「可愛くって美味しいチョコエッグ!」
チョコエッグのワクワク感は異常。
アリスのモチーフは鉄板。
つまり最強。
2階エリアを制覇すれば、次なるは3階エリア。
3階エリアは2階エリアに比べてやや人が多く、特に上がってすぐのルチルさんのブースらしき場所は今も人だかりが出来ている。
まあ、前回、前々回覇者というショコラトル・パレードの歴史上初のとんでもない偉業を成しているそうだし、今回も彼女が優勝すれば前人未到の3連覇となるわけなので、さもありなんといったところか。
「では、また奥から行きましょうか」
「そうですね」
「はいっ!」
スルスルと人の間を縫って奥に行けば人も少なくなり、一つのブースに辿り着く。
「あ〜!やっと来た〜!」
こっちこっちィ!と明るい声で手招きする女性、コスモさん。
ブースに負けず劣らずカラフルで元気、少々過ぎるような気もするけれど。
「やっほ!待ってたよォ〜!ね!ね!食べて食べて!」
そう言って差し出されたのは丸い塊。
「たまご…?」
3人揃って首を傾げる。
受け取ってテーブルを見れば、ペツォッタさんとはまた違うポップでカラフルなクロス。
そこに並べられているのは明るく彩色された卵。まるでイースターエッグのよう。
「そうそう!あたしのは可愛くって美味しいチョコエッグ!」
「チョコエッグ…!」
「まあ!可愛らしいですね!」
渡されたチョコエッグは3人それぞれ違うデザイン。その目を引くデザインにまじまじとたまごを見つめる。
さあさあと急かされるままにぱきりと先端に噛みつけば、薄いチョコレートの殻が割れて小さなチョコレートがいくつもあらわれる。ハート、ダイヤにクローバー。
「ん!殻のチョコも美味しいけど、中のチョコがまた美味しい〜!可愛くて楽しくて美味しい!最高ですう〜!!」
「本当ですね。女性や子供にもかなり人気が出そうです」
「私もそう思います!それにこれって、アリス、ですよね?」
「わかっちゃったァ?せいか〜い!ピンポンピンポーン!」
実際、本当に美味しい。バイトくんがぴょんぴょん跳ねながら頬を緩めてチョコを味わっていると、同じようにお嬢さんも声をあげる。
すると気をよくしたのか、さらにハイテンションのコスモさんがひとつひとつ説明してくれる。
「あたしのチョコは4種類!アリスの不思議なチョコエッグ!」
テーブルにはアリスをモチーフにデザインされたというチョコエッグ。たまごのデザインは全部で4つ。
水色に白いエプロンドレス、赤地に黒いレースと王冠、紫と黒の縞模様ににんまりと笑う口、時計やうさぎや蝶などのシルエットが描かれた物。
中にはトランプ兵をモチーフにしたのか、スート型のチョコが詰まっている。
「これってもしかして、それぞれ味も違いますか?」
「おお〜!そこに気づくとはさっすがァ!」
これまでの経験則的に尋ねてみれば、弾むような声で返ってくる。
そっと3人で互いのチョコエッグを見せ合えば、なんとなく中の小さなチョコレートの色が違うように感じる。
見間違い、と言われればそうかもしれないと思う程度の少しの差。
ハートの赤が少し濃いように思ったから聞いたのだけれど、やはり。
「赤の女王はちょっとビター。だから中のスートチョコもちょっと濃いめ!」
「なるほど」
自分の手の中のエッグチョコを見る。
「チェシャ猫はマーブル。ミルクとホワイトとビターで味にも変化を出してたり!」
「なるほど…!!」
バイトくんも手の中のチョコエッグをチラリと見て、深く頷く。
「アリスはホワイトチョコ。まだ真っ白でなんでも楽しめる!中身も一番プレーン!」
「なるほどです」
お嬢さんがチョコエッグを目の高さに持ち上げて真剣に見ている。
「最後のモチーフチョコはちょっとクセ強め。塩と蜂蜜で甘しょっぱい!」
「おお〜!」
ちなみに、とチョコエッグをひとつ持ってそばにある空のマグカップに入れてみせる。
「こうして上からあったかいミルクを注げば楽しいホットチョコレート!子供に大人気!ね、いいでしょ!」
胸を張ってエア実演をするコスモさん。
なぜ空っぽのカップがあるのかと思っていたけれど、このためだったらしい。
「そのまま食べても楽しいし、ホットチョコレートにしても美味しい!一石二鳥?って言うんだっけ?」
「はい!わたしもそう思いますぅ!」
「うふふ!」
きゃいきゃいはしゃぐ彼女らを微笑ましく見守りながら残りのチョコレートをつまむ。
一緒に食べてもいいけれど、こうして中身をひとつずつ摘んでも美味しい。
「やっぱさァ、美味しいものはシェアしたいじゃん?あたしはみ〜んなで楽しめる美味しいチョコが一番だと思ってるんだよね!美味しいだけじゃなくてさァ!」
にぱっとコスモさんが笑って言えば、横から刺すような声。
「あ〜ら、それはわたくしに対する当てつけかしら。本当に品のない方」
「むかっ!」
「ま、そうやって媚びるしかあなたには勝つ方法がわからないのかもしれませんけれど?」
「……ほんっと、だるい」
「何かしら?」
声の方向を見れば、コスモさんとは対極のような真っすぐの黒髪を肩上ですっぱりと切り揃えた女性。
たしか、彼女はオーラさん。
紹介の際にも2人は絡んでいたような。
「そこの派手な方は置いておいて。次はぜひ、わたくしのブースへ来てくださいな。見た目に左右されない本当のチョコレートの美味しさを披露いたしますわ」
そう言って彼女はにっこりと笑った。




