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「この前の同窓会は紗栄ちゃん来なかったよね。あれ、結構みんな来て盛り上がったんだぜ。紗栄ちゃんにも見せたかったなぁ。小宮の腹踊り。」
ワタナベくんはぐいぐいビールを胃にかき入れてクククと楽しそうに笑った。私はぼんやりと枝豆の皮をむいた。
「…俺さ、紗栄ちゃんにあの時言われたからここまで変われたんだよ。紗栄ちゃんは恩人だよ。昔よりもずっと綺麗になった。本当だよ。」
ワタナベくんは饒舌に語る。私はワタナベくんの顔も見ずに居酒屋の壁に貼られたメニューに目を滑らせていた。この話、いつ本題になるの?ワタナベくんは更に熱がこもったように話す。
「俺は中1の頃から、いやそれよりも前。小学生の頃から紗栄ちゃんが好きでさ。紗栄ちゃんが本が好きなの知ってたから、一か八か図書委員になったわけだよ。」
なんだか聞き覚えのある話だった。どこで聞いたか?大学の友人も同じような戦法で先輩とお近づきになったのだったけっな。
「全然勇気が出なくて声かけられなくてさ、早3年。紗栄ちゃんは頭が良かったから高校は必ず別々だと悟って俺、図書委員最後の日に紗栄ちゃんに声かけたじゃん?」
そこまで聞いて頭から冷えていくような感覚に陥る。そうだ、この男は。
「そしたら紗栄ちゃん、そんなに自信のなさそうな顔した男とは付き合えないってバッサリ!かっこよかったなぁ。その通りだしね。努力しないで甘えたこと言う奴とは付き合えないよなぁ!」
ワタナベはケラケラ笑う。
西日が差す教室で、少し汗ばんだこの少年こそが、立ち去る私を引き止め強引にキスしたのだった。




