女の子の支度は時間が掛かるし、必要な物が多い
火力による支援サポートチームの為に用意した重火器の整備は意外と早くに終わった。
グローリヴルと共に行ったのも大きな理由と言えるだろう。
だが、普段からヘルガが毎月定期的に全ての銃火器を整備していたのも早くに終わった理由でもあった。
それ故にヘルガは自身が作戦本番で使うメインアームの準備を始めていた。
ガンケースからBAR……ブローニングオートマチックライフルをモダナイズした様な1丁の大きなライフルを取り出すと、ソファーに座ってヘルガの酒を自分の物の様に飲んでいたグローリヴルは興味深そうに尋ねる。
「それは見た事無いわね。何て銃なの?」
「HCAR。対物ライフルを除けば、コイツにパワーで勝てるライフルは無いわ」
HCAR。
オハイオオーディナンスが産んだBARを基にして開発したライフル。
米軍が半世紀も運用を続け、更にはハンティング用の弾としてもベストセラーになっている30-06スプリングフィールドと呼ばれるハイパワーなライフル弾を用いるライフルであった。
そんなライフルを見ると、グローリヴルは意外そうに見詰めながら言う。
「ケレンにしてはというか、ケレンらしくないチョイスね。貴女、そう言うデカブツよりスマートな感じで軽いのを好みにしてたから余計に驚きね」
10年前まで共に銃を学ぶと共にヘルガの好みを知るグローリヴルが驚けば、ヘルガは慣れた手付きで分解しながら答える。
「私自身そう思う。でも、コレを選んだ理由はちゃんとあるのよ?」
「どう言う理由?」
「デカブツが来てもブッ殺せる。後、弾が30発入るし、射程距離も長い」
ヘルガの言う通り、HCARは30-06スプリングフィールドは超強力な殺傷力を誇り、ヒグマやグリズリーすらも殺せるパワーを持っている。
専用の弾倉を使えば、そんな超強力な弾を30発装填して運用出来る。
クソデブ。もとい、死を弄ぶ者が差し向けて来るだろう強力なモンスター等から造られたアンデッドが来てもブチ殺せるだろう。
無論、クソデブにブチ込んでも良い。
殺せなくとも動きはそれなりに止められる。
普段愛用しているM995と呼ばれる5.56㎜徹甲弾よりは効果は見込めて、火力によるサポートチームが居るならば、使わない理由は無いと言えるだろう。
「成る程。貴女が自分を餌にするバカを成功させる為にキチンと考えてるのね」
「そう言う事」
「で、貴女の事だからカスタムってのをするんでしょ?」
「当たり前じゃない。少し重くなっても戦闘の一助になるんなら、ヤラない理由は無いんだからさ」
さも当然の様に答えれば、グローリヴルは妹が相変わらずな事に喜ぶべきか?呆れるべきか?決めあぐねてしまう。
そんな姉を気にせずに分解を終えたヘルガは入念に清掃すると共に点検すれば、手早く組み立てて動作点検をしていく。
セミオートとセイフティのみであるが故に直ぐに動作点検を終わらせれば、ヘルガはHCARをジッと見詰める。
サプレッサーが要らないなら、JCOMPを取り付けて反動軽減させる。
照準器は……いつものホロサイトで良いわね。
長距離射撃する訳じゃないし、其処まで距離を取る必要も無い。
マジの長距離射撃するんならスコープが欲しい所だけどね。
銃口を通常の物からJCOMPと呼ばれる自衛隊の89式小銃の消炎制退器を模した反動軽減効果の高いコンペンセイターに変え、30-06スプリングフィールドのキツい反動を軽減させる。
照準器は長距離射撃する必要性が無い事から、視認性の高いMk18にも取り付けているホロサイトにする。
其処まで決めると、ヘルガは次の事を考える。
グレネードランチャーは取り付けない。
ただでさえクソ重いのにM203取り付けて更に重くして、態々操作性を悪くする必要も無い。
その為にM320を持ってくんだから尚更ね。
だから、フォアエンド下部にはフォアグリップを取り付ける。
レーザーユニットは無くて良い。
でも、フラッシュライトは取り付けて敵を照らすと共に私の位置を教えてやる。
その方が敵も食い付き易くなるから……
其処まで決めると、ヘルガはHCARを自分の役割に適したカスタムを施していく。
銃口にJCOMPを取り付け、フォアエンド下部にはフォアグリップ。
フォアエンド右側面のレールにはハイルーメンのフラッシュライトを取り付ければ、取り付けを固定していく。
そうしてカスタムが大まかに済めば、立ち上がってHCARを構えた。
「うーん……フォアグリップの位置をちょっと修整した方が良いわね。ストック位置はこのままで良いか……」
感想にも似た構えてみての感触を口にすると、グローリヴルは尋ねる。
「照準器は付けないの?」
「それ付ける前にアイアンサイトを調整したいから後だってば」
ホロサイトと言う光学照準器を取り付けるにも関わらず、アイアンサイトのゼロイン調整をしたい。
ヘルガがそう返すと、グローリヴルは直ぐに納得した。
「あぁ、照準器が壊れたりした時に備える訳ね」
「そう言う事。で、弾は通常の……でも、ナマモノ相手だからハンティング用のソフトな奴も捨て難いなぁ……」
相手はアンデッド。
既に死んでるが、ナマモノである事に変わりはない。
だからなのか、ヘルガはどの弾を用意するべきか?悩んでしまう。
そんなヘルガに酒を一口舐めたグローリヴルは言う。
「普通ので良いんじゃない?ハンティング用のソフトなのって貫通力落ちるでしょ?殺傷力はあるけど……その貫通力落ちたが理由で体表を貫けなかったら本末転倒じゃない?」
「それもそうね。ありがと、姉さん」
グローリヴルのアドバイスにヘルガは感謝すると、弾は通常の物にする事にした。
その後。用意した20ある30連の大きな弾倉にローダーでテキパキと弾込めをしていく。
600発の30-06スプリングフィールドを用意した弾倉に装填し終えると、ヘルガはそれをベッドにやった。
「今更聞くのも何だけどさ……貴女、ベッドの本当の役割を知ってる?私は知ってるし、整備した武器やら何やらの置き場じゃないのは解ってるつもりよ?」
グローリヴルが呆れる様に言うと、ヘルガは気にせずに言う。
「別に良いじゃん。今この場に置いたら邪魔になるんだからさ……」
「相変わらずそう言う所は無頓着なのね。誰に似たのよ?母さんじゃないのは確かだけど……」
グローリヴルが益々呆れるが、ヘルガは気にせずに次の作業に取り掛かった。
予備のチェストリグと第二次大戦で米軍が使っていたM1937と呼ばれるBAR用のマガジンポーチベルトを用意すると、チェストリグの弾嚢とマガジンポーチベルトに装填したばかりの弾倉を詰め込んでいく。
そうして18本の弾倉を詰め込み終えると、今度はある物を召喚した。
「それ……確か、RKG3だったかしら?」
グローリヴルが確認する様に聞くと、ヘルガは肯定した上で修整する。
「厳密にはRKG3-EMね」
RKG3-EM。
一言で言うならば、対戦車手榴弾である。
そんな強力な爆弾を用意したヘルガにグローリヴルは呆れながら尋ねる。
「どっちでも良いわよ。そんな物、何に使うのよ?」
「え?デカブツかクソデブに投げつける為」
本心から嘘偽り無く目的が答えられると、グローリヴルは益々呆れてしまう。
「貴女、そのクソデブに怨みでもあるの?」
「怨み?無いわよ……でも、前に殺し合った取り逃したから、その時の御礼と愛を込めてプレゼントしたいだけ」
ヘルガから返ってきたら答えにグローリヴルはまたも呆れてしまった。
「相変わらずね」
「私が変わる事は……少しだけあるだろうけど、根本は変わらないわよ」
「でしょうね」
グローリヴルが匙を投げる様に相槌を打つと、ヘルガはチェストリグの弾嚢の右脇の大きなパウチにRKG3-EMを突っ込んだ。
パウチから大きく飛び出してるのがシュールで間抜けに見えるが、ヘルガにすればどうでも良かった。寧ろ、取り出しやすくて良いとすら感じていた。
そんなチェストリグの左脇下部にあるパウチにM67破片手榴弾を入れ、その上のパウチには40㎜グレネードランチャー用の照明弾を突っ込んだヘルガはチェストリグをベッドに放り、ベッドに腰を降ろす。
「チェストリグとマガジンベルトの準備は出来たから……後はピストルベルトのセットアップすれば良いわね」
「未だ準備するのがあるの?」
「女の子は支度が掛かるでしょ?」
「私も人の事言えないけど、貴女は女の子って言うより雌の猛獣じゃない」
姉の酷い言葉に対し、ヘルガは「姉さんにだけは言われたくないわよ……つーか、私の酒を勝手に飲むなバカ姉貴」そう返すと、一息入れる様に休憩するのであった。
ブクマと星評価。
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なので下さい。マジで下さい




