第十八話「溜め込んでいた理由」
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地均しを継承してから、蓮はずっと引っかかっていた。
使いたい力があるのに、スロットが足りない。
危険察知と土弾で、両方のスロットが埋まっている。
地均しをどこかに入れようとすれば、どちらかを外さなければならない。
「魔石、足りてるの?」
宿に戻った夜、ノエルが財布の中身を確認しながら、ふと聞いた。
「あとで数えてみる」
「あたしは最近、ほとんど換金してたから。あんたは溜めてるんだっけ」
「ああ。使い道があるから」
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翌朝、改めて手元の魔石を数えた。
これまで、他の冒険者が迷わず換金していた魔石を、蓮だけがずっと溜め込んできた。
最初にこの仕組みを発見した日から、生活費との天秤にかけながら、少しずつ手元に残してきたものだ。
小型の魔物から手に入るFランクの魔石が十数個、Dランクのものが数個、という状況だった。
ステータス画面を開き、前回スロットを拡張した時の感覚を思い出しながら、【スロット拡張】の項目を確認する。
【現在のスロット数:2 次の拡張に必要な魔石:Fランク×20、またはDランク×8、またはCランク×3(組み合わせ可)】
「……少し足りないな」
Fランクが十四個、Dランクが四個。
換算すると、あと数個分が足りない。
ノエルに計算を見せると、彼女はしばらく考えてから言った。
「あたしの手持ちの魔石、数個あるよ。Fランクだけど」
「それは、換金した方がいいだろう」
「あんた、換金しても大した額にならないって、自分で言ってたじゃない」
「……そうだけど」
「今日の依頼を終えたら、その分も加えれば、たぶん届くんじゃない?」
「……ありがとう」
「別に。あたしには使い道ないんだから、使えるやつが持ってた方がいいでしょ」
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その日受けたのは、郊外の草原で増えすぎた小型魔物の駆除依頼だった。
数は多いが、一匹ずつの強さは低い。
ノエルが速さで翻弄し、スミが追い詰め、蓮が土弾で仕留める、というパターンが板についてきている。
以前は、戦闘の合間に立ち位置を探していたが、今は体が自然に動くようになっていた。
土弾の「広げて押す」使い方も、魔物を直接仕留めるためではなく、逃げ道を塞ぐ形で使うことで、ノエルとスミの動きを助ける場面が増えていた。
戦闘が終わるたびに、魔石が一つ、また一つと増えていく。
最後の一体を片付けた後、手元の魔石を確認すると、ぴったり必要数に達していた。
「届いた」
「じゃあ、やってみれば」
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宿に戻り、ステータス画面を開く。
手元の魔石を、一つずつ吸収させていく。
これまでと同じように、体の奥にじんわりと熱が走った。
ただ、前回の一個分より、明らかに時間がかかった。
器が大きくなるほど、満たすのに時間がかかるのかもしれない。
最後の一個を吸収し終えた時、画面の表示が変わった。
【スロット数が2から3に拡張されました】
「……拡張できた」
三つになったスロットに、順番に力を配置していく。
危険察知。土弾。そして、地均し。
三つが揃った時、体の中の感覚が、これまでとは少し違って感じられた。
何かが、ちゃんと収まった、という感じがした。
「どう? 何か変わった感じがする?」
「……三つ並んでると、なんか落ち着く気がする」
「気がするだけじゃないの?」
「気がするだけかもしれない」
ノエルは、呆れたように笑った。
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翌朝、早速試してみる機会が来た。
ギルドへ向かう道で、石畳の割れ目に足を取られて、荷車が斜めに傾いている場面に出くわした。
御者が困り顔で、荷物を下ろそうとしている。
蓮は、割れ目の周りの土に向けて、地均しを使ってみた。
割れた石畳の下の土が、静かに平らに広がり、傾きが落ち着いていく。
荷車は、ゆっくりと水平を取り戻した。
「……これ、便利だな」
「それ、冒険者の使い方じゃないと思うけど」
御者は、驚いた顔で礼を言って、荷車を引いて去っていった。
「三つになったから、選択肢が増えたってことかな」
「攻撃、感知、補助って感じね。一応、揃ってる」
スミが、満足げに鼻を鳴らした。
これでようやく、地均しを使える態勢が整った。
次は、これをどう活かすかを、実際に試していくしかない。
(第十八話 完)
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