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穴の中にあったもの

 「今度はロイとビルとお出かけしたいって?

  今日は何処へ行くつもりだ?」

 「雑貨屋。

  使えそうな物はなかったけど、とっておきたい物くらいあるんじゃないかなって」


 「ミックの分はまた今度か?」

 「ええ、何? その顔?

  別に何か計画を立てているわけじゃないわよ?」


 「いんや? 俺だって全然疑ってないさ。

  ただな……ああ、大人ってのは悲しい生き物なのさ」


 「何それ?」と相槌をうって、出掛ける用意を始める。

 といっても、汚れてもいい様に着替えて明かりを用意するだけ。

 ラルフはどの道ついて来るだろうし、地下へと続く穴の事を隠し通すつもりもない。

 二人は同じ部屋にいるらしいので、ラルフと一緒に迎えに行った。


 ラルフが「ここだ」と言ってノックもせずにドアを開ける。

 中にいる子達はビックリして、すぐにラルフの前に立ち、整列した。

 中に居たのはビルとロイ、それと鍛冶屋にいたリーダーの男の子と一緒にいた別の男の子だ。

 

 「ラルフさん、ミリアを連れて来たって事は俺達に何かご用でしょうか?」

 「んー……そうだな。

  ミリアがお前等を連れてお出かけしたいんだそうだ。

  せっかくだ、お前等も散歩に連れて行ってやる」


 想定外だけど鍛冶屋も近いし、雑貨屋へ辿り着いたら鍛冶屋組の二人にはそっちへ行って貰おう。

 ビルとロイには真っ黒になるから汚れてもいい服に着替えて来て貰った。

 屋敷を出た私達は裏通りへと向かう。


 鍛冶屋組の二人と別れて、日が沈む頃に裏通りの入り口へ集まる様約束する。

 妙な気分だ。

 ここへ来る途中にビルが私に変な事を言ってきた。


 鍛冶屋組のリーダーの男の子。

 名前はカインと言って、私の事が好きらしい……

 あまり話した事もないので恋人になるつもりはない。

 好きな人か……そんな事を考えている余裕はなかった。

 大人になれば勝手に出来るものくらいにしか思っていなかった。


 雑貨屋に着いたので気持ちを切り替え、瓦礫を片付けて時計を動かす。

 穴が現れたので私を先頭にして皆で入っていく。

 ラルフは大きくて通れそうになかったけど、無理やり狭い道を体を縮めて着いて来た。


 穴の先に小さな空間があったけど……とてもじゃないけど皆が入るには狭すぎる。

 一番後ろのラルフに引き返してと伝えると「おいおいマジかよ」と言ってしばらく時間が掛かったけど引き返して行ってくれた。


 一人分くらいの空間しかないので、ロイとビルにも引き返してもらう。

 明かりを照らして周囲を見渡すと、本が数冊と箱があった。

 他に何も見当たらなかったので、持てるだけ持って私も引き返す。

 地上に戻った私はビルに本を渡し、ロイには箱を渡した。


 ビルは本を開きスラスラと読み上げてくれる。

 内容はアドルとドニーの日記のようだったけど……。

 日付とその日あった出来事が丁寧に書かれている。

 まるで誰かに読んで貰う事を前提に書かれている様な……

 内容は事細かに書かれていた。


 最初にビルが手に取った本には、ビルと出会った時の事が書かれていた。

 ビルもその当時の事を説明しながら話してくれる。


 ビルは元々商人をしていた親の借金の為、奴隷商に売られ、あまり良い扱いを受けなかったので隙を見て逃げ出したらしい。

 その先で出会ったのが、ここで暮らしていたアドルとドニーで、事情を説明して一緒に暮らすようになった。


 しばらく読み進めると、ビルは読み上げるのを止めた。

 順番的には私とロイの事が書かれているんだと思うけど……


 私も奴隷で、アドルとドニーに助けられた。

 その時面識は無かったけどロイも一緒に助けられて……それから一緒に暮らすようになって、しばらくしてエミーを抱えたミックがやって来たのを覚えている。


 ビルが日記の続きを読むのを止めたので、ロイの持っている箱の方へ視線を向けるとビルが「帰ってからにしよう」と言い出した。

 ビルはロイに中にある本を全部持ってくるように頼むと、ロイが明かりを持って穴の奥へと向かった。


 「ビル?」

 「ああ、ごめん。

  ちょっと説明出来ない」


 ビルは明らかに何か隠そうとしている。

 そして、その事は本と箱を見れば分るのだと私は確信している……


 ロイが本を持って戻って来た。

 そしてラルフにその本を渡し、私の手を掴む。

 「ミリア(ネエ)……帰ろうか」そう微笑みかけるロイ……

 作った様な笑顔だし、ロイも本を見て私に何か隠そうとしている?


 興味が無いわけではないけど、皆がそうしたいのなら私は気にしないでおこう。

 きっと私の為を思ってそうしてくれているのだから。


 「ビル……多分その本に書かれている事の半分くらいは俺も知ってると思うんだ」


 鍛冶屋の方へ向かう途中。

 急にラルフが声をあげる。

 その言葉にロイが「エミーの事ですよね?」と聞き返すと「ああ、そっちも半分くらい知っていると思う」とラルフは答えた……

 ロイは「ええ?」と驚くとビルも「エミーもなのか」と驚いている。

 流石にこんなやり取りを目の前でされては私も首を突っ込みたくなる。


 「別に私は何を聞いても驚かないけど……

  聞かない方がいいなら聞かないわ。

  けど、あれこれ言うなら私のいないところでやってもらえる?」


 うん、これが限界だ。

 聞かない方が良いなら聞かないし、話し合うなら他でやってほしい。


 「悪いな、ミリア。

  ちょっとばかし大人の事情が絡んで来るんだ。

  明日だな……明日まで待ってくれ」


 鍛冶屋に着いてからはビルとロイは無口だ。

 ラルフは先導して歩いてくれている。

 私の隣にはカインが並んで歩き、今やっている仕事などについて色々と話してくれている。

 意外な事に、ファミリーでは農業もやっていて鉄も作っているらしい。

 ついでにビルとロイが失敗した話もしてくれて私はおかしくて笑ってしまった。

 二人に「覚えていろよ」と凄まれてカインは「ごめんごめん」と謝っていたけど、三人共仲は良さそう。

 一応あの部屋のリーダーは年長者のビルだけど、カインには特に失敗談など無く、優等生らしい。

 

 「ミックはどうなの?」

 「ああ、あいつは俺達とは違う仕事をしているぞ。

  血の気の多い奴だからな

  でも、結構可愛がられてるみたいだぜ」


 「ふーん」と聞き流し、幹部のヘイグナーとも仲が良さそうだったし、ミックらしいなと思い描いた。


 エミーの事は三人共知らないらしいのでラルフに話を振ると「ん-……魔法の素養があったからな。 それと一緒にずっと勉強をしている」と答えてくれた。

 エミーが魔法を?

 魔法については殆どわからないけど、使える人は珍しい。

 魔力が高ければいい仕事につけると言うイメージは持っている。

 それは、いい仕事につけなかった人達が冒険者をしていると言う話しをドニーから聞いた事があるからそう思っている。


 エミーはいい仕事につけるのだろうか?

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