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目覚めたのだ。

 目覚めると同時に昨日の出来事が夢ではなかった事を悟る。

 気分が悪い……しかし身体は絶好調だ。

 何も食べていないのに空腹ですらない。


 私は……何になったのだ……?


 私の起床と共にチビ達も目覚める。

 三人共お腹がゴロゴロと鳴った。

 きっと私と違い、お腹が空いているのだろう。


 外は晴れているのでチビ達をシルヴァスの宿付近まで送り届けると、珍しく店主が外に出ていた。

 目が合うと、こちらへと向かって来る……

 ここで物乞いをするなと文句でも言われるのだろうか?

 とも思ったがニコリと笑みを見せたのでそうではないのだと思いたい。


 「おはよう。

  君達の仲間の男の子がいるだろう?」

 「はい、私と同じ年くらいのが一人……今はいませんが……」


 「その子はうちの宿にいるよ。

  酷い事をされたようだが、命に別状はない。

  連れて来るからここで待っていてもらえるかな?」

 「わかりました」


 店主が宿の中へ入ったので私はチビ達に遠くから様子を見て置く様にと伝えた。

 私の意図を汲んでロイが他の二人を連れて裏通りへと身を隠した。

 捕まったらどんな酷い目に合わされるか分からない。

 しばらく待っていると店主がビルを抱きかかえて連れて来た。


 両足が折られている……

 けど、手当はされているから治ったら歩ける様にはなるかもしれない。

 私は店主からビルを渡された。


 「大丈夫かい?

  なんなら君達の住処までおじさんが運んであげてもいいんだが……」

 「問題ありません。

  おじさんがビルの手当てをしてくれたんですか?」


 「ああ、手当は家内がしてくれた。

  意識はまだ戻ってないみたいだから寝かせておくといい。

  目が覚めたらこれで滋養の高いものでも食べさせてあげて」

 「ありがとうございます」


 店主からはお金の入った袋を手渡された。

 本当は手に抱えているバスケットの方を渡そうとしていたのだろう……良い匂いがする。

 私が警戒心を見せているから店主はお金に変えてくれたんだ。


 お人好し……よく生きて来られたな。


 私はもう一度礼を言って、雑貨屋へとビルを運ぶ。

 床にビルを寝かせて毛布で包み込んだ。

 生きて目覚めてくれるだろうか?


 それにしても私の体は異常だ。

 ここまでビルを運んできたのにまるで疲れていない。


 「おねーちゃん、お兄ちゃん大丈夫?」

 「わからない……けど、お金貰ったから、食べ物買ってこようかエミー達はビルを見てて」


 私はチビ達を置いて市場へと出掛ける。

 安い果実とパン……それに水。

 それだけあればとりあえずは飢えを凌げるだろう。


 市場へ着いた私は適当に買いあさり、果実を多めに買って帰った。

 お金……まだ沢山残っているな。

 これなら三日くらいは何もしなくても大丈夫そうだ。


 「――い……痛い」


 ビルが苦しそうな声で唸りながら目を覚ました。

 チビ達に果実を齧らせて、私はビルの体を少し起こす。

 痛い痛いと言ってビルは私の体にしがみ付く。

 私はビルの体を優しくさすってゆっくりと水を飲ませた。


 ビルはフーフーと息を巻き、痛みに耐えている。

 私はどうする事も出来ず、体を摩りながら見守り続ける。


 「ハア……ハア……奥の廃屋に住み付いている奴等だ……

  俺達の金を持っていきやがった」


 ビルは「チクショー」と呟きながら涙を流す。

 私も悔しい。

 チビ達が頑張って稼いでくれたお金を……


 ビルも動けないし、このままじゃ私達は野垂れ死ぬだけだろう。

 復讐してやる。

 今の私はたぶん強い。

 相手は8人と分かっている。

 勝てなかったとしても野垂れ死ぬよりはマシだ。

 

 「ロイ、ミック……ビルを頼んだ」

 「待って! 何をするつもりなの?」


 ロイが私を引き留める。

 きっと私が何をしようとしているのか理解しているのだろう。

 私は「すぐ戻って来るから」と言って雑貨屋の外へと出た。


 「ビルの敵討ちだろう?

  俺も連れて行ってくれ」

 「ミック、ビルはまだ死んでいないから敵討ちじゃない」


 「知らねえ。

  気が収まらないんだ。

  連れてってくれよ」


 ミックはすぐに手が出る困った子だ。

 廃屋の連中とも何度か喧嘩をしている。

 トラブルも多いけど、そのおかげで私達に盾突くのは面倒だと他の孤児達が敬遠してくれている。


 「ビルが動けないんだからロイと一緒にエリーを守ってあげて」

 「嫌だよ。

  ミリアまで動けなくなったらどうするんだよ」


 「私は大丈夫だから。

  絶対に戻って来るって約束する」

 「……絶対に戻ってくるんだな?」


 私が「うん」と答えるとミックは雑貨屋の中へと戻ってくれた。

 裏路地の奥へと歩み出す……

 怖く……ないな。


 裏通りの奥はここよりも質の悪い連中が多い。

 正直、廃屋を住処にしている奴等なんかはマシな方で、奥には大人の悪い奴等がゴロゴロいる。

 元々私達は7人いた。

 いなくなった二人は裏路地の奥へ行ったきり戻って来なくなった。


 きっと攫われたのだろう。

 奴隷商にでも売られたかそれとも……


 悪い事は考えないでおこう。

 そして、廃屋に辿り着いた。

 私は入り口のドアを蹴破って中へと入る。


 どうやら食事時だったらしく、くちゃくちゃと肉を頬張りながら8人全員がこっちを睨みつけている。


 「私の相棒を甚振ったんだろう?

  覚悟は出来ているんだろうな?」

 「相棒? 知らねえな」


 「ビルの事だ!

  とぼけるなよ」

 「何ぃ?」


 リーダー格の男が立ち上がり、私の事をまじまじと見て来る。

 まるで値踏みでもしているかのように……気持ちが悪いな。


 「お前……ミリアか?

  ハハ、高く売れそうだ」


 何度か顔は合わせているはずだが、私と認識していなかったのか?

 こいつは何を言っている?


 「ふざけているのか?

  まあいい、私はお前達を許さない。

  お前達を殺す。

  覚悟はいいか?」

 「女一人で俺達に何が出来る?

  おいお前等、遊んでやれ!

  あんまり傷はつけるなよ」


 どうやら私を捉えて奴隷商に売りつけるつもりでいるらしい。

 残念だがそうはならない。

 私は自信に満ち溢れている。

 

 私は掴み掛かって来た手下の腕を無理やり振りほどき、思い切り殴った!

 その動きはとてつもなく素早い……

 自分でも驚いている。

 私の腕は容易く手下の体を貫いたのだ。

 そして掴まれていた服は破れ、手下の腕は変な方向に曲がってしまっている。


 「お前……何をした!」


 リーダー格の男が身構えた。

 きっとこの男も私の敵ではないのだろう。

 そう瞬時に理解した私は不敵な笑みを浮かべた。

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