火力欲しい。でも、重いのはマジで勘弁して
食事を終えて帰宅した後。
ヘルガは姉であるグローリヴルと共に武器の準備をしていた。
ベッド下から再び取り出した大型のガンケースからL110A1を取り出し、一緒に格納していた通常のロングバレルを2本もセットで取り出してベッドに放ると、グローリヴルは尋ねる。
「"ギンピー"じゃなくて良いの?」
"ギンピー"。
その名前を聞くと、ヘルガはアモ缶を引っ張り出しながら暢気に返した。
「コイツより倍ぐらい重い"ギンピー"で良いなら、私としては構わないわよ。それを持って走り回って苦労するのは姉さん達であって、私じゃないから……寧ろ、願ったり叶ったりでもある」
酷い言い草である。
しかし、事実だ。
そんなヘルガの酷い言い草に対し、グローリヴルは呆れるあまり嫌味で返してしまう。
「あら?私や他の人達を気遣えるなんて……妹が成長したのを目の当たりに出来てお姉ちゃん、とても嬉しいわ」
姉からの嫌味にヘルガは淡々と尋ねる形で返した。
「それで?コイツにする?それともギンピーが良い?ギンピーなら弾もその分重くなるけど……どうするの?」
「"ギンピー"にするわ……ソレよりもデカいの相手に向いてるし、その"死を弄ぶ者"って言う人間辞めたクソがどんなアンデッド差し向けて来るのか?解らないし、ソイツ自身が来た時にも対応しやすくなるでしょ?」
指揮官に仕える部下として。否、妹を心配する姉として軽いL110A1ではなく、敢えて重いが威力のある"ギンピー"を選んだグローリヴルにヘルガは「ありがとう」その一言だけを伝える。
それから直ぐに用意してたL110A1と予備のバレル2本。それにアモ缶をベッド下に戻すや、別の大きなケースを引っ張り出し、ソレをベッド上に置いた。
ドサッと置かれた実に重そうなケースを開け、露わとなったギンピーことL7A2。もとい、ベルギーの産んだ世界的ベストセラー機関銃であるFN-MAGを取り出したヘルガは、それをグローリヴルに差し出す。
それを手に取ると、グローリヴルは懐かしそうに漏らす。
「相変わらず重いわね。でも、威力が凄くて文句無しなのも事実だから重い事に対して文句言い辛いのよね……」
グローリヴルは的に向けて撃った当時の事を思い出す様にして威力と火力を懐かしそうに呟いた。
「それにプラスして予備のバレルと弾を大量に持ち込まなきゃならないから、更に滅茶苦茶重くなるし、グレネードランチャーも弾込みであるけど……本当にギンピーで良いの?」
重量による負担を鑑みる様にして改めて尋ねれば、グローリヴルは涼しい顔でハッキリ答えた。
「良いわよ。重いのを我慢するだけで勝利が掴めるんなら儲けもんって諦めたから……」
「なら、私はこれ以上は言わない。でも、ありがとう……」
ベッドにギンピーを置く姉に素っ気ないながらも感謝すると、ヘルガはベッド下からもう1つ。大きなケースを引っ張り出し、蓋を開けて中身をベッドに放る。
ベッドに放られたのはサイズが大きく異なれど、口径は同じグレネードランチャーであった。
小さい方は米軍の使用するM320。
大きい方……リボルバー拳銃をバカデカくしてストックとフォアグリップ。それに特殊な光学照準器を備えたグレネードランチャーは、南アフリカが開発し、米軍が採用して独自に改良して運用しているMGL140。
そんな2丁のグレネードランチャーを用意すると、ヘルガは懐かしそうに2丁を見詰めるグローリヴルに指揮官として言う。
「姉さん達にはMGLを使って欲しい。敵の兵力規模が此方を大きく上回ってる以上、火力で一気に押し切らないと死ぬから……」
その言葉に対し、グローリヴルは反対しなかった。
だが、1つの案を意見として述べた。
「それは解ってるけど、いっそのことオートグレネードでも持ち込むのもアリじゃない?」
人数が居て、火力を優先するならばオートグレネード。
即ち、米軍のMk19やロシア軍のAGS30の様なフルオートで榴弾を敵に叩き込める大型のグレネードランチャーを持ち込むべきではないか?
ヘルガと同様の知識を持ち、ヘルガとは違った視点から物を考えるが故にグローリヴルが意見具申する様に尋ねれば、ヘルガは想定内と言う様に答える。
「私もそれ考えた。でも、撤収とかそう言うのを考えるならMGLの方が良い……そう判断してオートを選ばなかった」
「そう言う事なら仕方無いわね。アレの撤収面倒臭いし……」
「そう言う事」
「で、そっちの小さい方は貴女が使うのかしら?」
グローリヴルが確認する様に問えば、ヘルガは当然の如く肯定する。
「そうよ。姉さん達の為に照明弾撃ち上げる必要があるし、私も敵に榴弾喰らわしてやりたい気持ちあるから最低限の性能で我慢してるの」
その言葉にグローリヴルは呆れてしまう。
「単に軽いのを使いたいだけでしょ?」
「そうとも言う」
悪怯れる事無くアッサリと呆れのこもった姉の言葉を肯定すると、ヘルガはベッドに立て掛けられた表面が樹脂に覆われた大筒……カールグスタフM3無反動砲に目を向け、それを手に取って構えながらボヤく様にして言う。
「問題はコイツよね。姉さんが撃ってくれるんなら兎も角、誰かしらに撃たせないとならない……」
其処がある意味で一番の問題であった。
カールグスタフ無反動砲は銃の例に漏れず、撃ち方を教えれば誰でも撃てるだろう。
だが、その撃ち方よりも照準の合わせ方や再装填等が問題であった。
「射手と装填手。合わせて2人居ないと本来の効果は発揮出来ないし、私は1人で腕は一対しか無いんだから他のと同時に撃てとか言ったら殴るわよ?」
グローリヴルがヘルガと同様に銃器を知る者として当然の事を告げれば、ヘルガはカールグスタフM3をグローリヴルに渡しながら返す。
「だから、仕方無いので人員が来たら撃ち方教える……後で異端審問官や帝国から面倒臭い勧誘やら要請やら来そうだけど知らん」
「其処は昔と変わらないのね。何だかんだ、人にモノを教えるの面倒臭がりながらも必要ならやるって物臭な所……オマケに下手な教官よりも教え方が上手いのが腹立つ所もセットで嫌われてたわね」
「嫌いたきゃ勝手に嫌えでしかないし、負け犬共が勝手に吠えたきゃ吠えてろ。私は気持ちいい……で、しかないからどーでも良い」
吐き捨てる様に返せば、意外にもグローリヴルはそれを同意した。
「ま、それはそう。私達に黒の血が混じってるからって言って嘗めた真似した連中を半殺しにした時は最高に楽しかったのと変わらないわね」
「そう言う事。と、話が逸れた……カールグスタフの問題は誰が撃つ?以外にも問題があるのよね」
問題がある事を口にすれば、グローリヴルはベッドにカールグスタフM3を置きながら当然の様にヘルガの問題を言い当てる。
「弾ね」
「そう。普通の銃弾と違ってデカい、重いで滅茶苦茶嵩張る上に数を沢山持ち込めない……最大で無理すれば12発から15発。で、他の弾薬の持ち込みも考えるなら……実質的な限界量は10発かしらね?」
ヘルガの言う通り、カールグスタフM3無反動砲の弾はデカくて重い。
実際、カールグスタフM3無反動砲は自衛隊風に言うならば84㎜無反動砲(B)。
84㎜の無反動砲なのだ。
普段使うM203。更には今回用意したM320やMGL140が用いる40㎜榴弾が、子供の玩具に思えて笑ってしまう様なサイズと重さ。
そして、威力を備えた砲弾なのだ。
だからこそ、無反動砲弾のサイズと重さがヘルガの作戦。否、火力支援チームにとってのネックになっていた。
しかし、今考えた所で妙案が浮かぶわけじゃない。
「取り敢えず、砲弾の問題は今は後回し。砲弾自体は現地に運び込むから後でジックリ考えるわ……」
「それは良いけど、弾種はどうするの?」
「そうね……1発か2発は対戦車弾頭。残りは榴弾でアンデッド狩り優先にするか?それとも全弾多目的榴弾にして両方対応出来る様にするか?ブッチャケ、未だ決まってない」
「だと思った。あ、私は後者に一票よ」
「了解。覚えとく……あ、整備手伝って」
「良いわよ」
そう言う事になれば、姉妹はベッド上に並んだ重火器の整備を始めるのであった。
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