安心出来る要素、見当たらないんすけど!?
あの後。
FN-MAG以外の銃器……空挺仕様であるFN MINIMI ParaとカールグスタフM3無反動砲。
それらのゼロインを済ませた姉妹はランタンの薄明かりの中でゼロインを済ませた銃器を分解し、整備していた。
2人の手付きは実に慣れたもので、何処をどうすれば良いのか?目隠しをしていても失敗しなくて当たり前と言える程の精度であった。
そんな姉妹の作業を見ていたマルグリットは先ほどのグローリヴルの言葉を思い出す。
「成る程。そうやって入念に手入れをしないと臍曲げる訳なんすね……」
「そう言う事。其処が普通の武器に比べて面倒臭い点ね」
グローリヴルが肯定すると、マルグリットはヘルガが整備と動作点検を終えたばかり弾倉の無いHCARへと手を伸ばそうとする。
だが……
「勝手に触ったら殺すわよ」
「殺せるなら殺してくれると助かるっす」
不死の呪いを身に帯びるが故、マルグリットにすれば殺せるなら殺して欲しいくらいであった。
そんなマルグリットにヘルガは面倒臭さを覚えると、1つ。否、2つだけ条件を付けて触れるのを許した。
「上部に付いてる照準器だけは絶対触らないで。後、落としたりぶつけたりするのも無し……」
「解りました。大事に扱うッス」
そう返したマルグリットはHCARを右手で持とうとする。
しかし、その重さに顔を顰めてしまう。
「何すかコレ!?妙に重いんすけど??」
「あら?貧弱ね」
挑発する様にヘルガは言うと、右手だけでヒョイと持ち上げて見せた。
それを見たグローリヴルは「ガキね」と、呆れてから作業を続ける。
真面目に作業の手を進める姉を他所にヘルガは「両手で持ちなさい」そう言って差し出せば、マルグリットは恐る恐る両手で持った。
「両手で持っても重いんすけど?」
「そりゃ重くてデカい奴だから」
HCAR……ヘルガの使ってる30-06スプリングフィールドを30発撃てる16インチモデルのクソデカライフルの重さは、スッピン状態かつ弾無しの時点で5キロを超えている。
其処へホロサイトやショートフォアグリップ。それに30発満タンの弾倉も足される。
それを教える様にヘルガは弾込めを終えていた30連のデカい弾倉を手に取ると、マルグリットの持つHCARに取り付けた。
「ちょ!?更に重くなったんすけど!?」
ズシリと更に重くなったHCARにマルグリットが驚きを露わにすると、ヘルガは悪戯の成功した悪ガキの様に告げる。
「それがある意味で使う時の本来の重さ」
「はぁ!?バカじゃないんすか!?」
「でも、そのバカみたいな重さを覚悟するんなら誰でも簡単に人を殺せるし、それを人も込みで数揃えれば戦争がひっくり返る。それが一番酷い点よね」
シレッと銃の危険性をブッチャケるとマルグリットの顔が青褪めてしまう。
そんなマルグリットからHCARを軽々と取って回収すると、ヘルガは弾倉を外してから脇に置いた。
それから姉であるグローリヴルが整備し終えたばかりのFN-MAGに視線を向けると、またも悪戯が思い付いたクソガキの様にFN-MAGの銃身上部にあるキャリングハンドルを掴んで持ち上げる。
そして、それを呆れるグローリヴルに見られながらマルグリットに差し出し、言う。
「で、コイツはさっきのが可愛く思える火力を持ってる。勿論、重さもその分だけ上ね」
その言葉にマルグリットはFN-MAGを両手で持つと、本気で驚いてしまう。
「ちょ!?コレマジでアホみたいに重過ぎないすか!?」
元。下手をすると今もだろうが、流石は聖騎士と言うべきだろう。
マルグリットは驚きながらも12㎏に近い重さのFN-MAGを持っても落とさずにキチンと保持していた。
それを持ちながらマルグリットは尋ねる。
「コレをずっと持って戦うんすか?戦う前の長い道のり行軍する時とかもコレ持って?」
「持たなきゃ戦えないじゃない。後、それも未だ本来の重さになってないわよ」
「いや、聞きたくないっす。これ以上聞いたら嫌んなるんで」
その答えにグローリヴルは「賢明ね」そう返すと、FN-MAGのキャリングハンドルを掴んでヒョイと左手だけで持ち上げ、脇に置いた。
そうして重さから解放されると、マルグリットはヘルガに尋ねる。
「作戦は本当に無いんすか?」
それにヘルガは指揮官として嘘偽り無く答えた。
「本当にノープランよ。さっき、アンタ以外には言ったけど今直ぐに儀式が発動する可能性だってある……此方の儀式発動時期の想定は2日後の満月の夜と見てるけど、今夜とか明日の真っ昼間。何なら今言った様に今直ぐって可能性だってある」
其処で言葉を切る様にヘルガが黙ると、グローリヴルが代わりに答える様に語る。
「本当ならと言うか本来のケレンが立ててた予定と見立て通りなら、此処まで切羽詰まってないし、貴女に武器を向けるバカもしないのよ?」
強い殺意と共に銃口を向けられた時の事を思い出すと、マルグリットにはそれが信じられなかった。
エヴァンジェルの様な怪物と殺意をぶつけ合う様にしての殺し合いを幾度も重ね続けた戦士でもあるが故、それも当然だろう。
そんなマルグリットを1人の戦士として理解しながらグローリヴルは続ける。
「でも、その予定と見立ては一気に崩壊。時間も計画も無い……それが今の状況」
「成る程。それは解りましたけど……その状態で作戦立つんすか?」
訝しむ様にしてヘルガを見ながら漏らすと、ヘルガは何も答えなかった。
そんなヘルガに返事を求めようとすると、それを制する様にグローリヴルが口を挟んで来た。
「ケレンなら立てる。立てるけど、無茶苦茶なバカやるかもしれないのは覚悟しといて……普段なら絶対ヤラないバカをヤラかす方が良いなら、ケレンは迷いなくそれをやるバカだから」
グローリヴルの答えにマルグリットは呆れるしか出来なかった。
「何処にも安心できる要素が見当たらないんすけど?」
「言ってる私も同じ事を思ったわ」
そんな2人を他所にヘルガは静かに思考を巡らせながら、何も言わずに偵察へ向かわせた3人が無事に戻るのを指揮官として待つのであった。
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