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わたしの言葉に、オクトール様は目をまたたかせて驚いている。
「……ノーディーニは何も言わなかったのかしら」
「ノーディーニしか言わないから、お世辞だと思った」
それはノーディーニさんしか言わないのではなくて、ノーディーニさんとしか会話しないから、他の人の評価が彼の耳に入ってこないんじゃないだろうか。
夜会等で、オクトール様の才能を褒めたたえて、しかし積極的に社交をしていないから次期王は難しいか、と、嘆いている人を何人も見かけている。
彼に足りないのは社交性だ。人との信頼を築くには時間がかかるから、今日明日でどうこうできるものではないが。
「なりたいと思うのなら、王位を目指せばよろしいのではなくて?」
わたしは周囲に気をくばり、声をひそめながら言う。他人に聞かれたらまずい、と声を落としたが、あの二人が逢瀬を楽しむために選んだ道なだけあって、人の気配はない。本当にわたしたちの運がなかっただけなのだろう。
「――わたくしは悔しいですわ。『おさがり』など散々馬鹿にされて、挙句の果てにあんなことを言われて、何が『選ばれなかった者同士』ですか」
正直なところを言えば、あの男が失脚するところを見たい。めちゃくちゃ見たい。
ヒロインたちはヒロインたちなりに、あの男に惚れ込んでいるから、仮にあの男が国王になれなかったところで離れていかないだろう。
完全に地に落ちないのは残念だが――それでも、まるで自分が次期王だ、とでも言いたげな態度を潰せるだけでだいぶすっきりすると思うのだ。
「オクトール様は悔しくないのですか?」
わたしが聞けば、彼は目線を下げ、少し口ごもった後、「全く悔しくない、と言えば嘘になる」と言った。
「見返してやりましょう」
その言葉を聞き、わたしは思わず言葉にしてしまった。
「『選ばれなかった者』などと二度と言えないように。無論、わたしも協力いたします」
二人で王位を目指そう。
わたしのハッキリ言わなかった言葉が聞こえたようで、彼の目線がわたしと合う。
「……本当に、僕なんかができると思ってる?」
「できますわ」
むしろ、達成できない方が難しいと思っている。直すべきところがはっきりしていて、努力すればなんとかなる。既に功績を多く残しているから、そちらに関しては焦る必要がない。
わたしが即答すると、今までそんな風なことを言われたことがなかったのであろうオクトール様が、動揺するのが見て取れた。
そして、ごくり、と唾を飲み込み――決意したように、わたしの手を取る。
「――……共に頑張って、兄上を見返してやろう」
「ええ、もちろん!」
わたしは、オクトール様の言葉に、口元を緩ませた。
絶対にあの男にやりかえしてやるんだから!




