第12話 光莉とフレアの知識の図書館
『光の神子』になった光莉は、光の神殿で、猫の姿のフレア膝の上に抱いて、モフモフしながら魔法についての講義を受けていた。さっきまで立っていたはずの光莉は、今は揺り椅子に座っている。その隣には、小さなテーブルがあり、その上には光莉が大好きなクッキーとコーヒーが置いてある。周りを見てみると、どこかの屋敷の一角を思わせるきれいに整えられた日本庭園。その縁側に椅子とテーブルが鎮座していた。すべて光莉が出してものだ。
フレアに「話が長くなるなら座って聞きたい」と言ったら、『それでは、イメージしてみろ。今のお主は、すべての現象をイメージひとつで作り出せる』と教えてくれた。試しに言われたとおりにやってみたら、本当に出来てしまった。調子に乗っていろいろ作り出したら、神殿とは思えないほどの別空間が出来上がってしまった。
「光莉よ、我の神子となったお主は、他の人族とは魔法の発動法も違っておる。お主は、キャロル…、いや、金色の女王様に、魔法を教わっておったじゃろう。」
「なぜそのことを知っているの?フレア。」
いきなりフレアからキャロルのことを聴かれたので、光莉は驚いてフレアを見た。
「それは、お主が『光の神子』になった事で、お主と我の記憶が一つになったからじゃ。」
「それって、私が抱いている疑問は、フレアには、何も喋らなくても解るの?」
「その通りじゃ、我には、光莉の考えている事、光莉の今までの人生、光莉がこれからどうしようかなどの願望すべてが解る。そして、光莉よ、そなたは我の歩んできた歴史や、我が蓄えた知識を、いつでも使うことが出来る。我が知っている事なら、光莉よ、そなたが思えば我に知識から答えを導くことが出来る。」
光莉は、とりあえずの疑問として、テラフォーリアの成り立ちについて疑問を飛ばした。すると光莉は、知識の塊ともいうべき存在の中にいた。何か漠然とした光の中で、「どうせなら図書館みたいに、知識ごとの本のような感じに感じにしたいなあ」と思っていたら、光の塊は、形を変えて、膨大な蔵書を誇る図書館になっていた。
「何故にこうなった?」
光莉の遊び心で思っていただけなのに…、それにはフレアが答えた。
「この空間は、既に光莉の体の一部だ。光莉がこの空間に対して『こうであってほしい』という願望は、そのまま形となってしまう。『書架を見ながら知識を探す』行為も、光莉の心の願望をそのまま表しておる。」
「なるほど、そういう事か。」
と言いながら図書館の中を歩いている。これも私の意志なのかと思いながら、きちんと整頓された図書館の中を、目的の蔵書を探して歩く。
図書の分類も多義に亘っている。テラフォーリアの事や其処に生息する動植物、魔物や魔獣を纏めた本。掃除や洗濯などの日用作業を纏めた本。。書架の一角を占める数々の料理のレシピ本。それも料理一つにつき、一冊ずつあるのには驚いた。これには、光莉が今まで作ったことのある料理やお菓子のレシピが、事細かに記されていた。もちろん失敗した料理は、それだけで一つの分類となって纏められている。
部屋の奥には何やら金庫のような扉がある。図書館の主である光莉には、簡単に開けられたその扉の中には、光莉のフォトアルバムやら、裏歴史を綴った本が並べられていた。フレアは言った。
『ここは知識を集める図書館。我と光莉がこれまで貯めてきた知識と歩んできた歴史を収めた図書館。そして、これから光莉が見聞きしていく知識も、ここに収められていく。』
光莉は、フレアに図書館の使い方を教わりながら、目的の本を探していく。さらにこの図書館は、光莉の一部なので、いつでもここに来ることが出来る。そして、蔵書を外の世界に『本』という形で持ち出すこともできるらしい。さらに、光莉が認める者なら、貸し出す事も出来るその時は、光莉が設定した日数が経つと、本は自動的に図書館に戻されるらしいが。
程なくして、目的の本が見つかった。そして笑った。こういう本なら、『重装丁の分厚い百科事典』みたいな本だろうなと思っていたら、そんな本がずらりと並んだ一角に、目的の本は鎮座していた。光莉は、数冊取り出して神殿に戻ると、テーブルに本を置いて、揺り椅子に座ってその中の1冊『神話テラフォーリア』というタイトルの本を読みだした。膝の上には、フレアがごろごろと転寝を始めている。光莉は、ゆっくりと過ぎていく時間を貪りながら、ゆっくりと本のページを捲っていった。
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太古の昔、何もない”無”に、3柱の絶対神が生まれた。その空間は、他の空間とは異なり、何処までも続く無限の漆黒だった。
空間が出来てから、時折できる『次元の裂け目』から様々な『モノ』がこの空間に引き寄せられてきた。空間に引き込まれた『モノ達』は、存在を維持できずに、次第に空間に溶けていき存在を”無”に変えていった。
3神には、そのモノ達に手を差し出すことが出来なかった。それは、生まれてまだそれほど時が経ってなく、3神には、まだ力がなかったからだ。そんな時間がどれほど続いたんだろう。途方もない時間が経過した頃、あるモノがこの空間に引き込まれた。それは、惑星を従えた恒星系だった。その恒星系には、一人の神がいた。その神は、恒星系を作り出し、これから生物を育んでいこうかと思った矢先にこの空間に囚われてしまったのだ。
途方に暮れていた神に、3柱の一人である『空間神』が言った。
「そなたの力を借りたい。」
神は、3神の提案に同意し、自らの恒星系にここに落ちてきたモノ達を集めるための努力をしていく。3神もその神と一緒に、ここを維持するために努力を惜しまなかった。
『時間神』は、空間を維持していくための時間軸を作り、その中に溶け込んでいき、「時間の流れ」を作っていく。それまでこの空間には、時間の流れは存在しなかった。
『空間神』は、この広大な空間に落ちてくる『モノ達』と、惑星系を維持すすため、恒星系のある空間を固定するために、『恒星の核』にその身を溶け込ませた。
『重力神』は、広大な空間の何処に落ちてきても、この恒星系に引き込めるように、恒星系の中にある『生物の住める惑星』に集まるように、『惑星の核』に、その身を沈めた。
恒星系の神は、その惑星を『テラフォーリア』と名付け、6つの分身を作り共に大地を管理していった。
恒星系の神の名を金色の女王といい、その分身に属性を与えて属性ごとに管理を任せた。
6神の長であり、すべてを包み込む『光の神』光龍
光と対となり、世界を支える『闇の神』黒龍
テラフォーリアの大地を駆ける『風の神』天龍
すべての生物に潤いを与える『水の神』水龍
すべての生物の生きる糧を生み出す『火の神』火龍
生物の住まう大地に根付く『地の神』地龍
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神々が、ここで暮らす生物たちのために行った数々の功績。それらは、ジョルダンから聞いた神話が、どんだけ歪んでいたのかをまじまじと見せつけていた。
光莉は本を閉じて、静かに目を閉じた。膝の上でゴロゴロ戯れているフレアが、心配そうに光莉を見上げた。
『どうした光莉、何か大変なことでも書いてあったのか?』
「いやね。フレア。ジョルダンから聞いた神話とは、すごく違っていたから。」
『ジョルダンとは、カランの役人のなか。まあ、人族に伝わる神話は、いろいろを脚色されているからのう。これが、本当の”テラフォーリアの歴史”じゃ。』
フレアは、淡々としゃべっていく。
光莉は、次の本を開いた。本のタイトルは、『魔術大全』。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




