第108話 NSX vs S2000
一見すると仲が良い坂口愛衣と坂口拓洋の夫婦。
それを自認して、自慢げに歩くのは坂口愛衣なのだが、一方で、入り婿の拓洋はそれを言われると心を閉ざしてしまう。
三条神流と松田彩香の重連と同じだ。
相変わらず、何ら変化のない。と言うより、何も起こせず確実にレースを進めていく三条神流と松田彩香の重連は、一つ順位を上げた後は、日奈子のロータス・エキシージの後ろに付き、同じ順位をキープしている。
一方で、坂口拓洋と坂口愛衣はチームメイト同士でのトップ争いだ。
旭浦の高速ヘアピン。
またも、スーパー耐久マシンに引っかかる。
アンドリーガールのFITとまたHONDAだ。
「退け!」
と、坂口拓洋は何度もパッシング。
コーナーの都度、オーバーテイクしようとすると、そこへFITを持って行き、ブロックするのだ。
大会本部から黒白旗で警告される程で、青旗も何度も無視している状態だ。
旭浦のヘアピンで、とうとう、坂口愛衣に抜かれてしまった。
するとどうだろう?
FITは坂口拓洋に道を譲ったのだ。
「何ですか今のは!?」
と、無線で怒鳴る。
「政治だ政治。」
「-。正孝さん、いや、監督。そういうの俺嫌いだと言ってますよね。政治的な圧力で、負けたり勝ったりするの。そんなのレースではないって教えてくれたのは、監督です。」
坂口愛衣も「ふん!」と、露骨にブレーキを蹴飛ばして、坂口拓洋の後ろに戻った。
「私は純粋に、拓洋とレースがしたいのです。政治的圧力で勝っても、うれしくありません。」
坂口愛衣も、こうした考えは坂口拓洋と同じだ。
「このロングストレートの先、高速のS字が待ち構えている。どっちが引くか、度胸試しよ。」
と、坂口愛衣。
「望むところだ。」
浮見堂公園から洞爺町交差点までのロングストレート。
ここで、2台が並んだ状態で、高速で駆け抜ける。
この先のS字は、日奈子と三条神流がスピンを喫した場所だ。
両者、時速250キロ~300キロでロングストレートを駆け抜ける。
コーナーが見えた。
インサイドに坂口拓洋。
先にブレーキングをしたのは坂口愛衣。
一瞬、坂口拓洋はブレーキが遅れた。
(ちっ!若干オーバースピードだがこのまま、ケツを出し気味に4ドリで!)
4輪ドリフトで坂口愛衣の頭を押さえる。
そのまま、左コーナーはクリッピングを手前に取って、慣性ドリフトでクリアすると、アクセル全開でストレートに突入。
「あちゃぁー」と、坂口愛衣はNSXの後ろ姿を見ながら、苦笑いを浮かべた。




