#32 赤い目
ライムが倒れたのを見ると、コサック軍団の悪魔たちが襲い掛かって来た。
「ふん」とミリがライトニングソードを一閃する。
雷が悪魔たちを弾き飛ばした。
「まだまだ!」
迫りくる悪魔たちを寄せ付けまいと、ミリがライトニングソードを振るい続けた。立て続けに雷が落ちて来て、その都度、悪魔たちが吹き飛んだ。中には雷の直撃を受けて、浄化してしまった悪魔がいた。
だが、ミリの体力には限界がある。
「ライム。ねえ、ライム。起きてよ。ミリが頑張っているけど、このままだと持たないよ~!」クスコが雷に打たれて黒焦げになったライムの耳元で怒鳴り続けた。
こういう時、ライムに触れることができないのはもどかしい。
「クスコ、私は大丈夫よ」とミリが気丈に言う。だが、顔に疲労が滲んでいた。
ラスプーチンが先に気がついた。
よろよろと立ち上がると、ミリに向かって叫んだ。「我が言葉に耳を傾けよ! 雷を落とすのを止めよ!」
ラスプーチンの目が赤く光る。ミリの動作が止まった。
「それで良い。さあ、その刀を捨てるのだ。そうだ。良い子だ。お前は私の操り人形だ。良いか、お前が、先にライムを喰らえ。足元の、その男を喰らえ。そして、我がもとへやって来い。私がお前を喰らってやろう」
ラスプーチンの言葉に操られるかのように、ミリがライトニングソードをからりと手から取り落とした。そして、ライムに近づくと、うぐっうぐぅとうめき声を漏らしながら、少しずつ口を開けて行った。ライムを喰らおうとしているのだ。
「ダメだ! ミリ」
顎が外れ、みしみしと音を立てて、ミリが大きな口を開ける。
ライムに襲い掛かろうとするミリにクスコが抱き着いた。「ダメだよ~ミリ!」
それをミリは払いのける。クスコはくるりと回転して着地すると、むくむくと大きくなった。今の体ではミリに勝てない。巨大化してミリを押し留めるのだ。
巨大化したクスコがミリを押し留めた。
「邪魔するものを喰らってしまえ」とラスプーチンが命じる。
狂暴化したミリはクスコを喰らおうとした。
「止めて、ミリ」
ミリが何度も噛みつこうとしたが、それをクスコは何とか交わした。
「悪魔たちよ。何をしておる。今のうちだ。そこに倒れているライムを喰らえ。そして、我がもとにやって来い。そのまま私が喰らってやろう」
地面に転がっていた悪魔たちがむくむくと起き上がった。そして、のろのろと動き始めた。
ライムを目掛けて歩いて行く。
絶体絶命の危機だ。
「ライム~!」
クスコが叫んだ。
その瞬間、ラスプーチンに悪魔たち、そしてミリに、計ったように雷が落ちた。ライトニングソードは地面に転がったままだ。
ミリが爆風を受けて、気を失って倒れた。
誰が雷を落としたのだ。ライトニングソード無しでそんなことが出来るものなど、一人しかいなかった。
呆然と立ち尽くすクスコの前で、ライムがゆらゆらと立ち上がった。
「ライム!」
「ごめんよ。心配かけたね」
ライムが目を覚ましたのだ。ライムは我が身に受けた能力を全てコピーすることが出来る。ライトニングソードを振るわなくても、雷を落とすことが出来た。
ライムが立ち上がる。
「それっ! やつを喰らえ!」
ラスプーチンが怒鳴る。
一匹の悪魔がライムに襲い掛かって来たが、ライムが触れた途端に浄化してしまった。悪魔はライムに触れることが出来ない。ライムに触れた悪魔は浄化してしまう。
悪魔たちの足が止まる。
「うぬぬ・・・ならば、お前だ。我が言葉に耳を傾けよ! ライムを喰らえ!」と今度はクスコに赤い目を向けた。
「うっ!」とクスコが呻く。
ラスプーチンの言葉は、悪魔の囁きだ。その言葉に操られてしまう。
クスコはむくむくと巨大化すると、大きな口を開けてライムに襲い掛かろうとした。
「ダメだよ。クスコ」
ライムが優しく言う。その目は赤く輝いていた。
クスコが動きを止める。
「クスコ、正気に戻って」
「あっ、ライム」
クスコが正気を取り戻す。ライムは我が身に受けた能力を全てコピーすることが出来る。ラスプーチンの言葉で人を操る能力を手に入れたのだ。
「さあ、その男を喰らっちゃいな」
ライムが悪魔たちに命じる。
悪魔たちが一斉にラスプーチンを向いた。
「止せ!」とラスプーチンが目を赤くしながら命じる。
「喰らっちゃいな」
「止せ!」
悪魔たちが少し動いては止まるといった動作を繰り返した。ライムとラスプーチンの命令の狭間で葛藤を続けているのだ。
形勢が不利と見たラスプーチンはライムたちに背を向けると、逃げ出した。
「あっ! ライム、逃げるよ」
「放っておけば良い。どうせ、懲りずにまたやって来るよ」
「そうだね」
ラスプーチンの背中が小さくなって行った。




