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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
クソ面倒でクソ厄介なクソ仕事

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分析報告


 トミーの妹ちゃんとも言える王女様の警護と取材協力って面倒が終わって、休んでたけど退屈になったからシレーラスに行った。

 その時にサリーとネッドと一緒に10階層と20階層に残したまんまのお宝をゲットする事になった。

 其処までは良いのよ。

 私もシレーラス踏破前の準備運動と小遣い稼ぎに良いと思ったし、サリーとネッドの同行を反対する理由も無い。

 寧ろ、好都合とさえ思ってたから……

 順調に予定通りに終わると思ってたのに、ルシアンとグレタってバカ2人。

 それと、クソトカゲに出会ったせいで翌日には私の望む予定と気楽な生活がシッチャカメッチャカの台無し……

 前世の行いが良いとは断じて言えないけどさ……私自身は悪い事はしてないわよ?

 それでもさ……目の前に国王陛下とガイラス帝国と言う長年の敵国トップである皇帝陛下が共に居るなんて状況に付き合う羽目になるのは流石にねーわ。

 マジでどうしてこうなったのよ?





 ヘルガは自分を連行した暗部の者に案内された先と言える部屋に入ると、サマリアルのトップで数日前に顔を合わせた国王がサマリアルの長年の敵であるガイラス帝国のトップである皇帝陛下と並んで立ってる事に内心で驚いていた。

 だが、ポーカーフェイスを保つと共に臣下の礼として跪こうとする。

 しかし、それを遮る様に国王は告げる。


 「挨拶は抜きで良い」


 その言葉にヘルガは驚く。

 だが、宰相にして枢機卿である国王と同年代の男とトマーゾ殿下。それに軍を率いる将軍と言える騎士団長。

 更には皇帝陛下とその傍らに控えるダヴィド。

 そして、マクスウェル司教とマクスウェル司教の上司であろう教国の枢機卿は気にせず、国王の発する言葉に耳を傾けていく。


 「ヘルガよ。此度の件で貴様が得た情報と其処から読み取れる状況の説明をしてくれ」


 国王が命ずると、ヘルガは彼等の前に立つ。

 そうして、彼等の前に立ったヘルガは前置きにも似た結論を告げる。


 「先ず、状況は最悪の一言に尽きます」


 その言葉に周りは驚かなかった。

 だが、改めて言われた事で彼等は真剣な面持ちで耳を傾けていく。


 「先ずはツァールス王宮でありますが、王宮内に生存者は帝国より攫われた2名の碩学……ジャビール・ラーズィーとダビーヴェの両名のみと言う状況。更に、その内の1名……ジャビール・ラーズィーは疫病を悪用する為の研究をさせられていると思われます」


 疫病を悪用する。

 ヘルガが慎重に言葉を選んで告げると、周りは騒然としてしまう。

 そんな中で皇帝陛下が尋ねる。


 「それは誠か?」


 「残念ながら事実と考えるべきでしょう」


 ヘルガが丁寧に残念な事実を肯定すると、今度は国王が尋ねた。


 「邪竜は此度の件に絡んでくるのか?」


 ある意味で最大の懸念事項と言える疑問をぶつけられると、ヘルガは先程の邪竜との遣り取りを教える様に答えた。


 「あの忌々しい邪竜は傍観者。と、言うよりは観客として今回の件を高みの見物する事を私に改めて明言しました」


 「それが本当である確証は?」


 当然の疑問を国王からぶつけられると、ヘルガはハッキリ答える。


 「残念ながらありません。口約束でしかないので……」


 「それでは邪竜が介入してくる可能性も否めないのではないか?」


 国王に変わって宰相でもある枢機卿が至極当然の可能性をぶつければ、ヘルガは返答する。


 「残念ながら、それもその通りであります」


 その答えに周りが非常に困った面持ちとなると、トマーゾ殿下が尋ねる。


 「それでも君はあの邪竜が今回の件に介入しないという確信を持ってるのか?」


 トマーゾ殿下の問いにヘルガはハッキリ肯定する。


 「はい。奴の言葉が全て嘘偽りの無いものであるならば、奴は例の怪物2匹と共に世界を滅ぼす事はしない筈です」


 「何故かね?」


 「奴曰く、世界があるからこそ己の我を通せる舞台が成立している。だからこそ、己の我欲の為に世界が滅んでは困ると言うのが奴の言い分であり、本心なのでしょう」


 「つまり、あの邪竜は自分の利益と愉しみの為に君へ情報を与えた。君はそう言いたいのだな?」


 トマーゾ殿下が確認する様に問えば、ヘルガは肯定する。


 「その通りです。殿下」


 「成る程。我等の理の外に生きる伝説は我々には理解出来ないのも道理だな……」


 結論付ける様にしてトマーゾ殿下が周りに聞こえる様に言えば、今度はマクスウェル司教が尋ねた。


 「それで?例の怪物2匹は何処に居る?」


 「帝国の碩学と同様、王宮に居るというのが私の得た情報であります」


 ヘルガが例の情報屋から買った情報を開示する様に返答すると、今度は将軍が尋ねる。


 「その情報の確度は?」


 「今まで何度も利用した事がありますが、外れた事は一度もありません」


 ヘルガが確度は高い。

 そう遠回しに答えると、今度はダヴィドが質問を投げてきた。


 「王宮内に生存者は居ない。君はそう言ったが、ならば、何故に勇者召喚の事実が報告として我々の元に上がって来た?」


 ダヴィドの質問はこの場に居る面々にとって、ある意味で最大の疑問とも言えた。

 だからこそ、その疑問を解消する様にしてダヴィドが皆を代表する様にして問えば、ヘルガは答える。


 「これも私の仮説でしかありませんが、恐らくは態と教えたのだと思います」


 その答えに周りはそんなバカな……と、言わんばかりに困惑してしまう。

 だが、国王は手を伸ばしてそんな彼等を制すると、ヘルガに根拠を尋ねる。


 「何の目的があってだね?」


 「一言で申し上げるならば、こうして皆様方の意識がツァールスに向いてる事……それを目的としたからと言うのが私の考えた仮説であります」


 ヘルガが自身なりに分析して組み立てた仮説を根拠として答えると、マクスウェル司教の上役であり、異端審問官達を束ねる枢機卿が当然の様に浮かび上がる疑問をぶつけた。


 「では、勇者召喚と2匹の怪物が我々の意識を向けさせる陽動だと仮定しよう。ならば、何の為にその陽動をする?」


 「これも私の仮説であり、確証は無いに等しいですが……私が先程、疫病を悪用すると申し上げたのは御承知の事であります通り、勇者召喚と2匹の怪物に意識を傾けている間に疫病による静かな殺戮を本命として実行する為……と、言うのが私の考えで御座います」


 その答えにまたも周りは騒然としてしまう。

 そんな事がありうるのか?

 だが、実際に実行されたら対処するのが非常に難しい。

 そうした意見が飛び交うのも当然と言えた。

 だからこそ、皇帝陛下は率直に尋ねる。


 「ならば、其れ等を阻止する方法はあるのか?」


 今の報告から一番最も知りたい疑問が上がれば、ヘルガは正直に本心からの意見を答えた。


 「ハッキリ申しまして、解りません」


 ヘルガの本心からの嘘偽り無き答えに周りが訝しむと、ヘルガは気にせずに続ける。


 「ですが、現状として最も効果的なのはツァールス王宮に囚われている2名の碩学を救出する事が先決と言うのは言えます」


 その答えに反論する者は居なかった。

 そんな中で国王は覚悟を決めた面持ちで確認する様に尋ねる。


 「では、ツァールスの王宮から件の碩学2名を助けた後、君は怪物退治をするべきと言いたい訳だな?」


 「その通りであります。陛下」


 「では、その為に必要なモノを言い給え。皆様も今回の件の解決の為に尽力なされる事を確約してくれている」


 国王が必要なモノを問えば、ヘルガは答える。


 「先ずは私が協力を求め、同意してくれた同行者達に関しては完全に不問として下さい。無論、私が利用した情報提供者に関しても詮索は無しにして下さい」


 「良かろう。他には?」


 「王宮内の者達が死を弄ぶ者に操られている可能性が濃厚である以上、ツァールス王都内に皆様方が配しているだろう間者達へ私達が行く事は完全に伏せて下さい。それから、それと並行して表向きは静観してる様に演じて下さい」


 普通ならば、潜伏してる各勢力の間者達という現地協力者を利用させて欲しい……と、望むだろう。

 だが、ヘルガはその逆を選んだ。

 そして、その逆を選んだ理由を今までの遣り取りから察すると共に理解しているが故に会議に参加する面々が異論を挟む事は無かった。

 勿論、各勢力が表面上は未だ静観している様に振る舞って欲しい事も承知している。


 「解った。我等は未だ静観している様に振る舞おう……皆様も異論はありませんな?」


 国王が皆に確認する様に問えば、皇帝陛下と枢機卿が異論を挟む事は無かった。

 そんな面々に向け、ヘルガは更に要求する。


 「それから、当面はツァールス内に人員を送るのも避けて下さい。例え、王都に行かせないにしてもツァールスは完全なる敵地も同然であり、人員の身の危険もありますが、その人員から情報漏洩の危険がある以上は避けるべきと愚考致します」


 その要求に皆が反対する事は無かった。

 此処に居る者達は有能であり、国を、臣民を背負う為政者でもあるが故にヘルガの考えを理解しているからだ。

 無論、表面上は静観して手をこまねいている様に振る舞って欲しいと言う意図も理解している。

 だからこそ、国王と皇帝は直ぐに連携するかの如く言い合う。


 「当面は密輸防止という名目でツァールスから来る者達の検査を強化し、その流入を監視するべきでしょう」


 「余も同意見だ。その上で密入国者や密輸業者もこの際、徹底的に取り締まるべきだろう」


 国と臣民を背負う国の主であるからこそ、疫病と言う見えぬ敵を防ぐ事を互いに決めれば、枢機卿もその行動を支援する事を決めた。


 「ならば、私達からはアンデッドを見破れる専門家を提供致しましょう……そうすれば、死を弄ぶ者に操られた者の入国を可能な限り阻止する事が出来るかもしれません」


 「是非ともお願い致します」


 そんな遣り取りを眺めるヘルガは流石は為政者ね……と、他人事の様な気持ちながらも尊敬する気持ちが湧いた。

 しかし、だからといって今回の件の様なクソ厄介でクソ面倒なクソ仕事を私に押し付けるのは辞めて欲しい気持ちは別だ。

 そんなヘルガを察する様にトマーゾ殿下が隣に立った。


 「君のお陰で今回の件は上手く収められそうかもしれない」


 トマーゾ殿下が感謝を示す様に言うと、ヘルガはその楽観をブチ壊す様に告げるのであった。


 「楽観視も希望的観測も辞めて」



ブクマと星評価。

感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます

なので下さい。マジで下さい


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