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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
クソ面倒でクソ厄介なクソ仕事

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89/90

姉から見た妹


 ヘルガが独りで王城へ向かって時間を惜しむ様にして全力で王都を駆け抜けている頃。

 グローリヴルとティナはケースに詰め込んだ各種銃火器と弾薬。それに爆薬類を冒険者ギルドに運び込んでいた。


 「このケースの材質と良い、中身のカラクリ仕掛けの武器と良い……ケレブリルは何処から調達してるんですか?」


 多数の荷物を浮かせて運ぶティナが首を傾げる様にして好奇心とも言える疑問を口にすると、隣を歩くグローリヴルは今は居ないヘルガに代わって答える。


 「ケレンの生まれつきの能力。銃って言うこの世界には未だ無い武器や兵器。それに其れ等に類する装備をあの子は召喚出来るのよ」


 「そうでしたか……しかし、そんな能力や召喚を私は聞いた事ありませんよ」


 返って来た答えにティナが首を傾げると、グローリヴルは更に続ける。


 「それ、母さんも同じ事を言ってたわ」


 「エレンミアさんがですか?」


 「えぇ、母さんも今まで生きてきて初めて。昔、そう言ってた」


 「因みにエレンミアさんの見解は?」


 「サッパリ解らないそうよ……」


 エレンミアという自分に並ぶ。

 否、魔導師としてならば自分より上に立つであろう恩師ですら解らない。

 そんな答えが返ってくると、ティナは忘れていた事を思い出す様にして漏らす。


 「今思い出したんですけど……彼女は私の迷宮を踏破した時、銃(・)を(・)使(・)っ(・)て(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)んですよね」


 ティナの疑問を聞くと、グローリヴルは確認する様に尋ねた。


 「それ、何時頃の話?」


 「そうですね……確か、25年ぐらい前だったと思いますよ」


 ヘルガがティナの迷宮を踏破した時期を知ったグローリヴルは直ぐに納得すると、その理由を答える。


 「その頃は母さんがあの娘に能力の使用を禁じていた時期なのよ。で、あの子はそれを守ってハイエルフの戦士として生き、ハイエルフの戦士として貴女の迷宮を踏破した……そんな所ね」


 ヘルガの過去を最も知る姉としてグローリヴルが答えれば、ティナも直ぐに理解し、納得した。

 しかし、疑問はあった。


 「成る程。そう言う事でしたか……因みに今は解禁……されてるんでしょうね。私の所へ25年ぶりに来た出で立ちと武器を察するに」


 「えぇ、今から20年前に母さんが解禁したのよ……で、私は面白そうだから、ケレンと共に銃の扱いを学んでみた」


 幼い悪童時代の事は伏せての事実を語ると、ティナは永い年月を生きた魔女として問う。


 「彼女の召喚する銃という武器は戦争を一変させる程の代物なのですか?」


 ティナの問いに対し、グローリヴルはハイエルフの戦士として、戦を知る者として嘘偽り無く答えた。


 「変えるわ。特に人間同士の戦争なら尚更ね……」


 「貴女ほどの戦士でもそう感じるんですか?」


 流石に大袈裟だろう。

 そんな様子でティナが返すと、グローリヴルは共に異なる世界の未来(現代地球)を学んだ者として語る。


 「人数を集め、その人数分の銃と弾を揃え、訓練を積ませれば、私達ほどじゃないけど弓の名手がその人数分だけ揃う。そして、その弓の名手達が突撃して来る軍勢に対し、一斉射するだけで軍勢に対して死の槍衾を与える事が出来る……しかも、突撃して来るのが全身甲冑で身を鎧う名うての騎士や歴戦の勇士であろうと、平等に死を齎す」


 それはグローリヴルの本心とも言える嘘偽り無き言葉であった。

 エレンミアの元へ時偶、顔を出して世間話をするティナはグローリヴルが強き戦士にして、良き戦士である事をよく知っている。

 だからこそ、グローリヴルが本心から語った言葉を疑わずにいる。

 疑わずにいるが、流石に内容が荒唐無稽に思えてしまうが故に流石に信じられなかった。


 「それほどまでですか……」


 「数を揃えた銃だけでそれ。其処へ今のよくある大砲の類よりも悍ましい程に進化した大砲の類もセットになると、戦と呼べなくなるわ」


 グローリヴルの口からヘルガの持つ能力と知識が世界に伝わり、それが当たり前になれば、地獄が訪れる。

 そう告げられると、ティナは当時のエレンミアがそれを禁じ、昨晩の会議で万が一の際には自分を殺せ……マクスウェル司教に真剣な面持ちで頼んだ理由を理解した。

 だが、同時に疑問を覚えた。


 「何故、エレンミアさんは20年前に解禁したんですか?」


 「私にも解らないわ。でも、母さんはケレンを信じていた。そして、それは正解だったとも言ってた」


 正直に解らない。

 更には己の母でもあるエレンミアがヘルガを信じ、それは正解だった。

 そう答えると、ティナはそれ以上の事は聞かなかった。

 そんなティナに対し、グローリヴルは敢えて更に言葉を続ける。


 「あの子は信じられないかもしれないけど、あー見えて善良なのよ。私や貴女から見ても変わり者の変人だろうけどね」


 「妹を変人と言う姉とは酷いですね」


 ティナが苦笑いを浮かべれば、グローリヴルは呆れ混じりに続けた。


 「実際、変人でしょうが……普段は物臭で面倒臭がり。それなのに鍛錬や実戦では誰よりも真剣かつ真面目に取り組み、更には誰よりも思考を巡らせ、必要なら自らを容易く危険に晒しながら勝利を掴み取ろうとするんだから」


 「それを言われると否定出来ませんね。因みにですけど、彼女は貴女から見たら、指揮官としてどれほど優秀なんですか?」


 ティナが好奇心から尋ねると、グローリヴルは本心から答えた。


 「あの子が指揮官なら、私に限らず、あの子の指揮下に入った者達は口を揃えて言うでしょうね……ケレンの指揮下でなら最後まで戦いたいってね」


 「その為なら死ぬ事も厭わない……そう言う事ですか?」


 意地悪にも似た問いをぶつけると、グローリヴルはアッサリ肯定した。


 「それが勝利に、里の未来に繋がるなら、私も共に戦った戦士達は喜んで死を受け入れる。でも、あの子は優しくもある……だから、死を命じた後で泣くでしょうね。自分のせいで死なせたって……」


 グローリヴルから語られたヘルガ。否、妹にして偉大なる戦士であり、名将でもあるケレブリルが語られれば、ティナは驚いてしまう。

 そんなティナにグローリヴルは尋ねる。


 「母さんから聞いたんだけどさ……昨日の夜、あの子を雇った連中にあの子は貴女やエヴァさんに手を出したら依頼を放棄するって言ったそうね?」


 「えぇ、異端審問官の司教と枢機卿相手にハッキリ言いましたね」


 「だからこそよ」


 ヘルガの指揮下に入った者達の1人としてグローリヴルが言えば、ティナは納得した。


 「成る程。彼女は冷徹な指揮官であると同時に部下を大事にする良い指揮官でもあるから、貴女を初めとした勇敢な里の戦士達は彼女を信じる事が出来るのですね」


 「あの子はそう言う気は毛先も無いって否定するけどね……でも、行動は言葉よりも雄弁に語る。だから、私も他の共に戦った同胞はあの子の為に喜んで生命を張れるのよ」


 覚悟極まる言葉がグローリヴルの口から放たれれば、ティナはそれ以上の事は言えなかった。

 だが、今回の依頼を成功させる為に雇われた者として尋ねる。


 「そう言う事でしたら、私も貴女程じゃないですが彼女を指揮官として信じてみます。しかし、彼女はどうやって成功させるつもりなんですか?」


 「私はあの子じゃないから知らないわ。でも、犠牲を可能な限り減らす為に最善は尽くすし、私達にも最善を尽くさせる……コレだけは確実に言える」


 解らない。

 そう答えながらも、良い結果を勝ち取る為に最善を尽くす。

 グローリヴルがハッキリと告げれば、ティナはそれ以上の事は聞かなかった。

 そんな遣り取りが終わると共に沈黙が訪れると、正面からダヴィドとエヴァンジェルの姿が見えて来た。


 「あら?グローリヴルじゃない……どうしたの?」


 エヴァンジェルが気さくに声を掛けてくると、グローリヴルはエレンミアの命でヘルガを手伝えと送られた事を告げる。

 それにエヴァンジェルはエレンも人の子ね……と、納得し、ダヴィドもグローリヴルが居る事に対して異論を挟まなかった。

 しかし、疑問を持たない訳じゃない。


 「ヘルガさんのお姉様が居る理由は解りましたが、その荷物は?」


 ティナが魔法でふよふよと頭上よりも少し高く浮かばせて運ぶ多数の荷物を見上げるダヴィドが尋ねれば、グローリヴルが答える。


 「コレ?今回の依頼を果たす為に必要な道具一式と思ってくれて良いわ」


 「そうですか……で、何処に向かってるんです?」


 「冒険者ギルド。其処に荷物を運び込んだら待機しろ……それがケレンの命令よ」


 グローリヴルが副官の様に伝えれば、ダヴィドとエヴァンジェルは直ぐに応じる様に合流した。

 そんな時だ。

 ティナとグローリヴルの後ろを見ていたエヴァンジェルが渋い面持ちを浮かべてしまう。


 「どうしたんですか?」


 エヴァンジェルの異変に気付いたダヴィドが尋ねると、エヴァンジェルは直ぐに答えた。


 「私の視線の先に錫杖を携えてるシスターが居るの見える?」


 「えぇ、居ますね。此方をジッと見てる様にも思えます」


 諜報活動に従事する工作員としてダヴィドが直ぐに見付けると共に肯定すると、エヴァンジェルは言葉を続ける。


 「一介のシスターの姿をしてるけど、アイツは教国の面倒臭い御(・)偉(・)い(・)さ(・)ん(・)よ……」


 それを聞くと、ダヴィドはエヴァンジェル達に言う。


 「私の方で抑え込んでみるので皆さんは先にギルドへ行ってください」


 「お願いするわ」


 エヴァンジェルがそう返すと、3人は早歩きで進んだ。

 そうして独り残ったダヴィドは悠々と歩みを進めて、此方に歩みを進めて来る錫杖を携えたシスターの前に立ち塞がる様にして相対するのであった。



ブクマと星評価。

感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます

なので下さい。マジで下さい


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