EPISODE 15 ~真実を捜して
ここから登場する用語集(てかFF)
・オメガアクト・・・爆発 ・エンドクロウス・・・光
・ソウルジェネシス・・・隕石 ・ソヴィアデッド・・・炎、燚
尚これらは全て「サミニウムの中に含有していたエネルギー」そのものであり、呪文ではありません。
助け出された早苗は感謝の気持ちと共に4人に希望を抱いて社長室へと案内した。
彼女の心は、こんな会社に何も未練がなかった。
無茶ぶりを押し付けられ、エネルギーを搾取されるサミニウムの気持ちにもなってみると悲しくなるものだ。
―――曾て華やかな一時代を過ごした月麗カンパニー。
新たなるエネルギー革命が世界を動かし、その第一人者と為れた会社が落魄れた理由・・・。
「―――この会社も、落魄れたものですよ・・・」
ため息混じりで話した早苗。
自分が初めてこの会社に勤めた時は嬉しさで一杯だったのを覚えている―――。
とてつもない倍率を潜り抜け、見事入社出来たあの頃。
今やそんな感情も何処かへ飛んでいき、現在はもうどうでもよくなっていた。
常軌を乱すようになった上層部の乱暴さ。
「・・・もう戦いも終盤ですね」
「・・・後は純狐とヘカーティアを倒し、経営不振に陥った真実を問いただす!」
サリエルは固い決心を口にしていた。
多くの社員たちが行き交う通路に出ると、その容貌から変な眼差しで見られた4人。
しかしそんな事は気にしなかった。
「このエレベーターで一気に最上階まで行けるんです」
通路の脇に存在した、2つのエレベーター。
そこには2つのランプしか灯っていなかった。
「ここからの直行エレベーターですか・・・」
「いちいち途中の階で止まるのはめんどくさいですからね」
すると5人の前に開かれた扉。
異世界へ誘うかのような幻想を醸し出すエレベーター。
そこへ足を踏み入れた5人。
エレベーターの扉は閉まり、勢いよく月麗カンパニーの最上階まで目指す。
「・・・純狐・・・奴からどんな情報が聞きだせるか・・・」
「でも大体はヘカーティアが仕切ってましたよ」
早苗は勤めていたからこそ分かる事実をしっかりと述べた。
もうこの会社に未練は無かった。寧ろ新たな希望を生みだしてくれた4人に感謝すべきだと思っていたのだ。
そして開いたエレベーターの扉―――。
眩しい光が5人の視界を覆う中、10本の足がそれぞれ目の前の敵に向かって歩きだした。
広々とした部屋の中に入り、奥で佇んでいた無寐の焦燥。
彼女の心に住まわせた彲が静かに―――4人の前において覿面させようとしていた。
抗髒する5人。静かな風の颼飅が―――その部屋に存在した忐忑を具現していた。
回転椅子を回転させ、その面を5人に昍させた純狐。
その顔は―――風の芔の音すら耳に入らぬ、彼女の本性―――蟒蛇が正体を見せたのだ。
「・・・来ましたね。風の噂で聞きましたよ。貴方たちの愚行は」
純狐は5人を見据えていた。
―――龏しながらも自身の廱疽を5人に見せつけるかのように、邪悪で恐ろしいものを。
「風の噂?こちらは貴方たちの行動で一時期破綻しそうになったんですよ」
「私たちの所為?・・・言い掛かりがお好きなようですね」
「何を!?」
怒ったのは夢美であった。憤怒の色を隠せずにいた夢美は目の前の敵に食い掛かる。
「お前らが馬鹿みたいな経営方針を掲げた為に過大融資を行わさせてこちらが迷惑を被ったの!
自分勝手もいいところだ!曾てこの会社を尊敬していた時もあったけど、今や卑下している会社だしね!」
「・・・そう勢いに任せた発言しか出来ないんですね」
純狐は椅子から立ちあがり、夢美を煽った上でガンブレードを右手で構えていた。
セノヴァ同様、トリガーがあるガンブレードは引くことで内蔵された火薬が着火され、斬撃の威力を上げるものであった。
「・・・お前を倒し、真実を追求してやる!」
「・・・その行動が実に愚かなのか、その体に直接刻んであげましょう!」
サリエルたちも武器を構え、早苗は少し離れる。
「皆さん・・・頑張って下さい・・・!」
そして―――戦闘が始まった。
δ
純狐はすぐにガンブレードを構えてサリエルの方へ斬りかかったのだ。
走り際に彼女へ向かって刀身を向ける。
すぐにサリエルはセノヴァを構えて彼女の攻撃を受け止めた。
「早速攻撃ですか・・・」
「火薬の一撃も忘れました?」
純狐はトリガーを引くと、衝撃が発生してセノヴァが吹き飛ばされ壁に刺さる。
何もないサリエルはそのまま連続した純狐の一撃をお見舞いされ、剣同様壁にめり込んだ。
「さ、サリエル!」
「次は貴方です!」
純狐は踏み込んで3人の元へ行き、ガンブレードで斬り刻もうとした。
その時、夢美はサリエルが何かを渡そうとしていたのを把握した。
「・・・夢美・・・これを・・・!」
手だけ何とか動かせたサリエルは懐から召喚サミニウムを夢美に投げたのだ。
夢美は召喚サミニウムを受け取り、斬き刻もうとしていた純狐の前に立ち塞がった。
「召喚!『ワイバーン』!」
一番最初に戦ったサミニウム源の警備用ロボットの名を叫んだ夢美。
その瞬間、靄のようなものが現れ始め、純狐は動きを止めてしまった。
「な、何ですかコレは・・・?」
そして靄が急に取り払われ、純狐の視界に姿を映したのは巨体を構えた機械龍。
君臨した巨竜は呼び出したカナをマスターとし、マスターの意を読み取った。
「起動、『ブレスファイア』」
召喚されたワイバーンは大口を開け、対象である純狐に向かって炎を吐いたのだ。
獄炎の熱さとも言うべき業火は全てを焼き尽くすが如く、彼女に襲い掛かる。
「そういうことですか・・・!」
純狐はすぐさま身を避け、炎を回避する。
先程まで座っていた椅子が炎に塗れていた。
ブレスファイアを終えたワイバーンは再び靄となり、そして姿を消したのだ。
「す、凄い・・・」
身に染みて召喚サミニウムの持つ力の凄さを感じたカナは絶句していた。
それを見ていたカナとぬえも、今まで戦ったことのある警備用ロボットの力を改めて感じた。
「今まであんなのと戦ったんですね・・・」
「チッ・・・そんなサミニウムを持っていたんですね・・・」
舌打ちしてサリエルたちの持つ必殺兵器に羨望と恨みを感じた純狐。
その怒りの露わなのか、ガンブレードを構えて大きく空中で振りかぶり、真空波を放ったのだ。
「真空波なら・・・ハイドロガンで相殺!」
夢美は持っていた銃を構え、襲い掛かる真空波に向けて気圧弾を撃ったのだ。
空気同士の攻撃はお互いが混ざりあい、溶けつつやがて消えたのだ。
「今ですね!」
その隙を見たぬえはショットガンを構え、純狐の右太腿目がけて引き金を引く。
放たれた銃弾を見切った純狐はすぐにジャンプしてかわし、燃えている椅子の上で着地した。
「この炎を剣に纏わせる・・・」
ガンブレードに炎を纏わせ、再び大ジャンプして4人に斬り込もうとする。
すぐさまカナが道路標識を構え、燃えているガンブレードを防いだ。
が、カナの持つ柄の部分が段々と熱くなってきたのだ。
「あ、熱い・・・!」
「火薬で終わらせる!」
必死に熱さに耐えていたカナを解放するが如く、彼女はトリガーを引いたと同時に衝撃を起こす。
その瞬間、カナの持っていた道路標識もセノヴァ同様に壁に刺さる。
「カナに手は出させない!召喚!『ガウェイン』!」
すると再び靄がかかり、晴れた時にはカナの前にサミニウム源の警備用ロボットの騎士が彼女を守る為に塞がっていた。
純狐の行く手を遮るガウェイン。
彼女はそんなガウェインを倒すためにガンブレードをもう1度振るうが、ガウェインはすぐに靄となって消えたのだ。
「は!?」
純狐は訳のわからない幻影に戸惑ったが、すぐに後方から気配を感じた。
「そこですね!」
不意を突こうとしたガウェインに対し、純狐はすぐに見切ってガンブレードで防いだ。
その時、カナは壁から道路標識を抜き、それで純狐の腹部に斬りかかった。
「はい止まってくださーい!」
止まれの標識は純狐の腹部に直撃し、ガウェインに集中していた純狐は腹部を押さえて地面に倒れこんだ。
ぬえと夢美はその間にサリエルとセノヴァを壁から助け出していた。
「だ、大丈夫か!?」
「わ、私は平気よ・・・」
よろけ乍らもセノヴァを構えて戦おうとするサリエル。
だがそれは無謀に近い行動であり、夢美はすぐに止めさせた。
「今は休んどいた方がいい、後は私たちが戦う!」
「あ、ありがとう・・・」
サリエルは言葉に甘えて壁に寄りかかる。
倒れこんだ純狐を来て、ガウェインは靄となって姿を消した。
「まだ・・・終わらせない・・・!」
無理やりながらも立ち上がった純狐。
その顔に余裕は無かったが、右手を天に掲げた。
「・・・ソウルジェネシス」
そう言うや、月麗カンパニーの最上階に襲い掛かる謎の地震。
畏怖を放ったこの揺れは5人にも襲い掛かる。
「な、何だこの揺れは!?」
「何をしたんだ純狐!」
夢美はそう純狐に問うと、彼女は―――笑った。
「この戦いに決着をつけるための私の最終手段・・・『メテオ』だよ・・・!」
そして最上階に降り注ぐ隕石群。
大気圏を越え、真っ赤に染まった隕石群が5人目がけて墜ちようとしているのだ。
「い、隕石!?」
「どどどどどどどどどどうすれば!?」
焦りを超えてパニック状態に陥る3人。
「全員この会社と共に埋めてやる・・・!」
するとサリエルは夢美にこう言い放った。
「私に召喚サミニウムを貸せ」
そんな言葉を受け、すぐに渡した夢美。だが隕石群が迫り来ているのは確かな事実であった。
「こんな状況でどうするんだよ!?」
「奴を呼ぶ・・・!」
そしてサリエルは叫んだ。
「召喚!『マグナ・シリウス』!」
呼び出されたのは博麗製鋼の最高の技術にして藝術。
その名を叫ばれた瞬間、純狐の顔が真っ青になった。
「まさか・・・アイツを・・・!?」
靄がかかり、姿を見せた巨大な最終兵器。
博麗製鋼が遺した永遠の夢が、そこに現れたのだ。
呼び出したサリエルの意を感じたマグナ・シリウスは襲い掛かる隕石群を見据えた。
「我が名はマグナ・シリウス・・・この世に置いて最高の技術にして藝術だ!
―――起動、『ダークシュトロム』」
闇が放たれたと同時に窓ガラスを突き破って襲い掛かった隕石群。
その規模に圧倒される5人だが、闇の力が煙のように立ち昇り、隕石群を覆っていく。
闇の中の異次元へと隕石群を送り込むマグナ・シリウス。
そして隕石群は―――最上階だけを破壊して消え去ったのだ。
冷たい風が頬をよぎる。
役目を終えたマグナ・シリウスはそのまま靄に流れて消え去った。
「・・・嘘、だ・・・」
もう戦う力を失くた純狐は5人を前に、地面に身を沈めたのだ。
δ
「さて、真実を聞き出させてもらおうかな」
サリエルはすぐに純狐の胸倉を掴み、恐ろしい物言いで問うた。
「何故この会社は経営不振に陥った?」
すると純狐は悲しそうな顔をして答えた。
「それらは全て・・・ヘカーティアに任せていました」
聞く気も失せたサリエルは呆れ、胸倉を離し、彼女を再び地に沈めさせた。
「コイツはただの飾り物、って訳か」
「院政みたいですね」
サリエルは倒れている純狐に最後の問いをかけた。
「じゃあヘカーティアは何処に姿を眩ませた?」
「地下の秘密恍炉・・・そこに行ったはず・・・」
「秘密恍炉?」
早苗は不思議そうな声を上げた。
どうやらここで勤めていた彼女もその存在は知らないらしい。
「どうやっていくんだ?」
「この通りに・・・」
純狐はよろめきながらも隠していた秘密恍炉への行き方の地図と鍵を渡した。
「この鍵で入れるんだな」
「はい・・・」
もう彼女に用は無くなった。
「行こう、ヘカーティアを潰しに行くために!奴から真実を聞き出す!」
表現が難しい(らしい)のでそれなりの最低限の漢字には振り仮名をつけました。
あともう少しで完結です




