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多大なコンプレックスがあるがために、わたしは人付き合いに憶病になっていました。
あなたはわたしを否定しません。
あなたはわたしを受け入れてくれます。
それでも信じられなかったのでしょうか。
私は一人で生きていくことを決めたのです。
たった独りで……。
どうせ私から歩み寄ったところで、気味悪がられるだけです。
いつだって何かと格闘しているような、なんだか険しい顔をしていた奇妙な私でしたから、普通であろうとすることさえも気味の悪いことに見えたのでしょう。
ああどうせ、わたしはそうなのです。
ですが、そんなものが私なのだとしたら、どうして私はあなたのお傍にいられるでしょう。
どうして私があなたをこの瞳に映せるでしょう。あなたの瞳に映ることが許されるでしょう。
どうして私が、許されることがあるといえましょうか。
あなたにだって苦しいところも、不便なところも、人に劣って思えることだってきっとあるに決まっているのです。
しかしあなたからはその様子も感じられませんでした。
それは、自分のことばかりを見ていた私には、気付けなかったというだけのことなのかもしれません。
少なくとも私にはそのように見えたのです。
あなたに会ったばかりの頃と比べて、明らかに私は進歩しているというのに、不思議なことで、段々とあなたの隣にいることが恥ずべきことに思えてくるのでした。
私はここにいるべきでないのだと、すぐにあなたのところを目指す私を、知らない私が責めることが多くなりました。
そのたびに、胸が苦しくなってあなたに会わずに私は帰ってしまうようになっていたのです。
またも傷付くくらいなら、一人で生きていった方がよっぽど幸せなものです。
考えてみれば、今までだって本当は傷付けられてはいないのかもしれませんが、それだって私は傷付いていました。
勝手に、だとしてもです。
それが苦しいから、私の方からあなたから逃げたくなったのですよ。
あなたから逃げて、あなたを捨てて、あなたを裏切ろうと考えたのです。
これで私は精一杯だったのでした。
その自分勝手さだって、私というものだったのでしょう。
だって私は知らないのですから。
優しい言葉など、柔らかい言葉など、持っていないのですから。
かけられていたはずなのに、受け入れられなかった私には、かけられた経験も記憶もないというものでした。




