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で、なんだっけ? オクトール様の出自が問題なんだっけ?
それこそ馬鹿らしい話ではあるのだが。
「四、十、二十五……」
わたしは指を折りながら数字をあげていく。
最初は何を急に言い出すんだ、とでも言いたげにわたしのことを見ていたアインアルド王子だったけれど、「三十四、三十五」と数字が増えるごとに、なんの数字なのか分かったようで、表情が曇っていく。
「――そして四代前の第五十一代国王。数は少ないですけれど、『出自不明』の王はいましてよ」
わたしはことさら出自不明、という言葉を強調して発言したが、本当に出自不明なわけではない。親のどちらかが貴族でも王族でもない――アインアルド王子の言葉を借りるのならば『気高い血が半分しか流れていない』というやつだ。
「それに、気高い血を両親からそれぞれ受け継いでいないと王になれないのであれば……ねえ?」
わたしは知っているぞ、という意味を持たせてアインアルド王子に笑いかける。
アインアルド王子の妻になる一人に、似たような境遇の女がいることをわたしは知っている。何故ならそのヒロインこそ、わたしがシナリオを書いたヒロイン、ベルデリーンなのだから。
わたしの言おうとしたことが分かっているのだろう。王子はカッと顔を赤くして、「彼女のことを馬鹿にするな!」と怒鳴った。
別にわたしは馬鹿にしたつもりはない。言われたことを言い返しただけである。あほらしい。自分にされて置き換えないと、自分が何をしたのか分からないなんて。
「他人ばかり気にかけていても、自らを振返らないと王位は遠のくのでは?」
わたしが挑発するように言うと、アインアルド王子はわたしを睨みつけ、エルレナの手を引いてずかずかと歩き去っていった。言い返す言葉が見つからなかったようだ。
「……やっと行った」
アインアルド王子の背中が見えなくなると、わたしは思わず溜息混じりに声を出してしまった。
わたしは慌てて口を閉じ、誤魔化す様にオクトール様に笑った。危ない、一人じゃないのに、化けの皮がはがれるところだった。
しかし、オクトール様は深刻そうな顔をしていて、わたしの呟きなんか聞こえていない風だった。
少し考え込んだ後、彼は眼鏡のふちを撫でて、わたしをちら、と見た。
「……君は、僕が王位を目指して、王になれると思うか?」
「むしろ王位を目指していなかった方が驚きですわ。あれだけ魔法道具で功績を残しているのだから、てっきり積極的に、とは行かなくとも王座が視野に入っているものだとばかり」
確かに、部屋に引きこもってばかり、というのはかなりの痛手だが、まだ挽回する時間は十分にある。そして、国への貢献度は問題なくあるのだ、社交界に出てある程度人とのつながりを作れば、それこそ本当に王へと至るはずだ。




