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第十一話【キラキラとめがね】
19時。
夜の風は肌寒く、薄手の服越しに冷気が染み込んでくる。
荒瀧組事務所の屋上。
そこには、静かに夜空を仰ぎ見る一人の少女の姿があった。
「お嬢、まだ寒い時期は続きやす。早くお部屋にお戻りを」
背後から司が声をかけるが、返事はない。
ただ、暗がりに佇む彼女の横顔には、どこか奇妙な違和感があった。
「お嬢? ……一体、何をつけてるんですかい?」
「..いっぱい..お星様が見える..めがね..」
ゆっくりとこちらを向いたはすみの目元には、子供向けの玩具である、派手なライトが点滅する『ピカピカメガネ』が鎮座していた。
整った顔立ちを原色の光が不規則に照らし出し、夜の静寂の中にシュールな光景を浮かび上がらせている。
「かけてみて...いっぱい..見えるよ...」
はすみは至極真面目なトーンで、予備のメガネを差し出した。
「は、はぁ……」
差し出された光る眼鏡を、困惑しながらも受け取る。
星空の下、屋上にはピカピカと点滅するLEDの光だけが虚しく、けれどどこか楽しげに踊っていた。




