↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
クソ面倒でクソ厄介なクソ仕事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/89

知将の如く


 翌早朝。

 ベッドから起きたヘルガは何時もの様にあくびをしながら戦闘服に着替えると、外に出た。

 その後、何時もの日課である早朝トレーニング。

 ここ数日、トレーニングしてなかったが故に身体が鈍ってしまった感覚に襲われながらも、無理矢理身体を動かして走る。

 そうして何時もの35㎞の距離を走れば、腕立て伏せを始めとした筋トレを休憩挟まずに行う。

 鈍った身体を戻そうとする様に普段よりも数多く筋トレすれば、汗だくのまま駆け足で自宅へと戻った。

 自宅の裏にある井戸で汗を入念に流すと、石鹸で身体を洗っていく。

 ここ数日、風呂に入れなかったが故に身体が少し気持ち悪かった。

 だからこそ、入念に洗って身体を綺麗にすれば、井戸水で入念に泡を洗い流してスッキリさせる。

 身体を洗い終えて雫を拭って着替えを済ませると、ヘルガは腰に何時もの日常での護身用の装備を纏めたピストルベルトを身に帯び、家を後にした。

 その後。冒険者ギルドに赴くと、ギルド内は何時もの活気に満ちた大混雑。

 下も上も年齢も関係無しに冒険者達が我先にと自分にとって良い仕事を競争の如く選び、それを受注する為に受付で長蛇の列を成している。

 そんな日常を見ると、ヘルガは心の中で独り言ちる。


 私が請け負った仕事が最悪の形で失敗したら、何時ものこの光景が見れなくなるのか……

 で、更には数え切れない人達が死ぬと来てる。

 割と真面目にいつも以上に本腰入れて取り組まないと駄目そうね……


 「ガラじゃないけど」


 ポツリと漏らすと、エヴァンジェルとティナを伴った冒険者姿のダヴィドがやって来た。

 ダヴィドは「何がガラじゃないんです?」そう尋ねると、ヘルガは暢気に返す。


 「世界と人々の平和の為に仕事をするのがよ……」


 その答えにダヴィドが呆れながら納得する。

 ダヴィドだけじゃない。

 エヴァンジェルも、ティナもヘルガに呆れながらも納得した。

 そんな3人を連れて、ギルド長の執務室の前に立ったヘルガはノックをして許しの言葉が返ってくると、3人を待たせて中に入る。


 「どうした?」


 書類を眺める様に確認していたギルド長が顔を上げて暢気に返すと、ヘルガはお願いする。


 「ちょっと作戦会議するから部屋1つ貸してくんない?」


 「それなら隣の部屋使え。後、現時点での報告してくれ……口頭で良い」


 ブライディがギルド長として現時点での進捗報告を口頭で求めれば、ヘルガは告げる。


 「事態が予想以上に悪い事が判明した。だから、私よりも滅茶苦茶強い協力者2名と帝国の冒険者が今回の仕事に協力して貰う事にした」


 それを聞いたブライディは一言だけ返した。


 「そうか」


 「他に聞きたい事は?」


 「色々聞きたい事があるが、上から詳しく聞くなって御達しが来てるから聞かんでおく」


 上から御達しが来たギルド長として、自分は余計な事を聞かない。

 そう返せば、ヘルガは「ありがと」と、簡単に感謝の言葉を述べて執務室を後にした。

 そうして報告が済めば、ヘルガは3人を隣の応接室に入る様に促す。

 3人がそれぞれ座ると、ヘルガは指揮官として立って告げる。


 「事態は既に知っての通り、切迫してるどころか最悪な方向へと順調に進みつつある」


 ヘルガの告げた言葉に皆が異論を挟む事は無かった。

 それ故にヘルガは言葉を続ける。


 「黒幕と言える2匹のクソを雇ったとびきりのクソ野郎と言える首謀者は未だに姿も見せなければ、その気配すら見せて来ない。だけど、2匹のクソというほっといたら世界滅ぼそうとする救いようのないバカが居る……それだけはハッキリしてる」


 改めて現状と今の時点での殺害対象を明言すれば、ヘルガは指揮官として何をするか?語り始める。


 「厄介な事に標的は全てツァールスの王宮に揃ってる。普通の冒険者なら救出すべき人質と言える2名の標的を救出し、そのついでに殺すべき2匹のクソを殺すなんてバカ丸出しの計画を立てる……だけど、私は普通じゃないから救出対象を2名救出してからクソ2匹を殺るべきと考えている」


 昨晩の会議に参加したダヴィド。

 会議を魔女の力で覗き見たティナ。

 その会議をティナと共に覗き見たエヴァンジェルは既にその方針を知ってるが故、口を挟む事は無かった。

 そんな3人にヘルガは言う。


 「その救出作戦に関してだけど……連中はこの面子の中で私を最優先確保目標として見ている。だから、私は連中の望み通り、正面から行ってやる」


 普段のヘルガならば絶対にしないであろう、危険極まる役目を自ら進んで担う事をヘルガの口から聞かされると、流石に3人も驚いてしまう。

 だが、ヘルガは気にせずに続ける。


 「私という高価値目標が黒幕とクソ2匹が捕まえたがってる。つまり、私という餌が現れれば、奴等は食いつく……特にクソデブこと"死を弄ぶ者"は私とちょっとした因縁があるから余計にね」


 さも当然の様にヘルガが語ると、ダヴィドが尋ねた。


 「ちょっとした因縁というのは?」


 「アイツと殺し合って、そのついでで研究資料を燃やしてやった。よくある話よ……」


 涼しい顔でヘルガが宣うと、ダヴィドは呆れてしまう。


 「それは世間一般から見ても、ちょっとしたから大きくかけ離れすぎてないか?」


 「だとしても、奴は私を捕らえる為にやって来るだろうから都合が良い事に変わりはない。で、両方が無理にしてもクソデブ(死を弄ぶ者)の方を釣り上げられるなら、そのまま外に引っ張り出す……コレは可能ならって意味でね」


 ヘルガが自分が何をするのか?簡単に告げると、今度はティナが尋ねる。


 「危険極まる役目を貴女が自らするメリットは理解しました。その時、私やエヴァの支援するのですか?」


 その問いにヘルガは答える。


 「支援は要らない。でも、ダヴィド……貴方には少しだけ手伝って貰う。詳しくは現地に着いてから説明するから楽しみに待ってて」


 手伝えと言われたダヴィドは「全然楽しみじゃないんですけど?」そうボヤいてしまう。

 だが、指揮官であるヘルガが求めた以上は反対しなかった。

 そんなダヴィドを他所に今度はエヴァンジェルが尋ねる。


 「貴女が囮として陽動する事は解った。人質はどうするの?」


 「それは貴女達の役目。片方残るであろう魔人とかいうクソが王宮に残る可能性が非常に高い以上、貴女とティナのどっちかがそのクソを抑え込んで、もう片方が碩学の救出をする……コレに関してはエヴァがクソの相手、ティナが救出して」


 「解りました。その碩学の方が創り上げた研究資料はどうしますか?」


 ティナが救出の役目を拝命する様に尋ねれば、ヘルガは指揮官として答える。


 「可能なら全て回収。駄目なら全部燃やす方向で……流石に敵に渡るのは不味過ぎるから」


 「了解。救出後は?」


 「救出後は現地に私達で用意した隠れ家へ転移させる。その後、エヴァを回収したら、私とダヴィドを回収して隠れ家へ転移……それが作戦の第一段階終了」


 救出作戦の大まかな内容を語り終えると、3人は自分の役割を承知して反論する事は無かった。

 だが、第一段階という言葉が出たが故にダヴィドは間諜として尋ねる。


 「第二段階は?」


 「簡単よ。クソ2匹をブッ殺す……コレに関しては救出作戦よりも単純にいかない。何せ、王宮内にあるだろう召喚術式の破壊もしなければならないから余計にね」


 そう、クソ2匹を片付けるだけでは駄目なのだ。

 クソ2匹が実行しようとしている勇者召喚の術式陣を破壊し、勇者召喚阻止も並行して行わなければ王都に住まう数千人の生命が亡きものとなる。

 それ故、ヘルガは並行して術式の破壊もしなければならないと判断していた。


 「術式を壊しても魔人が居れば、また作られてしまう。でも、ちょっとした時間稼ぎにはなってくれる筈……だったら、しないよりはする方が良いでしょ?」


 「成る程。それを私にさせたいのですか?」


 ティナが納得した様に確認すると、ヘルガは肯定する。


 「そう言う事。でも、コレに関しては王宮に2人が残ってる前提での計画……もし、私達が使ってる隠れ家に2人揃ってやって来るか、どっちか片方が来るかしたら、その時は私とエヴァ、ダヴィドで迎え撃つ。ティナは2人の留守を狙って術式を破壊し、可能なら連中の持つ書類を盗んで来てほしい」


 「まるで空き巣ですね」


 「空き巣だろうが、効果あって手っ取り早いならやらない理由は無いわ……と、此処まで話しといて悪いんだけど、今話した作戦は此方にとって都合の良い展開になってればって言う"もしも"の話でしかない」


 ヘルガがハッキリ告げると、ダヴィドは驚いてしまう。


 「もしもってどう言う事ですか?」


 「もしもはもしもよ……向こうだってバカじゃない。私達がツァールスに入ったら、その瞬間に連中は軍を用いて妨害する可能性が高いって考えるべきだからよ」


 敵とも言える2匹のクソは永い年月を生き抜いた邪悪極まる存在。

 ならばこそ、その身を脅かさんとする敵を迎え撃つ術に長けていてもおかしくない。

 それを前世の知識と経験から知り、実際に経験してきたからこそ、ヘルガは件のクソ2匹が王宮で迎え撃たない。

 そんな可能性を考えていた。


 「連中にすれば、実行の時間さえ稼げば勝ちなんだから、私がツァールス入りしたら軍を差し向けて私を殺害するなり、生け捕りにするなりして妨害し続ければ良いだけでしかない」


 指揮官として采配を振るって来たからこそ、ヘルガはその可能性も考えていた。


 「ツァールスの王宮は実質、クソ2匹の手に落ちてる。なら、その主である王に命じさせれば良い……ヘルガと言うハイエルフの冒険者を見つけ次第捕らえるか、殺害せよとね。実に簡単でしょ?」


 ヘルガが語れば、3人は反論したくても出来なかった。

 だが、ヘルガは気にせずに続ける。


 「だからこそ、ツァールス入りの際に私は敢えて堂(・)々(・)と(・)入(・)国(・)す(・)る(・)。そうする事で向こうの動きがどう出るか?確認出来るから……貴方達はティナの転移で密入国してくれれば良い。そうする事で私は普段通りの単独(ソロ)で討伐しに来たと、錯覚させる事が出来るかもしれないから」


 指揮官でありながら、涼しい顔で自らの足で危ない橋を渡ろうとするヘルガに対し、3人は言葉を失ってしまう。

 だが、ヘルガはそれがさも当然の事の如く言う。


 「勿論、そうなった時はなった時で好都合よ……私が陽動となってる間に貴女達は安全に奥深くまで潜入する事が出来るんだから。で、潜入したら丁度良さそうな所に隠れ家を構築して欲しいのよ」


 「隠れ家ですか?」


 ティナが首を傾げると、ヘルガは答える。


 「そう、隠れ家。其処を前哨基地も兼ねた攻撃の橋頭堡にする……そうする事で安全な寝床を確保出来るし、現地偵察して得た情報を元に作戦の中身を更に詰める事が出来る様にもなる」


 其処まで語ると、エヴァンジェルは合点がいった様に返した。


 「成る程。つまり、盗賊達の盗人宿みたいなのを私達に用意して欲しいわけね?」


 「そう言う事。出来れば、万が一に備えて王都を囲む例の工事の外側にあって、人があまり近付いて来ない所に作って欲しい……」


 「それなら俺の方で選定します」


 ダヴィドが間諜である自分の役目と言わんばかりに選定を志願すれば、ヘルガはスンナリ認めた。


 「じゃ、貴方に隠れ家の選定を一任するわ」


 信頼と共に告げられれば、ダヴィドは「ありがとう御座います」そう返した。

 そんなダヴィドを他所にエヴァンジェルとティナは呆れ混じりに漏らす。


 「指揮官なんてガラじゃないって言いながら、知将や名軍師と称えられても違和感ない計画立案する彼女って本当に何なんですか?」


 「え?ヘルガ」


 エヴァンジェルの答えにティナは残念そうに納得するのであった。


 「その答えに納得出来てしまう私自身が嫌んなるんですけど?」



ブクマと星評価。

感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます

なので下さい。マジで下さい


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。