EPISODE 14 ~闇に囚われた龖
2人を追って夊して奥へと進む一行。
煤だらけの不衛生な場所を進んでいくと、明るい光が見えてきた。
「あそこに2人が・・・!」
「横領なんかさせませんよ・・・!」
4人は決意を露わにしていた。
最後の最後まで敵対した2人との最終決戦―――。
サリエルは既にセノヴァを構えていた。
そして明かりに足を踏み入れた時、視界に映ったのは早苗と天子と衣玖。
2人は早苗を脅してヘカーティアの元へ案内するよう言っていた。
「早く言ってください?」
胸倉を掴んで吐かせようとする2人。
早苗も2人が実に厄介な存在だと知っていたため、言わなかったのだ。
「離せ!」
サリエルがそう叫んだとき、天子はそんな4人を見据えて言い放った。
彼女の口元に浮かんでいる笑みが4人を苛立たせる。
「嫌だ。離せ、って言われて離す奴がいると思う?」
すると彼女は緋想の剣を構え、早苗の首元に向けた。
・・・そう、人質である。
2人の生贄となってしまった早苗は何も言えない上に抵抗も赦されない。
「人質か・・・!」
「何時までここに立て篭もる気ですか!?」
ぬえの質問に衣玖が答えた。
「貴方たちが武器を地面に落とすまで」
「戦う事を全面拒否してきたか・・・!」
2人をすぐに殲滅したい気持ちは4人に存在したが、したら早苗が大変な目に遭うだろう。
無辜の民を巻き添えにする2人の腐り切った心・・・冫した彼女たちの心に4人は恚憤した。
「・・・心まで腐ってるとはな・・・衣玖!天子!」
早苗に巻き起こった殃。
そこには哀れにも行員の地位を辷った衣玖の私怨があったのだろう。
「なら貴様らの全てを冎ってやる!」
不意に叫ばれた声。
聞き覚えのある声は早苗を人質にとる2人の背中の後方から響き渡ったのだ。
彼女の大きな声に込められた、怒りを通り越した心の燚。
そして早苗は何者かによって救われ、助け出されたのだ。
僅か一瞬、瞞著されたような気分になった2人はすぐにその正体を見据えた。
―――小傘であった。
早苗にとっては鼒のような救世主であった。
「こ、小傘・・・」
「サリエルさん!後は2人を!」
人質を失った2人はもう捨て鉢な心境であった。
「ならサリエル・・・ここで決着をつけよう!」
「望むところだ・・・衣玖!」
小傘は早苗を置いて、1人何処かへ向かおうとした。
「何処へ行くんです?」
そんな早苗の問いに彼女は無言で消えていった。
そして始まろうとしていた6人の戦い・・・。
恐怖で齷齱してはしまいかと怖じけそうになるも4人は勇敢に立ち向かった。
「・・・終わらせる!この戦いを!」
「貴方たちには『浅薄愚劣』という言葉が丁度似合うね!」
δ
衣玖は天子と連携し、お互いが剣を構えて十字架を描きながら4人に襲い掛かったのだ。
龖の如き動きで隙を作らない戦法だった。
「ここで住ね!」
天子の叫びと共に襲い掛かった2人。
すぐさま前線にサリエルとカナが立ち、セノヴァと道路標識で2人の剣攻撃を防ぐ。
摩擦が走り、ギシギシと音を言わせる。
「横領なんて・・・させない!」
「この私がいる限り、悪事はやめたほうがいいですよ!」
サリエルとカナは力一杯2人を跳ね返し、彼女たちは遠くに着地した。
その瞬間を狙って夢美とぬえが動く。
「隙だらけなんですよ!」
しかし放った気圧弾と銃弾は衣玖の能力で空気を読まれ、すぐに見切られて避けられてしまう。
瞬間移動とも捉えられた2人の高速な動き。
早苗は壁に隠れて戦いの様子を緊張しながら見ていた。
「隙だらけ?それは貴方たちなのでは!?」
刹那、懐から不意に取り出した衣玖の拳銃が火を噴き、夢美とぬえ、カナの腹部や太腿に着弾したのだ。
サリエルはセノヴァで守られたが。他の3人が負傷して竦んでしまった。
地面に膝をつけて苦しそうにする3人。
その時、早苗は近くにあった応急手当用の用具が入った箱を幾つか捜し出し、3人の元へ急いだ。
「サリエルさん!3人の傷は私が治しますから・・・サリエルさんは2人を!」
「か、感謝します!」
早苗は3人を端に寄せて傷の手当てをし、サリエルはそんな4人を2人から守るように立ちはだかっていた。
衣玖と天子はそんな様子に馬鹿にした笑いをしていた。
「これで3人も怪我したじゃないですか・・・。・・・2対1の状況で勝てるんですか?」
「これだ!」
手当てを受けていた夢美は持っていた手榴弾を2人に向かって投げたのだ。
大きな弧を描いて、空中を舞う手榴弾。
完全な不意打ちを受けた2人の元で大爆発が発生した。
「ぎゃあああああ!!!」
2人の叫びの声が上がる。
手榴弾によってサリエルの視界が煙に覆われて見えなくなったが、サリエルは2人の位置を把握した。
「今だ!」
煙の中を突っ切り、彼女は先に天子を倒すことを決めた。
天子の方向にセノヴァの先を向け、一気にトリガーを引いた―――。
剣は分裂し、天子を7本の剣が一閃した。
「な・・・」
何も見えない中、彼女は斬られた感覚と共に地面に身を沈めた。
残るのは衣玖であった。
煙が晴れ、彼女は姿を露見させた。
「て、天子っ!」
衣玖は倒れている天子を心配したと同時にサリエルをじっと睨んだ。
その眼の中にあったのは彼女の讟―――彼女への釁隙であった。
「・・・サリエル、全てを臠わしてあげましょう・・・!」
「臠わす?随分丁寧なお言葉ね」
「―――貴方を天と地の間を蹀躞させる為にね!」
衣玖は構えていた剣で一気にサリエルに斬りかかったが、サリエルはすぐにトリガーを引いて元の大剣に戻し、彼女の攻撃を受け止めた。
ぎしぎしと鳴る摩擦音。
「衣玖さんは譅譶するのがお好きなようですけど」
「難しい言葉を使っても相手が意味を分かってなければ何の効果も無いのよ」
「分からないのね、意味が」
衣玖はすぐに踏み込んで、剣を構えた7回連続剣撃をサリエルに浴びせるが、サリエルはセノヴァで守り切った。
「これでもくらえ!」
急に飛ばされたのは―――道路標識。
手当てを一番早く受けたカナが精一杯の力を振り絞って衣玖に向かって標識を投げたのだ。
「ぐほっ!?」
訳も分からないまま彼女の腹部に標識が当たり、その勢いで彼女は腹部を押さえて右膝を地面につけた。
少し泡を噴き出しており、衝撃が凄かった事と当たり場所がかなり悪かったことを伝えていた。
「ではとどめだ!衣玖!宇佐見銀行を衊した元凶よ!」
サリエルは再びセノヴァを構え、半分倒れていた衣玖に向かって剣先を向ける。
彼女の透き通った青い眼差しが、敵対する元凶の姿を捉えた。
「このままでは・・・!?」
剣を構えようとした衣玖だったが、剣が何かによって弾かれてしまう。
そして銃口を自分に向けていたのは―――ぬえであった。
「勝手な真似はさせませんよ!」
ぬえのサポートのお陰で何も出来ない衣玖。そんな彼女にサリエルはセノヴァの一撃をお見舞いする。
「くらえ!」
δ
2人は敗北し、早苗の手当のお陰で元気になった3人含めた5人はそんな2人を見下していた。
傷つきながらも立ちあがって頭を下げた2人。夨する2人は沈黙していた。
「・・・すみませんでした・・・」
2人の辛辣な謝罪が部屋の中で響き渡った。
彼女たちの蠢爾がもしも成功していたら・・・と考えると背筋がゾクッとした彼女は考えるのをやめた。
「小傘のお陰で早苗が助かったけど・・・人質に取るなんて最悪だよね」
夢美は躛な2人の行動を批判した。
「・・・」
何も言えることが無くなった2人。
衣玖と天子はゆっくり5人の顔を見渡し、そして自分たちが犯した諐を深く省みた。
「・・・まあコイツらはコイツらで懲りただろう、暫くは何もしないはずだ。
・・・問題は他にも敵がいることだ」
サリエルは自分たちを追い詰めた敵がまだ存在することを提唱した。
「ここのトップ陣・・・不当解雇を行った真犯人ですよ」
「奴らがどうして経営不振に陥ったのか聞き出した真相が私たちの求めていた真実、って訳だな。
・・・純狐もヘカーティアも、どちらにしろ悪だ。・・・行こう」
サリエルは最上階にある経営者の部屋へ向かおうとしたが、早苗が呼び止めた。
「ま、待ってくださいサリエルさん!」
すると早苗は青色の美しい輝きを持ったサミニウムの結晶をサリエルに渡す。
「こ、これは・・・?」
「これはサリエルさん達が今まで戦った「サミニウムの力を取り込んだ敵」を幻想として呼び出せる結晶なんです」
早苗は説明を始めた。
「サミニウムの力を取り込んだ敵?」
「はい。博麗製鋼の警備用ロボットなどがその代表例で、今まで戦った「サミニウムの力を取り込んだ敵」の幻想を作るんです。
だからサリエルさんがそれを掲げ乍らその敵の名前を言い放つと、その敵が出てきてアシストしてくれるんです」
「つまり・・・『召喚』、ということですか?」
カナはそう聞くと、早苗はその言葉を待っていたらしく、非常に嬉しそうな顔で頷いた。
「そうです!呼び出せる・・・つまりこれは『召喚サミニウム』なんですよ!」
言いたい事が勰った早苗。
「召喚サミニウム・・・これを私たちに?」
「はい!助けて貰った、ていうかやっつけて貰ったお礼です!
・・・実は私も純狐とヘカーティアのやり方は嫌いでして、サリエルさんを応援しているんです。
・・・ですから、それを役に立ててください!」
彼女の冒険も、もう終わりに差しかかろうとしていたのかもしれない。
が、彼女たちもまだまだ若い丫鬟であるが、闇はすでに取り払われ、うっすらと真相が見え始めたのだ。
廴な道のりも終盤であった。
純狐とヘカーティアに戹しめられた東方重工の求めた真実は一体何なのだろうか。
時間は乁のように流れていく。その間で何が出来るか、価値も変わってくるだろう。
―――「儿」と「人」、この両字はどちらも同じ意義だが、形の変化から何か学べる。
生き物は最初、どんな時も「儿」・・・要するに「知らない仲、赤の他人」として存在していた。
儿、くっついていない棒は関係ない、無縁な人同士の現れであった。
が、「儿」が変化して「人」になると、棒同士がくっついたのだ。
くっつくこと、つまり関係を持つことが生き物にとっての嬉しいことでもあり、関係を持った仲と過ごす乁の時間は素晴らしいものだ。
・・・自分は、仲間に恵まれているのかもしれない。
・・・そんなどうでもいいことをサリエルは頭の中で考えていた。




