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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
クソ面倒でクソ厄介なクソ仕事

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79/90

約束は守れ。嫌なら降りる


 「楽観視も希望的観測も辞めて」


 「何故だね?」


 「私達は黒幕の思惑に対して後手後手に回り過ぎてるのが現状。だから、既に疫病を撒き散らす準備が整っててもおかしくないんだから……」


 そう。ヘルガの言う通りであった。

 あの夜に邪竜がヘルガに教えなければ、自分達は何も知らぬまま最悪の展開を迎えていた。

 黒幕の立てた計画が何処まで進んでいるか?未だ解らず、既に疫病を撒き散らす準備が完了していても不思議では無い程に後手に回っているのが、現状なのだ。

 だからこそ、ヘルガは楽観視も希望的観測も出来ないし、するなとトマーゾ殿下へ諫言する要注意言った。

 そんなヘルガにいつの間にか来たダヴィドは尋ねる。


 「黒幕に関して何か掴めたかい?」


 「残念ながら掴めてないわ。私の情報源もツァールスに来てないかもしれないと言ってたくらいよ……」


 「成る程。君は黒幕が居ると考えてるが、居ない可能性は?」


 当然考えうる可能性をダヴィドが口にして問えば、ヘルガはそれを斬り捨てた。


 「それは無いわ」


 「何故だね?」


 「ソイツは邪竜に自分の計画に乗れと手下を送って誘った後、私がシレーラスに居る事を教えてた」


 此処に来る前に邪竜から得た事実をヘルガが答える事で黒幕の存在への根拠にすれば、ダヴィドの後に続いて来たマクスウェル司教が尋ねる。


 「つまり……今こうして我々が対応策を協議してるのも織り込み済みかもしれないのか?」


 「そう見た方が良い。だからこそ、解らないのよ」


 ヘルガが首を傾げる様にして言うと、3人もそれに対して首を傾げてしまう。

 そんな3人にヘルガは首を傾げながら語る。


 「普通ならさ、これほどのデカい計画が成功するのか確認したり、計画の進捗を確認する為に自ら足を運ぶなり、人を送るなりするじゃん?」


 「まぁ、普通ならそうだ」


 ダヴィドが同意見と言う様に返すと、他の2人も同様に頷いた。

 そんな3人にヘルガは今自分が知る事実を述べ、確認する様に問う。


 「でも、情報源からの情報が事実だとそう言う来客は確認出来てないと来てる。普通ならあり得ないでしょ?」


 「あり得ないな。僕だって大きな計画を臣下と臣民に進めさせてるなら、定期的に視察しに行く……」


 トマーゾ殿下が王族としてヘルガの疑問を認める。

 そんな意見をマクスウェル司教とダヴィドも理解出来るからこそ、疑問は増してしまう。

 だが、幾ら考えても答えは見付からない。

 故に……


 「あのクソ2匹に直接聞くしか無いわね」


 「上手く行くのかい?」


 マクスウェル司教が怪訝に問うと、ヘルガは暢気に返す。


 「現時点で黒幕と接触してるのが判明してるのクソ2匹だけじゃん……だから、クソ2匹から聞くしか方法は無い。他に方法が……そう言えば、私がアンタにくれてやったバカ2人から情報取れた?」


 ヘルガが先日の"ちょび"っとお仕置きして差し出した2人……ルシアンとグレタの事をマクスウェル司教に尋ねると、彼は残念そうに答えた。


 「色々と手を変えてインタビューしたけど、下っ端過ぎて何も知らなかった。勿論、サイラスから何処に帰るのか?それも教えて貰って人を送ったさ……でも、空振りだったよ」


 「つーことは最初から捨て駒として私に送られたのね……ん?そうなると、益々おかしいわ」


 「どう言う事だ?」


 トマーゾ殿下がまたも首を傾げると、ヘルガは答える。


 「これだけの計画を立てられる奴が私に誘いを掛けるって言う最初から結果が解ってる無駄な行動を取るのか?って謎が生まれてる……オマケにソイツは邪竜を利用して、私がこの件に引き摺り込まれる様にも仕組んだ気配もしてる」


 「考え過ぎ。そう言いたいが、君の分析を聞くと笑い飛ばせないのが酷い。なら、そうなると君をこの件に引き摺り込む目的は何だ?」


 ダヴィドがヘルガの意見を笑い飛ばさずに真剣な面持ちで尋ねると、ヘルガは正直に答える。


 「解らない。でも、予想は出来る」


 「と言うと?」


 「ルシアンの言葉が事実なら、ソイツは私の能力と私自身の知識と技術にも目を付けてる。実際、私という銃の供給源と銃の扱いを詳しく知る唯一の存在を世界の破滅だか世界相手の戦争に利用したい腹積もりがあるのは納得出来る」


 その答えに3人は納得する。

 実際、ヘルガの戦闘力と銃を始めとしたデタラメ極まる装備を詳しく知るからこそ、3人はヘルガの予想とも言える黒幕の思惑も理解し、納得出来た。

 だが、ヘルガがその手の事に関わりたがらない。

 更にはヘルガが敵に回る可能性の方が高いのも理解しているからこそ、疑問は解けない。

 だからこそ、ヘルガは自分は何を見落としているのか?それを考える。

 そして、答えが出た。


 「そう言うことか……」


 「何が解った?」


 トマーゾ殿下が問うと、ヘルガは答える。


 「"死を弄ぶ者"よ」


 その名前で3人は直ぐにハッとした様子でヘルガの考え出した答えを察した。


 「まさか……」


 「そう。私を殺して、死を弄ぶ者に私を操らせて銃を召喚。更には私の知識と技術をアンデッドとなった私から得る……成る程。考えたわね」


 ヘルガの考え出した答えに3人は言葉を失ってしまう。

 そんな3人にヘルガは涼しい顔で言う。


 「益々、あのクソデブをブチ殺したくなったわ」


 死を弄ぶ者に対し、殺意を滾らせるヘルガにマクスウェル司教は尋ねる。


 「ウチの対アンデッドの手練は要るか?」


 「要らない。と、言いたいけど万が一の際に私がアンデッドになったら最優先で私を殺ってくれると助かる」


 「解った。そうしよう」


 「後、コレが私に今の私にとって大事な要求……既に私が協力を仰いだ2人の正体を知ってる。私はそう認識してお願いする……2人が討伐対象だって理由でそっちの人間が手を出す事は絶対にさせないで」


 古より生きし、 真祖の吸血鬼(エヴァンジェル)と魔女(ティナ)。

 その2人は異端審問官からすれば、不倶戴天の断罪すべき大罪人に他ならない。

 だからこそ、今回の件がどんな形であれ片付くまで一切手出しさせるな。

 そう要求すると、マクスウェル司教が了承するより先にマクスウェル司教の上役である枢機卿が快諾した。


 「わか……」


 「それは私の方で手を打とう」


 「トレモアス枢機卿!?」


 マクスウェル司教が驚くと、トレモアスと呼ばれた枢機卿は気にする事無く続ける。


 「今回の件が終焉を迎えるまで、君の同行者に手出しは一切させぬ様に私が厳命し、君の嫌う面倒が起きぬ様に根回するのを確約しよう」


 「ありがとう御座います。その上で私は敢えて明言します……その約束が違えられた時、私はこの件から降ります」


 その言葉に皆は言葉を失う。

 だが、トレモアス枢機卿は自ら申し出た者として告げる。


 「必ず君の要求通りにしよう」


 「是非そうして下さい。今回の件は余計な面倒を抱える暇も無いので……」


 率直に告げると、ヘルガはトマーゾ殿下に尋ねる。


 「私もう帰って良い?後はそっちの対応協議するだけでしょ?」


 「別に構わないけど、帰る前に具体的な計画を聞かせてくれないかい?」


 トマーゾ殿下が王命として命じた責任者として問うと、ヘルガは涼しい顔で答える。


 「先ずは2人を救出。その後、クズ2匹を殺す……それだけよ」


 その答えに3人とトレモアス枢機卿は呆れるしか出来なかった。

 そんな3人を他所に自分の役割は果たした。

 そう判断したヘルガは会議から抜けるのであった。



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