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落ちこぼれの悪魔~ライム・ザ・デビル  作者: 西季幽司
アサシン・ラスプーチンの章
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37/39

#36 闖入者

 どれくらい時間が経ったのだろう。

 入れ替わり立ち代わり悪魔たちがやって来たが、城の寒さに音を上げて出て行ってしまう。誰もここをねぐらにしようとは思わないようだった。

 セイレンは竈の下で丸くなったまま息を潜めていた。悪魔たちに見つかれば喰らわれてしまう。

 それでも外が騒がしい。氷の城は珍しい。また悪魔たちがやって来たようだ。

 寒い。冷たい。だけど、出てはダメだ。見つかってしまう。

 セイレンは必死に耐えた。

 竈の下で、耐えに耐えていたが、冷気が鼻を突き、「クシャン!」と小さなクシャミをしてしまった。

「おいっ、なにかいるぞ!」

 悪魔たちが騒ぎ始めた。キッチンの中を探し回り始めた。セイレンは竈の下で体を丸めた。だが、ついに一人の悪魔がセイレンを見つけた。

「いたぞ。子供の悪魔だ。美味そうだ」

 セイレンは竈の下から引きずり出された。

 ごろりと床に転がされる。

 見つかってしまった。もうダメだ。

「待て、俺だ」

「俺がみつけたのだ」

「俺に喰らわせろ!」

 セイレンを見つけた悪魔たちが仲間割れを始めた。誰がセイレンを喰らうかで争っているのだ。逃げ出すなら、今だ。仲間割れが終わると、喰らわれてしまう。セイレンは起き上がると、走り出した。

「あっ! こいつ」

 悪魔たちが慌てて追いかけて来た。だが、氷の床は滑って走り難い。足の遅いセイレンだったが、体重が軽い分、走り易かった。

 玄関ホールに逃げ出すと、そこには、もっとたくさんの悪魔がいた。

「あっ!」

 セイレンが立ち止まる。

「おいっ! ガキだ」

「悪魔のガキだ」

「美味そうだ」

 玄関ホールの悪魔たちまでがセイレンを迫って来る。床が滑って上手く走ることができないが、それでも徐々にセイレンは追いつめられて行った。

 セイレンが悪魔たちに囲まれる。


 ――ああ~もうダメ。


 と思った瞬間、「その子に手を出してダメ!」という甲高い声がホールに響き渡った。

「誰⁉ ボニー?」

 セイレンが声の主を振り返る。そこには男と女の悪魔に狐の悪魔がいた。

 ミリだった。ライムたち一行が氷の城にやって来たのだ。

「ふざけるな。俺たちが先に見つけたんだ」

 悪魔が怒鳴る。

「その子に手を出したら、痛い目に遭わせてやるから」

「出来るものならやってみろ!」

 ミリに代わってライムが叫ぶ。「ミリがダメと言ったら、ダメなんだ」

 ライムがライトニングソードを一閃する。

 ホールに雷が落ちた。セイレンを取り囲んでいた悪魔たちが雷に打たれて、ばたばたと倒れた。

 その時、セイレンを追って来た悪魔たちがホールに姿を現した。

「いたぞ!」

「まだいるの~」とライムが再び、ライトニングソードを振るう。ホールに飛び込んで来た悪魔たちが雷に打たれて、伸びたまま床を滑って行った。

 ミリは手で頭を覆って、その場に小さくなっていた。

「もう大丈夫よ」とミリが手招きをする。

 だが、セイレンは警戒して近づかない。

「大丈夫だよ。君を喰らったりしないから」とライム。

「あなたは誰?」

「僕はライム。彼女はミリ、そして、彼はクスコ」

 クスコが「やあ~」と手を上げる。

「まあ、狐の悪魔。可愛い」とセイレンが喜ぶ。

「そんなに可愛いかい?」

「うん」

「えへへ」とクスコが喜ぶ。

 セイレンがライムに言った。「ライムね。あなたのこと、知っている」

「そう。何処かで会った?」

「レンドからあなたのことを聞いた。ヴァンサンからも――」

「へえ~レンドやヴァンサンの仲間なのかい」

「ねえ、レンドを探して。ヴァンサンを探して」

「いなくなっちゃったのかい?」

「長い髪に髭を生やした男と一緒に、何処かにいっちゃった。このお城をつくったアリスも一緒にいっちゃったの」

「長い髪に髭を生やした男? それはきっとラスプーチンのことだね。うん。いいよ。探してあげる。僕らと一緒に来なよ」

 セイレンは返事の代わりに、走って行ってミリの胸に飛び込んだ。

「まあ~」とミリが嬉しそうな顔をする。

 それを見て、ライムは満面の笑顔になった。

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