第11話 神との契約①『光の神子』
昨日の夕食後、光莉は、皆の前でこう宣言した。
「明日の早朝、属性の光が見える6人は、『神の試練』を受けるため、カランを発とうと思うます。いつ戻ってこれるかもわからない旅になりなすが、これも試練の一つとして受け入れたいと思います。
夕食前に、6人で話し合ったのですが、私たちは、一人で神殿に向かおうと思います。この旅は、魔法の訓練も兼ねています。思えば、私たち6人は、初めて魔法を使った時、同じ魔法なのに、他のメンバーよりも魔法の威力がと強かったように思います。
効率よく敵を倒すためには、どれだけ魔力を流せばいいのかすら、私たちにはわかりません。それを試しながらの旅になると思うます。」
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光莉は一人、カランを発って白い光が指し示す方角、東に向かって歩いていた。
昨日の晩に光莉自身から言い出した事なのだが、こちらに来てから、一人で行動するのは初めてで、期待半分、不安半分といったところか。
カランを出て4時間ほど歩き、そろそろ小休止といった時、光莉は、ガラの悪い男たちに囲まれた。所謂盗賊さんの登場である。
「そこの嬢ちゃん、俺たちと楽しい事をしないかい?お代は、お嬢さん自身が払ってもらうがな。あっ!お嬢ちゃんに拒否権はないからね。」
光莉は、盗賊の男たちを無視して歩き出した。男の一人が、横を通り過ぎようとした時に、光莉の腕を掴み足払いをして、光莉を地面に叩き落とした。柔道で言う『出足払い』と言う技である。光莉は、慌てずに受け身をすると、投げた男を睨んだ。
「そんな視線を投げられると、おじさんたち興奮しちゃうぞ。」
盗賊たちは、けらけらと笑いながら、卑猥な言葉を光莉に浴びせていく。
地面に座る形で光莉は、深くため息をつくと、小声で呪文を唱えた。
「……。」
「お嬢ちゃん、何小声で話しているんだ。お兄ちゃんたちにも聞こえるように言ってごらん。」
笑いながら男たちは、光莉を囲んで馬鹿にする。光莉は、目の前にいる盗賊を睨んで溜息を吐く。
「ふぅ~、なんというか定番のおバカさんたちですね。『無声封印』」
「お嬢ちゃん、何小声で言っているんだい。まさかお祈りでもしているの?そんなことしたって…!?」
ヒカリが、発動キーを唱えてから少し間を置くと、急に盗賊たちがしゃべることが出来なくなった。光莉を馬鹿にして声が途中から聞こえなくなる。いや、男の口が急に動かす事が出来なくなったのだ。それは、盗賊たちすべてに広がっていた。口を開けることが出来ないのだ。
「五月蠅いですね、さっきから。周りの人に迷惑でしょう。そんなことも解らない人たちには、お仕置きとして、暫く口にチャックでもして、静かにしていてください。」
光莉のオリジナル魔法が、盗賊たちの五月蠅い口を塞いだ。これは、対魔法使い用に作った魔術だったが、こういう場合にも有効のようだ。
この魔法は、一定の範囲内にいる術者以外のすべての『声』を一定時間封印する魔法。敵味方の区別なく、範囲内にいる者は、すべからず影響を受けるのが難点だが。ここら辺は要改造と言ったところか。術者である光莉を殺しても解除されない。魔法は、設定された時間を超えなければ解除されないのだ。解除される時間は、まだ魔法を作ってから数回しか使用していないので、魔法を発動させた光莉にも解らない。魔法発動時に込められた魔力量によって、時間が決まるためだ。
さらに盗賊たちの行動を封じるため、『大地の戒め』と呼ばれる地属性の魔法もかけておく。この魔法は、土の鎖を対象者の足に絡めて動きを封じる魔法。地属性の者ならば誰にでも使え、解除の魔法を知っていれば、誰にでも解除できる使えるようで使えない魔法。
「もう、五月蠅いですねぇ、ほんと盗賊と言う人種は、女子供と見たら、毎回毎回同じ事しか言えないのですか?あっ!あなたたちの魔法と行動は、封じさせてもらいました。」
そして光莉は、地面に落ちていた手ごろな長さの枝を拾うと、それに魔力を流し込んで緑色に光る剣を作り出した。
この魔法は、柄となるものを握り、そこに少量の魔力を流し込んで作る『魔法剣』。流し込む属性に応じて、属性を現す色の剣を作り出す。魔力で作った剣なので、魔力を流し続ける限りその姿を保つ。形状は、術者の思い通りの長さ、形状を形作る。
そして光莉は、軽く素振りをすると、一番近くにいた盗賊の首元に剣先を突きつけた。
「さて、ここからは、私の質問に、『はい』か『いいえ』で答えてください。口で喋れない以上、どういうふうに答えるかは解りますね?」
剣を突きつけられている盗賊は、大きく首を縦に振る。光莉は、感情の籠っていない顔で、周りを見渡す。光莉と目が合った盗賊は、首を縦に振っている者と、首を縦に振らずに、光莉を睨み付ける者とに分かれた。
光莉の視線がそれたのを見計らい、そのうちの一人が、光莉の後頭部に向けて、錆付き手入れのされていない剣を投げつける。光莉の死角から投げられた剣は、当然光莉の後頭部に刺さると、誰もが思っていた。しかし、剣は、光莉に刺さる手前で、その軌道があらぬ方向に曲がり、その先にいた男の胸元に刺さった。剣が刺さった男は、傷口を抑えて膝を折ると、そのまま倒れて絶命した。盗賊たちには視認できる者がいなかったが、光莉の周囲には、風属性の防御魔法が取り巻いている。光莉に危害を加える何かが飛来したりすると、その軌道を変えて防御する魔法だ。
光莉は、それを感情の籠っていない目で一瞥すると、
「ちょっと待っててくださいね。」
と、剣を突き立てていた男に軽く微笑んだ。光莉は、面室に剣を投げつけた男の方を向くと、
「もう、悪戯しちゃダメじゃないですか。悪戯した子には、お仕置きが必要です。」
と、子供に諭すように言うと、緑色に光る剣を男の胸元に突き立てた。剣は、ヒカリの手足のごとくまっすぐに男の胸元に突き刺さると、そのまま幅を広げて袈裟切りのように男を上下に分けた。剣の腹を添うように、切られた男の上半身が地面に落ちる。ヒカリが剣を元の長さに戻すと、また元の男に剣を突き立てた。剣には血糊一つ付いていない。そして、無表情で光莉は、盗賊に宣言する。
「私の質問にのみ答えてください。それ以外の行動は取らない事をお勧めします。」
盗賊たちは、顔面蒼白になりながら、光莉の質問に答えるしか道はなかった。光莉は、次の町で、盗賊たちを騎士団に引き渡し、報奨金を貰ってほくほく顔で宿屋に向かった。盗賊たちの報奨金が、結構な金額になったからだ。どうも、ここいら一帯で、悪さを働いていた盗賊団だったらしい。町に入る時に、少し騒ぎになったが。十数人の盗賊たちが、全員逆さ吊りにされて、宙に浮いていた状態で、光莉の後ろを連行されていたのだから。
翌日、光莉は朝早くから行動を起こす。町を出て東に進むこと約3時間、ある一点を光が指す以外その先に光がない。ここが目的地かと思い、周りを見渡す。
そこは、何処までも続く草原にある一本の大木を光が指したいた。大木は、見上げるほど高く、その先が雲を突き抜けている。しかし、何処からでも見えるであろうその大木は、ヒカリにしか見ることが出来なかった。つまりこれが「光の神殿」なのだと結論付けると、大木に向けて歩き出した。
大木ん根元にある大きく分かれた幹の間を通ると、いきなり景色が、石の柱の並ぶ幻想とした神殿に変わった。そこを中ほどまで進むと、何処からともなく声が響いてきた。
『汝、光の試練を受けるか?』
「はい、私は、そのためにここまで来ました。」
『汝の名はなんと申す?』
「私は今宮光莉です。あなたは、光の神光龍でよろしいですか?」
『さよう、我は、光属性を司る昼の守護神、光龍
今宮光莉、汝に問う。
汝が望む光とは何か?』
「………。」
『汝が求める光とは何か?』
「………。」
『汝が進む光とは何か?』
「………。」
『汝、我に何を望む?』
「………。」
光莉は言葉にできなかった。ただ漠然としたものはあるのだが、それを言葉にするには、どんな言葉が適切なのかが解らなかった。
『汝の思い、しかと受け取った。
汝を光の眷属と認め、我の力を授けよう』
声は、沈黙を決めた光莉に対し、試練が通ったことを知らせた。そして、光莉の前に、白く光る球体が現れると、白い猫の形になり、光莉に飛びついていた。とっさに受け止めた光莉は、そのモフモフの毛並みに癒されつつ、猫の姿になった光の神の言葉に耳を傾けていく。
『光莉よ、我に”名前”を与えよ。さすれば汝は”光の神子”となり、我の力を使えるだろう。我は、そなたの傍らに常に寄り添っていよう。』
ネコちゃんの名前かぁ、と光莉は考えた。私、こういうの苦手なんだよなぁ。
光龍なんて豪勢な名前だあ。じゃあ、親しみを込めてこう呼んでみるか。
「フレアでどう?」
『我はこれより”フレア”と名乗ろう。光莉よ、これからよろしく頼む。それと、これは『光の神子』の証だ』
光莉の右手の薬指に、2匹の龍が浮彫にレリーフされた金色の指輪が現れた。2匹の龍が咥えるように、白水晶が輝いている。
「この指輪が、『光の神子』の証なのね。こちらからもよろしく頼みますね、フレア。」
こうして光莉は、『光の神子』となり、神々の眷属になった。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




