第六話【会議】
重苦しい空気が漂う会議室。
上座に構えた荒瀧組長が、低く通る声で問いかけた。
「……今、うちの武闘派は何人だ?」
若頭の司が、苦渋を滲ませた表情で答える。
「まともに戦えるのは、三人です」
「誰と誰だ」
「一人目は言わずもがな小宮です。うちの看板、一騎当千。二人目はおちゃらけてはいますが、そこにいる清水。そして三人目は……」
言葉を濁した司に、組長が鋭い視線を向ける。
「三人目は?」
「あっしです」
一瞬の沈黙。
司の自己申告に、組長が深く椅子に背を預けた。
そんな緊張感漂う部屋の片隅で、不意に小さな声が響いた。
「おじいちゃん...」
荒瀧はすみだ。
組長が「なんだ?」と目線を和らげると、彼女はおもむろに立ち上がる。
「みて...て...」
はすみは手近なガラス棒の上にガラスコップを乗せ、それを器用に回転させると、棒の先端を指一本で支えて見せた。
「「「お~~っ」」」
司、小宮、清水の三人が、思わず揃って声を上げる。
「すご..い?」
「あぁ……すごいな」
孫娘の無邪気な曲芸に、組長の表情がわずかに緩む。
だが、すぐに現実に引き戻される。
エースの小宮は遊軍として自由に動かしてこそ光る。屋敷の守りには最低二人は置いておきたい。
さらに、これから学園に通わせるはすみの護衛を考えれば、どうしても武闘派が一人足りなかった。
「どうしたものか……」
組長が思案にくれたその時、控えめなノックの音が響いた。
司の許可を得て入ってきた構成員が、困惑気味に報告する。
「失礼します。……あの、組に入りたいっていうガキが来まして」
「あぁ? 組員募集なんかしてねえぞ」
司が突っぱねようとしたが、横から小宮が気楽な調子で口を挟んだ。
「司の兄貴〜別にどんな奴か見るくらいはいいじゃないっすか〜」
「小宮の兄貴。もしそいつがヒットマンだったら、笑いものにもなりませんぜ?」
清水の忠告を、小宮は「おいおい」と笑い飛ばす。
「検査はしてあんだろう?」
「い、いえ、まだです」
「まじかよ、なら検査してからここに連れてこい」
小宮のその一言で、運命の歯車が回りだす。
ドアの向こうで待つ「河合銀」という名のイレギュラーを、荒瀧組が招き入れる瞬間だった。




