#31 コサック軍団
ライムたちは旅を続けていた。
デビルズタワーという山に巨大な洞窟がある。そして、そこには地獄の門、タルヴァザがあるのだ。ラルヴァザを潜れば、人間世界に行くことができる。ライムたちは、タルヴァサを目指して旅を続けていた。
魔界は荒野のような景色が続いている。
注意して辺りを見回せば、ライムたち一行を遠巻きにして悪魔どもがついて来ているのが分かる。まともに戦っては勝ち目がないが、隙を見て襲い掛かろうという算段だ。
悪魔どもの考えそうなことだ。
「ライム。雑魚の姿が見えない気がする」とクスコが言う。
「雑魚?」
「箸にも棒にもかからない悪魔たちのことだよ」
「クスコは難しい言葉を知っているね」
「ライムが無知なだけだよ」
「そうか。ずっと何もしてこなかったからね。クスコ、色々、教えてくれてありがとう」
ライムが素直に頭を下げるものだから、「おっ・・・おう」とクスコが気恥しそうに頷いた。
「雑魚がいないのは妙ね。何か悪いことが起きなければ良いけど・・・」とミリが言う。
だが、ミリの不安は現実のものになってしまった。
ライムたち一行が荒野を歩き続けていると、やがて視界の端に、三つの影がライムたちと並行するように歩いているのが見えた。
「影が見えるよ、噂をすれば影だね」
「何それ?」
「噂をしていると、本当に現れるってことさ」
「クスコは何でも知っているね」
「人間世界で三百年、生きた狐だからね」
「雑魚がいなくなったのは、やつらのせいね。なんだか気になる」とミリ。
三つの影はつかず離れずついて来る。
ライムたちは警戒しながら進んだ。
気がつくと、三つの影は背後に回り込んで、ついて来ていた。後方を塞がれた。すると、前方に三つの影が現れた。前後から挟み撃ちをするつもりなのだ。更に三つずつ、左右からも人影が現れた。
クスコがライムの背後に隠れるようにして言った。「囲まれたみたい」
「気をつけて」ミリが心配顔だ。
十二人の悪魔に囲まれてしまった。
悪魔たちはライムたちを取り囲んで、ぐるぐると回り始めた。まるでダンスでも踊っているように、軽快な足取りで、足を上げて早足で歩いていた。
ライムがライトニングソードを構え、ミリが破魔弓に矢を番えた。
悪魔たちは標的にならないように、更に速度を上げた。
もうもうと砂埃が舞う。
ライムが前方に気を取られていると、後方から悪魔がクスコに襲いかかろうとする。ライムが振り向くと、慌てて列に戻る。そうやってライムたちの周りをぐるぐると回るのだ。
力の弱いクスコとミリを狙っているようだった。
悪魔たちの背後から巨大な男が姿を現した。長い髪に口ひげと顎髭を生やし、ランランと輝く目でライムを睨みつけると言った。「我が名はラスプーチン。お前を喰らいに来た」
「ラスプーチン? こいつらはお前の仲間なのか?」
「仲間? はは。仲間などではない。こいつらはコサック軍団だ」
「コサック軍団」
「そうだ。我が命に忠実に従うシモベたちだ」
「シモベ? 友だちみたいなものか?」
「お前がライムか。我が言葉に耳を傾けよ。その刀を仕舞い、お前は俺の前にやって来るのだ。そして、大人しく私に喰らわれるのだ」
ラスプーチンの目が赤く光る。するとライムが白目を剥いた。
「止まれ!」とラスプーチンが命令すると、ライムたちを取り囲んでいたコサック軍団が回転するのを止めた。
ライムは、からんと手に持っていたライトニングソードを落とすと、ふらふらとラスプーチンに向かって近づいて行った。
「ライム! 行っちゃあダメ。喰らわれてしまう」
ミリが叫んだが、ライムには聞こえないようだった。
ふらふらと夢遊病患者のように歩いて行く。
ライムを引き留めたくても、触ることが出来ない。ライムに触ると浄化してしまうからだ。
ミリはライトニングソードを拾うと、「ライム。目を覚ますのよ!」と叫んで一閃した。
空を切り裂いて雷が走る。
――ドンガラガッシャーン!
雷がライムを直撃した。
雷の直撃を受け、ライムとラスプーチンがふっ飛んだ。




