第16話 智美のお料理珍道中
謙治と智美と玲子は、途中王都であるロンドリアまで、何かの護衛をしながら行こうと決めた。どうせなら冒険者らしく、お金を稼ごうと思っていたからだ。
まだ冒険者のランクは、一番下のFなのだが、それはただあまり依頼を受けてなく、ここ1ヶ月くらいは、魔法の修行ばかりしていたからだ。ランクは、ギルドが定める基準以上の依頼を受けて成功すれば勝手に上がっていく。ランク=実力という図式はあまり当てはまらないのだ。
智美たちは、カランから王都まで行くという商隊の護衛団の一つとして加わった。総勢100人ほどの商隊と、30人ほどの護衛団からなり、智美たちは、商隊の中ほどを任されていた。大きな町の近くは比較的安全なのだが、町から離れると、そこはもう無法地帯となる。盗賊はもとより、魔物の襲来にも警戒しなくてはならず、ギルドの依頼の中で、商隊や旅人の護衛は、最も多い依頼の一つなのだ。
智美たちがカランと発ったのは、光莉たちがカランを発ってから2日後の朝。この商隊は、途中いくつかの町や村を経由しながら王都を目指す計画になっている。それまでの食料は、それ専用の馬車から商隊すべての人員に、分け与えられることになっていた。料理のできる者が、全員分の料理を作る。これは、出発前からの取決め事項で、商隊、冒険者問わず、皆で協力し合って行うことになっていた。もちろん智美は、料理を作るほうに加わっていた。
カランと発って1日目の夜。野営地では、今晩の寝床を作っている団体、料理をする団体、野営地を護衛する冒険者、水汲みに向かう子供たちと、それを護衛するために後をついていく冒険者に分かれて、八重の準備が始まっていた。
智美は、勝手が解らなかった昼食の時は、あまり手伝えなく、冒険者らしく護衛をしながら、簡単なことをしていた。しかし、あまりにも美味しくない料理が出てきたので、夕飯になると、「すべての料理を作らせてほしい」と頼み、積極的に参加していた。
野営地で作る料理でも、智美にしてみれば、簡単に作って、手を抜くなど考えられない事だった。材料や調味料が少ないことを、味のしない料理を作ってもいいという言い訳にしてほしくなかったのだ。最初は渋っていた料理班の面々も、智美の真剣さに折れていた。昼食の時に、食材と調味料を頭の中に入れていた智美は、料理の献立を考えていた。
次の町までは約3日、なるべく材料を節約し、尚且つおいしいものを作る。この状況は、智美の料理人魂に火をつけていた。肉については、道中で動物でも狩れば手に入るだろう。今日の分は、謙治に頼んで狩ってきてもらっている。献立が決まると、食材を取り出して料理を始める。野菜や肉を刻んだりするのを手伝ってもらいながら、総勢130人分の料理を作っていく。こういう事には慣れているのか、智美は、皆に指示を出しながら、次々と料理を完成させていく。約2時間後、日も完全に沈み、夜の帳が下りるころ、篝火の周りに作られた簡易な食卓に、智美謹製の料理が並べられていく。
それは、何処かの食堂かと思わせるような料理だった。
持ち運びが可能で、長期間保存が出来るように、少し硬めに焼かれたパンにも一工夫がなされ、とてもおいしく仕上がっている。昼食に出されたのと同じパンなのに…。
大雑把に切って盛り付けただけのサラダには、どうやって作ったのか、絶妙な味にブレンドされたドレッシングがかけられている。
野菜くずと、昼間の内に狩ってきた兎肉を使ったシチューも、とてもおいしく、あの材料からどうするとこの味が出せるのかと思うものだった。
これを作った智美はというと、「まあ、こんなものかな。もう少し時間があれば、もう少しおいしくできるのになあ」と、もう少し食材が揃っていれば、もっとましな物が作れるというような顔つきで食べていた。料理を手伝っていた者たちは、ただ唖然と智美を見ているしかなかった。
今までの移動暮らしの中、こんなにもおいしく料理を作れたことがなかった。そりゃあ、せっかく作るのだから、おいしいものを作りたいと、誰もが思っており、いろいろと試行錯誤を繰り返していた。町や村に寄った時は、現地の調味料や香辛料を買い揃えており、食事用の素材馬車の中には、世界中の調味料や香辛料が揃っていた。
しかし智美は、これらの食材を最小限に使って、おいしい料理を作り出したしまった。本人曰く、今まで一度も見たこともない調味料や香辛料があったらしい。しかし、それらも含めて作った料理は、とても初めて使ったとは思えないほど繊細で斬新な味付けだった。同じ材料を使って、同じものを作ったとしても、この味は自分たちには出せないだろう…。
翌日の朝も、智美が朝食を作っていた。その後、王都までの行程で、宿屋に泊る以外のすべての食事を、智美が作ったのは言うまでもない。もちろん、料理担当のおばちゃんたちは、恥も外聞もすべて捨てて、智美にレシピやアレンジ方法をを教わりながら手伝っていく。その時、宿屋で出される食事の方が、おいしくなかったのは笑い話である。
王都までの道で、幾度かの魔物や盗賊の襲撃にあったが、護衛団の活躍で、すべて蹴散らかされていった。一応護衛団の一員として、商隊に雇われていた智美は、しっかりと護衛の仕事もこなしていく。光と闇以外の属性魔法が使える智美のは、後衛で商隊を守る役に徹し、誰一人として、商隊に近づく敵はいなかった。そして気が付けば、、総勢130人、誰一人欠けることもなく王都まで来れたのである。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




