へ入ろうとする者達には厳重なチェックが行われていた。

 ジャンヌ達は到着から3時間ほども手続きに待たされ、疲労の色が見えるようであった。

 

「……ふぅ、ようやく入れたわね。ジーナ、大丈夫?疲れたら、ちゃんと言うのよ」


「ありがとうございます。でも、大丈夫です。……それにしても、大きなお城ですね」


 城門から少し進んだ所にある、テラス席のあるカフェで飲み物を頼み、ジャンヌとジーナは一息ついていた。すっかり怪我の治ったライナスとダルクは、情報収集の為に別行動中だ。ソロが連れ去られた目的からみて、彼の居場所は城の内部に間違いないだろうが、酷く警備が厳重な事が引っかかる。そう言って、ダルクとライナスは先に情報収集を提案したのだった。


 ジーナが城を見上げて呟くと、ジャンヌもそれに倣って城を見上げる。ジーナの言う通り、フォルトゥナの中心にそびえたつ城は巨大で、真下からでは頂点が見えないほどだ。街の外縁に位置するここからなら全貌を見る事が可能だが、それでも見上げるほどなのだから、驚くのも無理はないだろう。


「そうね。私も昔、少しだけこの街に住んでいたけど、初めてここへ来てあの城を見た時はびっくりしたわ。それまでは、実家のお屋敷より大きなものなんて、山くらいしか見たことなかったもの」


 ジャンヌはそう言うと、何とも言えない表情で微笑んだ。初めてここへ来た時というのはつまり、実家を飛び出した流浪の果てに、この街に辿り着いた時の事である。即ち、ジャンヌがスライ(浮浪者)となり、ボロボロになりながら彷徨っていた時のことだ。

 かつて、この街に辿り着いたジャンヌは、あの城の圧倒的なまでの威容に驚きながらもその陰に隠れるようにして身を伏せ、ネズミや小動物と争いながらゴミを漁って生活していた。それは決して長い間ではなかったが、あれこそ人生でもっとも過酷な時間だったと言ってもいい。だが、あの経験があったからこそ、今に繋がるソロとの出会いがあったのだと思うと、悪い事ばかりではなかったとも思える。ラント達によってすり替えられた事もそうだが、今を大事にするジャンヌにとっては、過去を悪く考える必要がないのだ。


 そんな会話をして笑い合っていると、ちょうどそこへライナスとダルクが別々に戻って来た。二人共にその顔は渋く、あまり良いニュースを持って帰って来たとは思えない。ジャンヌ達は気を引き締めて、二人と合流し事情を聴く事にした。最初に口を開いたのはダルクだ。


「おかえりなさい、二人共。で、どうだったの?何かあった?」


「ああ、やけに警備が厳重なんで昔の馴染みに当たってみたが、どうも女帝……イェルダ様は相当焦っているらしいな。(やっこ)さん一両日中に盛大な結婚披露宴を行うつもりのようだ。相手は公表していないというが、間違いなくソロだろう。ただ、先日、バスカヴィル王国の王子が()()された事もあって、相当警備を厳しくしてるようだ」


「……え?ちょっと待って、今、何て言ったの?」


「だから、結婚披露宴をやるつもりで……」


「違うわ!そこも重要だけど……バスカヴィル王国の王子って、シーザーのこと?殺害されたって、嘘でしょ!?」


「なんだ、知り合いだったのか?つっても、俺もそっちは詳しくは……」


「残念、ながら、本当……だ。二日ほど、前……シーザー王子、は王城内の執務室、で何者かに殺され……たらしい。犯人、は解っていない、が、かなり無惨……な殺し方だったと、聞いた」


「そ、そんなっ!?シーザーさんが……っ」


「あ、お、おいっ!大丈夫か!?」

 

 思いもよらぬ最悪の話を聞かされ、ジーナはショックのせいで意識を失ってしまったようだ。隣にいたジャンヌが慌てて肩を抱いて支えたが、ジャンヌ自身も衝撃で身体が震えており、そのまましゃがんでしまった。ジャンヌ達がシーザーと別れてからおよそ二週間余り……またいつでも会えると思っていた仲間が、そんな短い間に殺されたと聞けばショックを受けるのも当然だ。この場にソロがいたなら、彼もショックを受けただろう。

 シーザーと過ごした2カ月少しの期間は、ジャンヌ達にとって濃密な時間とも言えた。彼のキャラクターを鬱陶しいと思うこともあったが、その性格も含めて彼をムードメーカーとして象徴するものであり、決して憎むような相手ではなかったのだ。その彼が、どうして無惨な殺され方をしなければならなかったのか。ジャンヌは、激しい怒りと悔しさを胸に滲ませながら俯き、ジーナを抱える腕につい力が入ってしまう。

 

「あら?どうかなさったの?具合でも悪いのかしら」


 突如降って来た声にハッとして顔を上げると、そこには、美しい()()の若い女性が立っていた。その顔を見た瞬間、ジャンヌの顔からサッと血の気が引いていく。産まれたばかりの彼女の顔しか見せてもらえなかったジャンヌだが、それが誰なのかは一目で理解出来た。何故なら、その銀髪と顔立ちは、母アメーリアと瓜二つだったからだ。


「あ、アネット……?」


「どうして私の名前を…………いえ、その顔とその藍色の髪、まさか、お姉様?」


 どうしてここに?と問いかけそうになったが、考えてみればアネットがいるのは当然だ。一両日中に女帝が結婚披露宴を執り行うというのなら、皇国に属する貴族達は皆参列するだろう。きっとアネットだけではなくジャンゴとアメーリアもどこかに来ているに違いない。たまたま彼女だけが近くを散策していたのだろう。そして、相手がジャンヌだと知ったアネットは、小さく鼻を鳴らして睨み蔑むように言い放つ。


「ずいぶんお久し振りね。貴族として、家の為の責務も果たさず逃げ出した卑怯者の貴女が、まさかこんな所にいるなんて思いもしなかったわ。今まで帝都に潜んで暮らしていた訳じゃないわよね?一体、どういうつもりでこの街に来たのかしら。もしかして、イェルダ様のご結婚をお祝いする為……とか?」


「べ、別に私は……それより、お父様とお母様もここに来ているの?」


「当然でしょう。栄えある陛下の結婚披露宴に参列しない貴族がどこにいるというの?そんな事も解らないようだから、家を捨てて責任から逃れようなんて考えるのよ。……汚らしい卑怯者、貴女と血の繋がりがあるなんて、考えただけでもゾッとするわ!」


 その言葉を聞き、ジャンヌはごく自然に笑みを浮かべていた。今までのジャンヌだったなら、それは呪いのように彼女の胸を締め付け、苛んでいただろう。だが、今のジャンヌはそれが違う事を知っている。自分がジャンヌ・パルテレミーであることはれっきとした事実でも、自身に流れる血は彼女とは別物なのだと。完璧に納得していた訳ではなかったが、実母から名付けられた名と、その声を思い出した今となっては、パルテレミー家の者達が自分の家族だとはもはや思えなくなっていた。

 そもそも、あれだけ虐待紛いの事をされて育ったのだ。いつまでも慕えという方が無理のあることだろう。


「……そう。でも、安心していいわ。私と貴女の間に血縁はないみたいだから」


「は?なに、負け惜しみ……」


「あーっ!ジャンヌちゃんじゃ~ん!こんなとこにいたの~?探してたんだよぉ~。ふふふ、勝手にいなくなっちゃダメだよ~?」


「あ、あんたは……?!」


 アネットの背後から割って入ったその女に、ジャンヌは息を飲んだ。それは以前、レイモンドへトドメを刺そうとした時に邪魔をした、ムラクモの使い手エルドレッドと一緒にいた女――ヴィヴィアンだったからだ。再びちらつき始めたエルドレッドの影を感じ、ジャンヌは舌打ちをする。そうして、事態は更なる混迷を深めていくのだった。

お読みいただきありがとうございました。

もし「面白い」「気に入った」「続きが読みたい」などありましたら

下記の★マークから、評価並びに感想など頂けますと幸いです。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ