第9話 魔法の修行をしよう③
翌日からは、魔法の応用の修行をしていく。普通の人ならば、基礎だけで1ヶ月はかかるものだとキャロルは教えてくれた。それをたったの半日で終わらせてしまった光莉たちは、どこまですごいのか見当もつかなかった。
応用の訓練と言っても、基礎を疎かにしていれば、大きな怪我をする。光莉は、それを身をもって知っていた。もちろん毅も…。
昔、格闘術の訓練をしていた時、基礎である柔軟運動や、軽い組手をすっぽかして、いきなり、戦闘訓練をしてしまった時、光莉は、腕を折る大怪我をしてしまったのだ。その時、組手の相手だった毅も、光莉に巻き込まれて、大怪我を負った。
その時の二人の両親は、基礎の重要性を説いた。怪我をしたことを咎めることはしなかった。むしろ、これからは、基礎を疎かにするなと、言われたほどだ。
それからというもの、光莉と毅は、基礎を疎かにすることなく、むしろ、基礎運動だけで、小一時間とるようになる。もちろん訓練終了時のクールダウンも欠かさずに行っていた。
二人にとっての訓練は、『基礎から始まり、基礎で終わる』ものなのだ。それは、訓練の内容が『魔法』に変わった今でも、身に着いた習慣として受け継がれていた。
まずは、基礎の魔法を、それぞれの属性ごとに撃ち出していく。そのあとで、それらを組み合わせて応用していく。そのあとで、新しく魔法を覚えていく。新しく覚えた魔法同士を融合させたりして、全く新しい魔法を作り上げたりもしていった。
そんなことを10日ほど続けると、キャロルは、次の段階に光莉たちに示した。
覚えた魔法を、実戦で使用していくのだ。光莉たちは冒険者だ。当然実戦経験と冒険者家業を一緒にこなすのには吝かではない。どうせ魔物や魔獣を狩るのだ。ついでにお金を稼がないのはもったいない。
光莉たちは、少人数に分かれて、ギルドで適当な依頼を受けては、魔法の実戦訓練と称して、魔物狩りに勤しんでいた。魔物を効率的に行動不能にするには、どんな魔法がいいのか、この魔物は、薬や武具、武器等の素材に加工できるので、なるべく無傷で仕留めるにはどんな魔法がいいのかを考えて、その場で構築しながら練習に勤しんだ。
キャロルはというと、光莉のグループに入り、弟子の成長を楽しく見守っていた。ある日、光莉がキャロルに魔法について質問した。
「キャロル、私、練習している魔法があるのだけど、なかなかうまくいかなくて。」
「どんな魔法を練習しているの?」
「えとね…、『飛行魔法』と、『瞬間転移魔法』、後は回復系の魔法。」
「なぜその3つを使えるようにしようとしているの?」
「まあ、せっかく魔法が使えるのだから、習得してみたいなあと思ったの。
それから、私がいた時代、ゲームではおなじみの魔法だったから。」
「ん…、回復系の魔法は、結構使える人は多いよ。今みたいに町から離れて仕事をしている人なんか、それがないと命の危険があるから。たしか、教会で教えていたと思ったけれど。」
「カランに戻ったら、教会に足を運んでみようかな。あっ!ところでカランの教会って、何処にあるんだろう。そういえば私、行ったことないや。」
「教会の場所は、まあ地の人にでも聞けば教えて入れすはずよ。
後『飛行魔法』と『瞬間転移魔法』は、誰も成功させたものがいない魔法よ。」
「どうして、術式自体はそんなに難しくないはずだけど。」
「ということは、もう術式自体はできてるの?ここにいる高名な魔法使いですら、術式すら組めていないのに…。
ちなみに今どの辺まで進んでいるの?」
「ん…、『飛行魔法』のほうは、何とか空に浮くぐらいはできるのだけど、まだ飛べないんだよね。
『瞬間転移魔法』は、指定した座標に移動できないんだ。あっ!毅は、『瞬間転移魔法』は、使えるみたいだよ。毅は『闇属性』を持っているから、『影から闇に入って別の影に出る』って言ってたかな。『闇』を渡っていくから、行ったことがない場所でも行けるらしいよ。
どうもキャロルから魔法のイロハを教えてもらった日の翌日、『何気にやってみたら出来た』って言っていたかな。今では『闇』はもう毅の一部みたいなものなんでって。
まあ、私が考えている魔法は、『術者が知っている場所』しか移動できないんだけど。」
「あんたたち、いったい何者?ここにいる人たちが、何十年かかっても出来ない事を、たったの数十日で出来るようになるなんて…。」
キャロルはただ、光莉たちの尋常ではない上達速度に驚くしかなかった。
キャロルは一つの提案をしてみることにした。
「光莉、あなたたちなら、ここテラフォーリアの誰も出来なかったことを成し遂げれるかも。」
「何?深刻な顔して。」
「前に行ったと思うけれど、私はこのテラフォーリアの『創造神』だから、特定の個人に肩入れすることはできないけれど、私の下にいる神々はそういうことはないの。」
「うん、それで、その話がなんなの?」
「光莉、あなたたちの中で魔力量が多い者ならば、龍神と契約できるかもしれない。龍神との契約は、それぞれの龍神の試練を受ける必要があるけれど、光莉たちなら他部クリアーできる。
龍神と契約できれば、光莉が研究している魔法も、簡単にできるようになるし魔術の術式も簡単に出来るようになるから。
どう?強制ではないけど、龍神の試練を受けてみる気はある?」
ヒカリたちは、キャロルの提案について相談した。もちろん『OK』した。
「解ったわ、全員試練を受けるのね。」
キャロルの話では、それぞれの龍神は、テラフォーリアのそれぞれの国に神殿を持っており、ここコロラド王国では、各州に一つづつある。神殿の形は、それぞれこれといった形はなく、何処にあるのかも普通の者は知らない。そもそも神殿の存在が、数ある伝承のうち、王家に伝わる伝承しか登場しない。さらに、神と呼ばれる龍神に契約できた者は、ここ数百年誰もいない現状では、ただのお伽噺とかしていた。
それぞれの神殿には、その属性を持った者しか入ることが出来ず、さらに神殿の入口自体が、魔力量が尋常じゃないほど多くなければ、そもそも見つけることもできないと、キャロルは言っていた。
「ある程度大きな魔力を持っていれば、神殿のある方角にそれぞれの属性を現した光が、対象者から伸びているはずよ。」
「それで納得がいったわ。この六つの方向に、色の違う光が伸びているのは何故かと思ったら、そんな理由だったのね。この光をたどっていけば、その神殿に行くことが出来るのね。」
「そうよ。その光の先に、龍神の神殿があるわ。私の思った通り、光莉は、試練を受けれる対象者だったんだね。後、光が見える人は、どれだけいるのかしら。見える人は、ちょおと手を挙げてみてくれない。」
キャロルの問いかけに、数人の人が手を挙げた。
光莉のほかは、毅、謙治、智美、玲子、真奈美の計6名が対象者のようだ。光莉は、すべての色の光が見え、毅は、『光』の色である『白』以外すべての色の光が見えていいた。後の4人は、『光』と『闇』以外の全属性持ちなので、それぞれ、緑、青、赤、黄の各色の光が伸びているという。そして共通することが、一番強く光る光の帯がそれぞれ1本づつあるという。
キャロルは少し考えた後、おもむろに推測を交えた答えを言った。
「ん…、推測でしかないけれど、たぶん、その一番強く光っている先にいる龍神と契約すれば、『光』と『闇』以外の龍神と契約したことになるわ。それから、あなたたちは、一番強く光っている先の『龍神の神子』よ。」
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




