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小さな思い出

 「ん? エミーとお出かけしたい?

  俺もついていくが、大丈夫か?」

 「ラルフも?

  私は構わないけど……」


 私は思わず手を口に当てたが、想像して堪えきれずに笑ってしまった。

 ラルフはおじさんに綺麗にして貰ったらどんな風になるんだろう。

 たぶん、女の子が好きなおじさんはそんな事しない。

 けど、想像してしまった。

 私が笑い続けていると「何がそんなにおかしいんだー?」と言って抱きかかえられた。


 ラルフはそのまま私をエミーの所まで連れて行ってくれた。

 抱きかかえられたままの私を見て、エミーも「私もそれしてほしー」と言って抱っこをせがむ。

 ラルフは笑いながらエミーも抱きかかえた。


 屋敷の外へとやって来たので、私はラルフから下ろしてもらい、ラルフの手を引いて三番街の方へと進んでいく。

 エミーは抱っこされているのが気に入ったらしく、下りるのを拒んだ。


 「こっちに行くのか?

  この先には酒場と……変な店しかねーだろう」


 変な店とは何の事だろう?

 少し気になったけど、今日の目的はおじさんの所へ行く事。

 その事をどう説明していいのか思いつかなかったので「いいからいいから」と言ってラルフの腕を引っ張った。


 おじさんの家の前に着いた時、なぜかラルフは頭を抱えていた。


 「ここに入るのか?」

 「そうよ、ビルの足を治療してくれたおじさんがいるの。

  お礼はしたんだけど、また来るって約束もしたからもう一度訪ねてみたくて」


 ラルフは「そうか」と言って扉を叩いた。

 しばらくすると、中から足音が聞こえ、扉が開く。


 「おお! 君達! 来てくれたか。

  それと……何故お前まで一緒に来ている?」


 おじさんはラルフを見てニヤ付いている。

 ラルフとおじさんは知り合いなのだろうか?

 

 「ミリアとエミーはうちのファミリーになったんだ。

  ミリアは俺が面倒を見ている」

 「ほう! つまり」


 「違う違う! 俺は違うぞ!」


 珍しいな。

 ラルフが子供みたいだ。

 この二人の関係が気になったのでおじさんに「ラルフとはどういう関係なの?」と聞いて見ると、ラルフが「いいから、俺の事は気にするな」と言って背中を押されおじさんの家の中へと入った。


 おじさんは嬉しそうにエミーの手を引いて奥の扉へと入っていく。

 中から手招きをされたので私も一緒に中へと入った。

 おじさんに「ラルフは?」と聞くと「あのサイズのドレスはないからね」と呟いた。

 ドレスがあったらラルフにも着せるのだろうか?


 おじさんが私とエミーにドレスを着せて、化粧を施す。

 完成した私とエミーをみてすごくうれしそうだった。

 そしてあの時のように紅茶を用意してくれる。

 そのタイミングでラルフも部屋の中へと招かれた。


 「いや、こりゃあ……駄目だろう……」


 ラルフは不意にそれを口にしてしまったのか、口を手で覆った。

 私は首を傾げ、ラルフの顔を覗くと目が合ったので「変かな?」と尋ねる。


 「いんや、二人共綺麗すぎてビックリしたんだよ。

  そういえば、エミーはミリアの事お姉ちゃんって呼んでいたよな。

  二人は血のつながった姉妹なのか?」

 「違うわ。

  皆アドルとドニーに拾われて育てられたの。

  二人は多分もういないと思う」


 「皆って事はビルとロイとミックもか……」


 ラルフは何か考え込んでいるような顔をしている。

 私が「どうかしたの?」と聞いて見ると「いんや? あいつ等も着飾ったら化けるかと思ってな」と言って笑っていた。


 それから皆で紅茶を楽しみ、ちゃんと化粧を落としてからおじさんの家を出た。

 ラルフはおじさんと話があるらしく、私とエミーの二人で帰る事になる。


 来た道を引き返しながら考える。

 どうにも胸にモヤモヤしたものがつっかえて釈然としない。

 ラルフは何か隠そうとしているんじゃないか?

 そんな風に思ってしまう。


 私はエミーの手を引っ張って、別の道を進み始めた。

 そして、みんなで暮らしていた雑貨屋へと辿り着く。


 「全部焼けてボロボロだね」

 「うん、何も残ってないと思うけど……ちょっと見ていこっか」


 私とエミーは丸焦げになった雑貨屋の中を調べる。

 沢山炭を蹴ったので二人共真っ黒だ。

 ふと私の視界に不自然に写ったものがあった。

 真っ黒になった古びた時計…‥元々壊れていたからロープを引っ掻ける為に使っていたけど……妙だ。

 床もボロボロだけど、時計の足元だけが石畳になっていて原型をとどめている。

 何かあると思って時計をどかせると、人ひとりが入れるくらいの穴が空いていた。


 んー……もうすぐ日も暮れてきそうだし、中は真っ暗だ。

 私はこの穴の上に時計を戻し、念の為にと時計を瓦礫で埋めた。

 屋敷に戻ると門の前にラルフが立っている。


 「真っ黒だなぁ……

  何をしていたんだ?」

 「私達が居た場所になにか残ってないかと思って立ち寄ったの」


 「居た場所って…‥ああ……怪我はないか?」

 「私もエミーも大丈夫。

  別に何も見つからなかったわ」


 ラルフは「そうか」と言って真っ黒な私達二人を抱き上げた。

 何に気を使ったのか……

 私はよく理解出来ていない。

 けど、ラルフのやさしさが何故だか私の胸に突き刺さる。

 自然と涙が零れた。


 「おねーちゃん」と呼ぶ声が聞こえたのでエミーの方を見ると、パタパタと私の方へ向けて玩具の蝶々を揺らしている。

 これは、ドニーがよく泣くエミーをあやす為に作った玩具だ。

 アドルがよく泣いているエミーの顔の前でパタパタとやっていた。

 全然泣き止まずにミックが五月蠅いと癇癪を起していたけど……エミーは覚えていたんだ。


 私もどうやら、泣き止みそうにない。


 エミーも私に釣られて泣き始めてしまった。

 ラルフは困っている。

 いつの間にか私は泣きながら笑っていた。

 自分でも今どうなっているのかは分からない。


 思い出を振り返って、色んなものを失って悲しい気分になった。

 でも、それは今が幸せだから悲しい事だったのだと振り返る事が出来たんだと思う。

 今は困っているラルフがおかしくて笑っている。

 ただただ、おかしい。


 そして、不安も抱いている。

 ラルフは何かをはぐらかす様な……そんな風に見えただけで何もないのかもしれないけど。

 何か隠しているような気がする。

 それに時計の下にあった穴……その奥に何があるのだろう?

 知らない方がいいのかもしれない。

 けど、見つけてしまったのなら、確かめずにはいられない。

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