表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承士、はじめました 〜なぜそう生きたか分かった時だけ、俺は強くなる〜  作者: 柿崎 太一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/21

第二十話「外れとは、呼ばれなくなった」

---


ギルドの受付から、「マスターがお呼びです」と告げられたのは、朝の依頼を確認しようとした時だった。


ノエルが、眉を上げた。


「マスター直々に? 何かやらかした?」


「心当たりがない」


「心当たりがないのに呼ばれる方が、怖くない?」


スミは、他人事という顔で欠伸をした。


---


ギルドマスターは、想像していたより穏やかな印象の人物だった。


年齢は五十前後。壁際の棚には、分厚い記録書が並んでいる。


「座ってください。改まった話ではないので」


勧められた椅子に腰を下ろすと、マスターはいくつかの書類を机の上に広げた。


「ここ最近の、あなたたちのパーティの活動記録です。依頼の完了件数、対応した内容の種類、関わった人数」


「……何か、問題がありましたか」


「いいえ。むしろ逆です。先日の建物崩落の救出について、関係者から申し出がありました。正式な功績として記録したいと」


蓮は、少し驚いた。


あれは依頼ではなく、緊急の声がかかっただけだった。


「それと、これまでの実績を踏まえて、ランクの見直しを提案したいと思っています。Dランクからの昇格です」


---


「ただ、一つ確認させてください」


マスターは、書類の一枚をめくりながら言った。


「あなたのギフット……継承、というんですね。ギルドの記録には載っていませんでしたが、正式に記録に残したい」


「記録、ですか」


「これまで実績を積んだにもかかわらず、ギフットの詳細が不明のままでは、今後の依頼の割り振りにも支障が出ます。もちろん、詳細を話したくなければ、無理にとは言いません」


蓮は、少し考えてから、これまでに分かっていることを説明した。


相手が「なぜそう生き、そう戦ったか」を理解した時にだけ発動すること。


理解を対価として、その存在の力を一つ受け継げること。


スロットに制限があり、魔石の吸収で広げられること。


マスターは、静かにそれを聞いていた。


話し終えても、しばらく黙って考え込んでいる。


「……なるほど。理解が、対価になる」


「そうです。だから、倒せば何でも得られるわけじゃない」


「戦闘よりも、対話や観察に時間をかけることが多いはずですね。それが、これまでの依頼の対応の仕方に、そのまま出ていた」


マスターは、書類に何かを書き込みながら、続けた。


「正直に言うと、最初の登録の時は、このギフットをどう評価すればいいか、判断がつきかねていました。しかし、今は分かります。これは、数値で測れる力じゃない」


「外れギフット、と思われてきましたが」


「それは、評価する側の目が足りなかっただけです」


蓮は、その言葉を、どう受け取ればいいか分からなかった。


嬉しいというより、ただ静かに、その言葉が胸の中に落ちていく感じがした。


「実は、似たような記述を、昔の資料で目にしたことがあります。断片的で、詳しくは読めなかったんですが、『理解を持って継ぐ者』という表現があった」


「……それは、いつ頃の資料ですか」


「かなり古いものです。正確には分かりません。ただ、読めたのはその一節だけで、前後の文脈は判別できなかった」


蓮は、先月の老書物師の言葉を、思い出した。


「物語を繋ぐ者」という一節と、「理解を持って継ぐ者」という表現が、頭の中で静かに重なった。


---


「話が脱線しました。ランクの件ですが、正式にCランクへの昇格を処理します。パーティとして、ノエルさんも同時に」


手続きは、あっという間に終わった。


新しいギルド証を受け取り、部屋を出ると、廊下でノエルが壁に背を預けて待っていた。


「どうだった?」


「ランクが上がった。ノエルも一緒に」


「え、あたしも?」


「パーティとして、同時に昇格らしい」


ノエルは、しばらく新しいギルド証を眺めてから、小さく笑った。


「あんたのおかげじゃない、完全に」


「ノエルの速さがなかったら、今の俺はない」


「……言い方が、ちょっと気恥ずかしいんだけど」


---


ギルドの外に出ると、入れ違いに、見覚えのある顔が入ってくるところだった。


最初の頃、蓮を外れギフット持ちと笑っていた青年だった。


青年は蓮と目が合うと、一瞬だけ立ち止まり、何かを言いかけたが、結局何も言わずに視線を逸らして、足早に中へ入っていった。


ノエルが、それを見て、何も言わずに前を向いた。


スミが、蓮の横で、ゆったりと尾を振っていた。


外れと呼ばれていた頃から、少しだけ遠くまで来た気がした。


(第二十話 完)


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!


この作品が少しでも楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。


これから毎日更新を目標に投稿していきますので、主人公たちの物語を一緒に楽しんでいただければ幸いです。


感想やブックマーク、評価をいただけると、執筆の大きな励みになります。


それでは、また明日の更新でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ