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苦しいですよ。
だれが自分であるのか、自分がだれであるのか、わからなくなっていたのです。
私とあなたは、コミュニケーションを取ることが極めて困難であったからこそ、あえて隣にいられたというものだったのでしょう。
読み書きができることは、目標であって理想であって目的であって憧れであって、ずっと羨んで努力していたものです。
欲しくてほしくて堪らなかったものです。
それなのに近付いて来ると怖くてならないのでした。
あなたと会話することが、かえってできなくなってしまうような気がするのです。
できるようになった途端に、してはいけないことに変わってしまうような、不思議な恐怖が私の中から消えなかったのでした。
改めて目標を持ちなおすのも、どこか怖かったのです。
アイデンティティーが損なわれていくようでした。
そうして狂って、狂って、あなたに近付いてしまったらば、大切なあなたを傷付けてしまうのでしょう。
僕の鋭利な言葉で、きっと。
間を挟まなくても、直接で会話ができるようになってしまうのですから、夢の筆談ができるようになってしまうのですから、その中で私はあなたを傷付けるに決まっていました。
心を刺し抉るためにあるような、惨い鋭利な言葉しか、私は僕は持っていないのです。
私というものを失っているから、さらにひどいのでした。
こうして私は苦しむばかり。
そうして僕は苦しめるばかり。
自分が何者であるかもわからない。
言い表そうとするから、わからなくて、辛いのでしょうよ、あぁ。
こんなことなら、いっそ言葉なんて……。




