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・リリィ先生とミツキの出会い

二人の出会い。

 ふわ〜、今日もおねむのリリィ先生だよ〜。いや〜、こうあったかい日だと眠くなるよね〜。え、いつも言ってるって? そんなことはないとは思うけど・・・。あ〜、しかしほんとに眠い・・・。ちょうど論文の考えもまとまらないし、お昼寝してスッキリしよ。

こうして私は机に突っ伏して夢の世界へと入っていった。


 その夢は私がまだ魔法医学生だった頃のものだった。ある日、私は魔法医学大学から魔法医を統括する魔法医協会ミッドガルド中央本部に呼び出されたことがある。それは私が発表した新しい医療器具と、それを用いた術式について詳しく解説しろというもので、私は協会のお偉いさん方に魔法医の負担軽減とかをメインに押し出して解説をしてきた。だってそうしないと魔法医の利益が減るとか言い出しかねないからね、あんの頑固ジジイ共。自分たちは定時帰りできるから現場の魔法医の負担なんて考えないんだよなー。地方では魔法医が不足していて十分な治療が行われていない地域もあるっていうのに。

まあ愚痴はこのくらいにしておいて。

その帰り道。私は魔法医学大学へのバスに乗っていた。ちょくちょく呼び出されることがあり、その度に使うので、もう慣れた道である。今日も特に真新しいところはない。その日も特に変わったことはなく、このまま行けば後1時間で大学につくというところ。突然バスが何かにぶつかり、そのまま横転した。

「ぎゃあああっ」

「何!? 何が起こったのっ!?」

「うわあああっ、痛えよぅ」

バスの中に悲鳴が広がり、私も窓に頭をぶつけて少し流血。うん、これくらいならすぐに治せる。私は即座に治癒魔法で頭の怪我を治し、バスの中にいる人の治療を始める。普通は複数人の治療なんて結構体力使うんだけど、この前ふと思いついた疲れにくい治癒魔法の使い方を実践していたのでほとんど疲労はない。

「うん、この人は大丈夫。えっと、こっちの人は応急処置止まり」

なんとか全員の治療を終えてバスの外に出てみると、そこには惨劇が広がっていた。

「な、なにこれ・・・」

何台もの自動車が横転し、そのうちの幾らかは炎上している。中にはすでに原型をとどめていないのもあり、いろんなところに負傷者が横たわっている。

「多重玉突き事故?」

いや、そんなのはどうでもいい。今は重症者に治療をしないと。ちょうど、医療器具なら説明用にいくらかもってきてるし、医薬品も大学の教授に届ける奴の中にいくらかあった。とりあえずバスの中にあるから取りに戻らないと。

 私が取りに戻ると、軽症だった人たちは完全に回復していた。なら、どんどん手伝ってもらわないと。

「動ける人は、負傷者をこのバスの近くに集めて。それから数人、事故の端の方に行って救急車が来たらこっちに誘導して。後、医学知識のある人はいる?」

これには数人が手を挙げた。

「その人たちは治療の手伝いをお願い。ちなみに、魔法医の資格はある?」

結局魔法医の資格を持っている人はおらず、一人だけ魔法医学大学の学生がいるだけだった。

「それじゃあ、あなたは私の手伝いを、他の人は応急救命措置と怪我の具合の確認をお願い」

こうしてみんなが散っていく。それから私はその学生とバスから出た。

「ねぇ、あなた、名前は?」

「ミツキです」

「そう、私はリリィ。しばらくの間、よろしくね。さてと、それじゃあ助けましょうかっ!」

「はいっ!」

これが私とミツキが組んだ最初の現場だった。


「ミツキ、そっち支えて」

「はいっ!」

「ミツキ、次はこの人。治癒かけるからゆっくり刺さってる鉄片抜いてって」

「わかりました」

こうやってどんどん救急措置をしていく。少しすると協会と大学からも応援が来て、最初から治療をしていた私が陣頭指揮を取り、次々に治癒して救急車に搬送してもらう。それに、治癒魔法を使うととても疲れるので、疲れにくい方法を実践している私と、さっき教えたらすぐにやってのけたミツキ以外は休憩を繰り返しながら治療をしていく。

「よし、これで終わり。ミツキ、次はどこ?」

「え〜と、この方で最後みたいです」

しばらくしてやっと全員の治療が終わった。ふぅ、疲れた。

「それじゃあ、先生、行きますよ」

「ふぇ?」

一人で落ち着いていると、ミツキが私の腕を引っ張る。

「どこに?」

「病院です」

「なんで?」

「だって、頭ぶつけてたでしょう。精密検査です」

ん〜、大丈夫だと思うんだけど・・・。その後、ごねる私はミツキに強制的に救急車に放り込まれ、逃げ出さないようにミツキの監視のもと精密検査を受けることになった。


「・・・んせいっ! 先生っ!」

「うがっ!?」

と、ここで私の意識は現実に戻された。後頭部に激しい痛み・・・ミツキか。

振り向いてみると、そこには案の定、金属製ハリセンを持ったミツキが立っていた。

「何寝てるんですか。まだ先生のシフトですよ」

「いや〜、ごめんごめん。ついね」

「はぁ、何回めですか、これで」

呆れた顔でこちらを見るミツキ。いやー、ミツキってあの頃から変わってないな〜。成長的な意味で。特に胸と身長のあたりとか。って考えてたら、ミツキにハリセン(鋼鉄)ではたかれた・・・痛い・・・。

「何するのさぁ〜」

涙目で睨むとあっけらかんとされた。

「いえ、なんか非常に失礼なことを考えているように見えたので、つい腕が勝手に」

なんかひどい・・・。

「それで、何を考えていたんです?」

「いや、ミツキってあの事故から何も変わってないよなーってね」

「ああ、あの事故ですか」

あの事故、ミッドガルド中央高速多重玉突き事故。結局、あれは若者がスポーツカーでバカやって猛スピードで走っていたところ、ハンドルを取られて別の車に衝突、それが連鎖を起こして大事故に、だったけ。

「あの時は大変でしたね。二人でたくさんの患者さんを治療して」

「うん、結構大変だった。でも、すごかったよ、ミツキは。私がこんな感じって説明しただけなのに、ミツキは圧縮式治癒魔法を使っちゃうんだし」

あの後しばらくして、私は疲労を軽減した治癒魔法を圧縮式治癒魔法として公開した。これで魔法医の回転効率が上がり、また学生がこんな方式を開発したことに触発された研究者が新しい治療法を確立したりといったことが起こり、結果的にミッドガルドの死亡率が下がったとか。でも、最初から下がったわけではなく、まずはそれを扱える魔法医を私が指導しなければならなかったため、私は負担がすごく増えて過労になるかと思ったくらいだ。それだけの魔法なのに、ミツキは1回の、しかも簡単な説明で理解したのだ。本当にすごいと思う。

「まあ、なんとなく理解できちゃったんですよね」

これが天才か。

「でも、その後も結構大変でしたね」

「うん。現場で治療してた時よりも大変だった」

何があったかというと、私たちのおかげでたくさんの命が救われたということで協会から表彰されて、同じ理由で大学からも、また中央政府からも表彰された。されるのはいいんだけどね、表彰式での手順とか、その後の記念パーティーとかめんどくさいことが多すぎて本当疲れた。

それと一緒に取材の嵐。どこの記者も同じことしか聞かないからほんっと退屈だった。かといって受けないと大学のお偉いさんあたりが怒るし・・・。

「あの頃からですよね、先生が天才って呼ばれ始めたの」

確かに・・・言われてみればだ。あれで私が今まで考案した術式とか器具とかが報道されて、その後周りの学生とかいろんな人から天才って言われるようになったんだっけ。

「そうだね〜。それと同時に相当な数の教授とかが辞職に追い込まれてたっけ」

今まで、私の発案をどうやって盗み出したのか、自分の発明だって言ってた教授や医師がいて、発表された時はほかにも考える人はいたかと思っていただけなんだけど、調べてみたらただパクっただけということが判明し、また似たような感じでパクリをやっている医師が大量にいたことが発覚し、もう辞職の嵐。このおかげで大学では一部の学科がやっていけなくなり、さらにミッドガルド中央病院でも一部の科目が深刻な医師不足に陥ったらしい。

確か、あの時は責任を取って協会のジジイどもが辞任。内部も人事一新されたんだったっけな。

「自業自得だとは思いますよ、あれは。そして、あれのおかげで病院の信頼度がガタ落ちして、それを回復させるために先生をマスコットにしようとした動きもありましたね」

「あ〜、あったあった。あれは抑えるのが大変だった」

ちなみに、どうやって押さえたかというと

「それをやったらこれ以降絶対に魔法医とは関係のない職につき、また新しい術式とかの開発も全てやめる!」

と言ったら、現場の医師たちが顔色を変えて広報関係者のところに乗り込んだんだ。間違いなくこれ以降自分の仕事が楽になる可能性が高いのに、それがなくなってはまずいと感じたのだろう。ただ、発案者を辞職に追い込んだのはやりすぎだと思う。

「大変といえば、ミツキも結構大変だったんじゃない? たまたまあの場にいただけで〜とか陰口言われそうなものだけど」

大体の陰口やいじめなんていうのはこういうところから始まるもんだし。

「いえ、直接的というか、私自身に被害が出るようなことは何もなかったですね」

「へ?」

なんで? いくら頭のいい学生しかいない大学であっても、ものすごい競争を勝ち抜いてきた奴らからすると妬ましいことは、直接的な行動に出そうなものだけど。

「どうやら、先生が有名になりすぎていろんなお偉いさんと交友関係を持っていると勘違いして、私に危害が及ぶ→リリィ先生に報告がいく→お偉いさんに話がいく→自分の将来が閉ざされると考えた学生が多かったみたいです」

なんという・・・。これも原型をとどめない噂がもたらした結果か。

「ただ、これのおかげで教授たちも色々と便宜を図ってくれたので、研究に没頭したい私からすると、良かったんですけどね」

あ〜、私もあった。研究機材とか研究室とか優先的に使わせてくれたり。ある時には、最新設備の揃った研究室の1部屋を私に貸してくれて、最終的に私物化しても怒んなかったし。

「でも、同級生の友人ってできなかったりしたんじゃないの?」

「もともといませんでしたし」

なんだとぅ。まあ、私もだけどさ。

「この話題はやめておこっか。なんか心の奥の深い傷を思い出しそうな気がする」

「そうですね・・・」

お互いに傷の舐め合いなんてしたくはないし。

「あ〜、そういえば、先生に取り入ろうとして、私を足がかりにしようとした人もいました。今思えば懐かしいですね〜」

「やっぱりいるものなんだ、そういうの」

小説の中とか、そういうところにしかいないかと思ってたよ。

「ちなみに、どう対処したの?」

「みんな私よりも知識や発想がなかったので、そこの違いを見せつけたうえでプライドを粉々に破壊してお引き取り願いました」

なんと恐ろしいコンボを。絶対にそいつらは再起不能になったんだろうな。

「いや〜、しかし、ほんと不思議だよね。あの事故がなければ私とミツキは出会わなかったわけだし、協会のジジイどもが変わることもなかったし、多分私はこうして院長なんてやってないし」

「ですね。巡り合わせって不思議ですっ」

そこで、私はふと思いついてあることをミツキに聞いてみた。

「ミツキはさ、あの事故で私と出会えてよかったって思う?」

そうしたらミツキは少し考えてから

「よかったと思いますよ。今の生活、結構楽しいですし」

と答えた。

「そっか。なら、よかった」

なんか勢いで巻き込んじゃった感じがあるのに今さら気づいちゃったからね。

「逆に、先生は助手的なポジションが私でよかったと思います?」

これには即答っ!

「うん。ミツキじゃなかったらここまで話せる関係にはならなかった感じがするし」

「ですかっ!」

なんかミツキが上機嫌になった。まあいいけど。

しかし、こうやって昔話に花を咲かせるっていうのもいいな。

「あ〜、二人とも、急患なんだが、任せていいか?」

と、ここでサイコ先生の登場。

「おっけーっ! さ、ミツキっ!」

「はいっ! 行きましょうっ!」

それじゃあお仕事、お仕事っ!


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