第8話 魔法の修行をしよう②
昼休憩の後、光莉たちは、魔法の修行に入った。
「魔法の基本は、術者が創造する自然現象、人工現象を、『魔術』と呼ばれる術式に変換することから始まります。一つが出来たら後は、応用がどれだけできるかによって、魔法のバリエーションは広がっていきます。
まずは、みなさん全員がどちらかを持っている『火属性』と『水属性』の魔法を基本として習得していきましょう。
皆さんが持つ知識を総動員して、『火属性』は、指先に火を灯してみてください。『水属性』は、掌から水を出してみてください。」
キャロルの指示で、各々が思い描くように魔法の修行が始まった。基本魔法を生み出すならば、これといった魔術を組む必要はなく、ただ、思い描いたものを念じるだけで発動すると、キャロルは教えてくれた。
両方の属性を持つ光莉は、とりあえず、火を灯すとこから始めた。一番真っ先に思い浮かべたのは、『蝋燭に灯を灯す』ことだった。
『灯を灯す』行為は、化学的には『燃焼』と呼ばれる化学反応だ。『燃焼』の原理は、燃料である可燃物、酸素を断続的に供給、可燃物の発火点まで温度を上げる。この三つが揃って、初めて『燃焼』という化学反応がおこる。
ではこれを蝋燭に当てはめてみる。まずは燃料、それはもちろん固体である蝋だ。酸素に供給は、空気中であれば大丈夫だ。蝋を火種によって、発火点まで温めることにより灯が灯る。後は自らが燃焼する熱で、発火点を維持し続けることによって、断続的に燃焼していく。そして、芯があることによって、燃料の供給をコントロールしている。
これを魔法で再現するとどうなるのか。
まずは、酸素の供給。これは、息をしていることから、十分な酸素はここの空気中でもあるだろう。
次に燃料。ここで何を燃料として燃やすのかを考える。そこらに転がっている可燃物を燃やすのならば、それはただの燃焼だ。『魔法』による燃焼なのだから、当然『魔』のつくものを燃やさなければならない。必然的に『魔力』を思い浮かべる。つまり、『燃料の供給』=『魔力の供給』と考える。
そこで『魔力』とは何かを考える。身の内に宿る魔力は、いったいどんな形をしているのだろう。そこでキャロルの言ったことを思い出してみる。
『魔法とは、想像力』だと。つまり、すべての魔法による現象は、『術者が創造したモノ』なのだ。
ここで『魔法の発動』を『燃焼』にたとえてみる。
まずは『燃料』。これは『魔力』と置き換えることが出来る。次に『酸素の供給』。これについては、『術者の創造力』と置き換えれるだろう。そして、『発火点』。燃焼における発火点は、物質の『温度』だ。ならば魔法における発火点とは何か。光莉が行き着いた先は、『魔術』さらに突き詰めれば、『発動キー』となる。
ここまで考えたところで光莉は、思い切って、魔法を発動させてみた。まずは、指先に魔力を集中させる。そこに蝋燭の灯を思い浮かべてから
「灯よ灯れ!」
唱えてみた。すると、一瞬だけ指先から灯が灯ったが、すぐに消えてしまう。
魔法が術者の創造した現象を作り出すのならば、その燃料たる魔力の形も創造することが出来るのではないかと考える。
まずは自分の内から魔力を具現化してみる。具現化は、午前中にやっていたことをそのままするだけなので割とあっさりとできた。そこから考えたことを実験してみる。まずは、掌サイズに魔力の一部を切り取り、そのほかの魔力の具現化をやめる。これは、割とあっさりと出来てしまった。もう少し難しいと思っていたのだが…。
次は掌サイズの魔力の形を変えてみる。今は、気体なのか流体なのかわからない形をしている『具現化された魔力』に、立方体のイメージを送り込んでみる。すると、掌の魔力は、5センチ四方の立方体の形に変化した。魔力の塊は、光莉の思い描く形状に次々と変化していく。
光莉の魔力操作をたまたま見ていたキャロルは、驚きを隠せなかった。もう既に、魔力操作の第一段階をクリアーしている。何の助言なしに、自分で考えて行っただけの光莉が…。
その他の子も見てみる。光莉が魔力の塊で遊んでいるのを見た他のメンバーが、光莉にいろいろ聞いていた。光莉がここまでのことを簡潔に教えると、他の子たちも、自分のやり方で魔力の塊で遊びだした。やはり、感性の違いで、すぐに出来る者と、なかなか出来ない者とに別れていたが、出来る者にやり方を教えてもらいながら30分もしないうちに、全員が自分の魔力の塊で遊べるようになっていた。
その間、光莉は、次のステップに移っていた。いったん遊んでいた魔力の塊を消すと、今度は、それを具現化させずに行ってみる。
まずは、指先に向けて魔力の流れをイメージする。今度は、蝋燭の灯りではなく、ガスバーナーをイメージする。体そのものをガスタンクにイメージ。そこから延びる腕をガスの通り道であるゴムホースとする。その先にガスの炎を作り出す、バーナー部分となる指先。
そこに、気体をイメージした魔力を少量ずつ流していき、空気と混合させた魔力に火花を当てた。すると、指先から赤く輝く炎が姿を現し、断続的に燃えている。
光莉は魔力の量と、空気の量を調節しながら、炎の質を変えていく。指先の炎が、赤く揺らめくものから、青白く安定した高温の炎に変化していく。その変化を楽しみながら、光莉は、魔力の供給をやめた。炎はその瞬間に、何事もなかったかのように消えた。
キャロルに指摘されるまで、何気にすごいことを平然とやってのけたことに、光莉は、気づいてなかった。2つの属性を並行して使い続けていたのだから。まずは魔力を可燃物と酸素に分けて、同時に指先に送り込んでいたこと。さらに送り込む量を調節していたこと。『風属性』の派生である『雷属性』を使ったこと。極めつけは、『火属性』の炎を作り出すのに、『風属性』の魔法を使用したこと。
それを指摘された光莉の反応は、ただ「おー!そんなことをしていたのか」だった。
光莉が次の執りかかったのは、『水属性』の魔法だ。このなにもない無の状態からどのようにして水を作り出すのか、そのことを必死で考えた。
水の化学組成は、水素と酸素だ。光莉は、ここでも炎を出した時の応用で、『気体』である水素と酸素を魔力で作り出してから、化学反応によって水を作り出した。作り出されった水は、空中で歪な球体を保って、プヨプヨと浮いている。すでに光莉は、重力すらも操って見せた。そしてその水を一瞬で氷にした。
光莉に触発されたメンバーは、光莉に続けと言わんばかりに、魔法を習得していく。そうして、日が沈みかけたころには、メンバー全員が、基礎魔法と、応用を終わらせていたのだった。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




