「何通りにもなるびっくりチョコ!」
コテコテの双子キャラ…っぽいナマモノ。
ゼリービーンズとかの組み合わせるやつ好き。
軽食と言いつつしっかり目に腹を満たして舌をリセットした後、一足先に自分のブースへと戻っていったオーラ・コスモペアを見送ってホールに2人。
そろそろ次なるチョコを味わいに行こうかとバイトくんと話していると、後ろからまた明るい声がかかる。
「やっほー!VIPの人!」
「どーも!VIPさんたち!」
ちょっと間ぶり~!!と声をそろえたそっくりな2人。
…一見してそうとは気づけなかったオーラさんとコスモさんが双子。ということは翻って言えば、そっくりなこの2人は双子ではない?
そんなことを考えていたのが伝わったのか、チューさんとニョーイさんが顔を見合わせて笑う。
「あっはは!僕らは双子!」
「じゃあないよ!その通り!」
「?、?、??」
「あはは!」
面白がって混乱させるような物言いをする2人に、案の定バイトくんが頭を悩ませている。
「ごめんね!こっちはニョーイ、僕のお母さんのお姉さんの子供!」
「ごめんね!こっちはチューくん、ぼくのお母さんの妹の子供!」
「ちなみに、お父さんも兄弟!親友同士のお母さんとお父さんが」
「お互いの兄妹と結婚したんだよね!ややこしい!」
「だから双子じゃないよ!」
「ぼくの方が1つ年上!」
「僕の方が1つ年下!」
「「さあ、わかる?」」
「え、ええ?えっとお…?」
「要するにイトコということですよ。要素が多くて混乱しますが」
「せいかーい!」
「いえーい!」
くるくる回りながら交互に話す彼らに、目を回して大混乱のバイトくん。
とはいえ、そこまで難しいことでもない。冷静に考えればいいだけだ。
彼らの両親が兄弟姉妹同士。
ゆえにニア双子とでもいうべきか。イトコだが、より近しく似ているという話なのだった。
「順番に回ってるんだよね!次は僕らのところにおいでよ!」
「さあさあ、おにさんこちら!」
「おやおや」
元気な彼らに手を引かれて、着いた先はもちろん彼らのブース。
「ぼくらは2人で店出してる!」
「2人で1人!だからブースも1つ!」
大きなテーブルには淡いピンクとグリーンのクロス。その中央に置かれた透明な台には、赤いリボンできゅっと絞られた小さな包みが並べられている。
見本のように開けられているものを見れば、ビーンズ型のチョコレート。色付く粒に視線を落とせば、得意げに説明される。
「僕らのチョコは口の中で完成する!」
「ビーンズの組み合わせ次第で何通りにもなるびっくりチョコ!」
「さあ召し上がれ!」
そっと手を伸ばして近くの包みを取り、手の上でリボンを解けば見本と同じようにカラフルなチョコビーンズ。
まずは1つつまんでいただく。
「…うん」
続けてもう1つ口に入れれば、途端に混じり合い絡み合い、またすこし違う味に変わる。
「ブルーベリーとチーズ、ですね。面白い」
「!チョコバナナですぅ!あ、いちごも合う!」
単体でももちろん美味しいのに、合わせればさらに美味しい。
見た目のカラフルさやビーンズ型というポップさ、口の中で合わせる面白さ。これはたしかに人気が出ること間違いなしでしょうね。
「「いえ~い!大成功~!」」
パチン!と手を合わせて喜ぶ。
作るチョコレートといい、言動と言い、見た目に反して幼い。
身長があるので勝手に年齢層を上に思っていたけれど、それよりも若いのでしょうか。
「息ぴったりですねえ!なんかすごい!」
「ま~それほどでも~?」
「ありありのありだけど~?」
はしゃぐ3人をチョコを食べつつ見ていると、後方から足音が近づいてくる。
足早なその音に他の参加者かと考え、ブースを譲るべきかとスッと身を壁側に寄せれば足音の主も壁側に向いて進んでくる。
「…?…あ、お嬢さん。と…」
「は、はは…。どうも…」
誰だ。
「いや、おれです。独り身おじさんのジェットです。…むなしい自己紹介だな、これ…」
適当に伸ばした黒髪を雑にひとつ結びにして、あごには多少整えられた髭。目元にかかる厚い前髪。
猫背気味でなで肩の、覇気のないあのジェットさんが。
「…これはまさしく、変身ですね」
耳辺りですっきりと整えられたサラサラの黒髪。髭はなく、眉上で長さと量を整えられた前髪はセンターパート。
くたびれて見えた体も、ラインを見せる新しいコックコートによって案外筋肉のついたバランスの良さが分かるように。
見た目が良くなったのは言うまでもないけれど、年齢だってマイナス10歳ぐらいに見える。
「じゃ~ん!どうでしょう!かなり力作なのですが!いえ、素材の良さありきではあるのですが!」
「は、恥ずいな…、これ」
「自信もってください!これからは爆モテですよ!保証します!」
「え、ええ…?嬉しいようなそうでもないような…」
そんなやり取りをしていると、はしゃいでいた若者たちも気になったのか寄ってくる。
不思議そうに、誰?と首をかしげる3人に耳打ちすれば、驚愕をあらわに固まってしまう。
「「「…!?!」」」
まあ、気持ちはわかるな。
内心、うんうんと深くうなずきながら同意。
「…詐欺じゃん!?」
「…偽物ォ!!?」
「ほわあ~」
三者三様の反応に、ドヤ顔で胸を張るお嬢さん。ジェットさんは赤いやら青いやら不思議な顔色になっている。
「ふふん!どやあ!」
「は、ははは…」
「なんということだ…」
「まさかのダークホース…」
「ふわあ~」
「…、愉快ですねえ」
まあ、もう少し眺めてからにするか。
?が飛び交う謎空間に、ふっと笑みをこぼした。




