10年ぶりに姉妹で……
昼飯は折角なので帝国料理を出す店となった。
ヘルガが先日、ダヴィドと共に食べた羊の串焼きを食べたかった。
グローリヴルも帝国料理と言う初めての料理を食べたかったが故、反対しなかった。
そんな2人の前にヘルガが先日食べたのと同じ羊の串焼きと平たいパンが来れば、ヘルガは平たいパンに羊肉と添えられた焼き野菜を挟んで見せる。
それをグローリヴルも真似れば、2人はそれをモグモグと食べ始めた。
ハイエルフであるに関わらず、グローリヴルはヘルガと同じように躊躇い無く肉を喰らうと、ヘルガに尋ねる。
「癖があるけどスパイスが良いアクセントね……因みに何の肉?」
「羊よ」
「へぇ……羊は珍しいわね。此方だと基本、豚や鶏が一般的だから余計に珍しいわ」
グローリヴルが暢気に食べながら返すと、店の者達や帝国からの移民であろう客達はヘルガとグローリヴルと言う2人のハイエルフが肉を平然と食ってる事に目が釘付けとなってしまう。
だが、2人は気にせずに食事を続け、食べながら会話をする。
「それで?貴女の作戦はどう言う感じなの?」
ヘルガの指揮下に入る部下として問うようにしてグローリヴルが尋ねれば、ヘルガは答える。
「第一段階で人質となってる2名の救出。その為に私は囮として陽動する」
「成る程。その陽動で敵を私達が待機してる所まで引きずり込んだら、私は指揮下にある3人か4人に火力を発揮させれば良い訳ね?」
グローリヴルが確認する様に返せば、ヘルガは暢気に肯定する。
「そう言う事。目論見通りにいった前提で話すけど、敵は多数のアンデッドを繰り出して来る……だから、可能ならその側面を叩く感じにしたい」
ヘルガの肯定と理由を聞くと、グローリヴルは食べる手を止めて呆れてしまう。
「貴女独りに意識を集中してる所を別方向から私達が思い切り殴る……相変わらず性格悪いわね」
「嫌?」
「いいえ。寧ろ気に入ったわ……そうなると、初撃で全火力をブチ込む方が良いわね」
グローリヴルが当然の様に返すと、ヘルガは指揮官として言う。
「手始めにカールグスタフとグレネードランチャーで一気に蹴散らして、その後で残敵を機関銃掃射が無難でしょうね」
「それを実行する時間は?貴女の事だから夜に仕掛けるんでしょうけど、その場合は私と貴女は良いとしても、他の面子は人間でしょ?なら、視界を確保しないと当てられるモノも当たらないわよ」
当然の疑問をグローリヴルが部下として意見すれば、ヘルガは既にその問題を解決する方法を考え付いていた。
「それは気にしなくて良い。私が照明弾撃ち上げて見える様にするから、その明かりを頼りに攻撃をして」
「照明弾?あぁ、あの空に撃ち上げたら地面を照らしてくれる光る弾ね……それなら問題無いわね」
その案にグローリヴルが納得してくれると、ヘルガは更に続ける。
「この時の戦闘の主目的は仲間が2人を救出する為に必要な時間稼ぎ。だから、無理に敵に損害を与える必要は無いから程々で良い」
「なら、敵が私達に気付いたら?」
「その為に距離を取らせる。200くらい離れてれば、視界の悪い夜闇が姉さん達を隠してくれるし、私もサプレッサー抜きで撃つから敵の意識を可能な限り私だけに向けさせて視野を狭められる……勿論、それ以外に強力なのブチ込んで私が独りで皆殺しにしようとしてるって思わせもする」
ヘルガがさも当然の様に語れば、グローリヴルは責める様な目を向けてしまう。
「ケレン。貴女のその悪い癖はこの10年で更に悪くなってない?」
「悪い癖?」
「独りで危険を背負い込むバカを躊躇い無くやる所よ。しかも、それを愉しんですらいる……」
グローリヴルが指摘すると、ヘルガは肯定しながらも否定した。
「悪い癖なのは認める。でも、愉しんでるつもりは無いし、クソデブを釣る餌として私が適任だから……それだけの話よ」
「だとしても、せめて誰か同行させなさいよ。それだけでも生き残る可能性が上がるのは貴女は解ってる筈よね?」
「そうしたいけど、奴等には私がいつもの様に単独で仕掛けて来た様に見せたい。だから、駄目……」
ヘルガの思惑としては、かのクソ2匹に無謀にも自分は独りでクソ2匹を殺しに来た……と、見せかけたい。
そんな欺瞞工作からの目的があった。
そうする事で敵に油断を誘うと共に侮って貰えれば、隙が生まれて其処を突ける。
だからこそ、ヘルガは敢えて囮としての陽動の初動は自分独りでやる事を考えていた。
しかし、それを受け入れられる程、姉は冷血でなければ、合理的でもない。
それ故に反対しているのだ。
「貴女のその合理的な考えや思惑は解るし、その利点も理解してるつもりよ……でも、危険過ぎる。ガズッルを殺った時みたいなバカをまたやろうとしてるから余計にね」
過去にオークの族長であるガズッルに対し、ヘルガは今回と似たようなバカをやった。
それはヘルガが何度も死にかけた危険極まる行いであった。
それをグローリヴルが心配すれば、ヘルガは食べる手を止めて返した。
「他に方法が無いのよ」
「貴女はいつもそう言って無理矢理進もうとする。仲間を頼りなさい……貴女の悪い癖よ」
「知ってる」
ヘルガがその言葉をもって変える気は無い。
そう断言すれば、グローリヴルは相変わらず頑固なんだからと呆れるしか出来なかった。
それから2人が食事を再開すると、若い店員がお茶をサービスしながら尋ねてきた。
「アンタ等、ハイエルフだよな?何で、肉を平気な顔して食ってるんだ?」
好奇心から問われると、ヘルガは素っ気なく答える。
「半分エルフじゃないから」
「なら、人の血を引いてるのか?」
店員が真っ先に浮かんだ疑問を口にすると、今度はグローリヴルが答えた。
「いいえ、"黒"の血を引いてるのよ」
「黒の血?」
「ダークエルフの事よ。私達、父親がダークエルフなのよ……」
グローリヴルがアッサリ教えると、店員は成る程と理解すると共に納得した。
そんな店員はついでと言わんばかりにもう1つ。否、2つの好奇心をぶつけた。
「ハイエルフって肉食わないけど、食えないのか?後、アンタ等の父親って何者なんだい?」
それを問われると、ヘルガは前者だけ答えた。
「ハイエルフは肉食えないわよ。食ったら、腹壊すし、下手したら死ぬから……」
「そりゃ、災難だな。肉、美味いのに」
店員が返すと、ヘルガはそれは同意するわ。
そう返せば、店員は父親の事を聞いてないのを覚えていたが故に改めて尋ねる。
「アンタ等を見れば解るけどよ、アンタ等のお袋さんは絶対美人だろ?そんな美人を娶った幸運なダークエルフってどんな奴なんだい?」
その問いにヘルガはハッキリ答えた。
「どんな奴って言われると……40年くらい会ってないから解らないわ。何処で何してんだか……姉さん、あのクソ親父が何処に居るか知らない?」
「私も会ってないわ」
グローリヴルが暢気に返せば、ヘルガは店員に確認する様に尋ねた。
「コレで満足?」
「悪い事聞いちまったな。そうだ……デザートをサービスするからそれでチャラにしてくれ。コーヒーも付けるからよ」
店員が申し訳無さそうに告げれば、ヘルガは「お言葉に甘えるわ」そう返して穏便に話は終わった。
穏便な形で終わらせたヘルガにグローリヴルは頼みを口にした。
「父さんにあったら、私の代わりに一発殴っといてくんない?」
そんな頼みを聞くと、ヘルガはニンマリ笑って快諾するかの如く尋ねる。
「1発で良いの?私は10発ぐらい殴るつもりだったんだけど?」
「其処まであの人に思い入れ無いから別に良いわよ……でも、何してるのかしらね?」
40年くらい前から消息を絶ってる思い出の薄い父親が何してるのか?グローリヴルが娘として疑問を覚えると、ヘルガは呆れ混じりに返すのであった。
「どっかでバカやってんじゃない?つーか、母さんもクソ親父と何で結婚したんだか……」
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