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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
クソ面倒でクソ厄介なクソ仕事

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70/90

永生きする真祖には世間は狭い


 「成る程ね。"死を弄ぶ者"ってクソリッチーと魔導の研鑽の為だけに魔に堕ちたバカ。その2匹のクズが盛大にバカをヤラかそうとするのを貴女は可能なら止めたい……だから、貴女は私に頭を下げ、血を対価にしたと」


 大まかな事情を聴くと、エヴァンジェルは納得した様子であった。

 そんなエヴァンジェルの隣を歩くヘルガは肯定すると、更に補足する様に言う。


 「問題はそれだけじゃない」


 「と、言うと?」


 「幾つもあってどれから言うべきか?悩むけど、目下最優先なのは彼……ダヴィドの故郷から2名の碩学が攫われ、クズ2匹と共にある可能性があり、それを放置したら数え切れない人間が死に、苦しむ可能性が高い」


 ヘルガが嘘偽り無く。外れて欲しい自分の仮説を交えて言えば、エヴァンジェルは首を傾げる。


 「何をすれば、面倒臭がりの貴女が其処まで真剣になるのよ?」


 「疫病よ。未だ可能性の話だけど、奴等は疫病を何らかの形で利用して世界を滅茶苦茶にしようとしている」


 語られた仮説にエヴァンジェルから陽気さや呑気さが消え失せた。


 「それは笑えないわね」


 邪悪極まる存在から永き生を謳歌する者となった時、彼女は数多くの友を疫病で喪った。

 それ故にヘルガの仮説をそんなバカな……と、笑い飛ばせなかった。

 そんなエヴァンジェルに向け、ヘルガは更に続ける。


 「私の仮説だけど、疫病による静かな侵略を各国に仕掛けるのが本命。でも、それをするには帝国から碩学2名という拉致するのは目立ち過ぎるし、その静かな侵略を仕掛けるのも難しい」


 その仮説を聞くと、後ろで黙したまま耳を傾けていたダヴィドが気付いた様子で声を荒げた。


 「ツァールス!!」


 「そう。ツァールスで勇者召喚が行われると言う情報が流れた事で此処と帝国。それに異端審問官達は嫌でも視線を其処へ向けなければならなくなり、周りへの視界が狭くなる」


 ダヴィドの言葉を肯定する様にしてヘルガが仮説ながらも、ツァールスの件は全て陽動。

 そう答えると、エヴァンジェルは驚きを露わにしてしまう。


 「勇者召喚ですって!?」


 「えぇ、勇者召喚。2匹のクズの内の後者……貴女の言葉を借りるなら、魔導の研鑽の為に魔に堕ちたバカは魔導の専門家で優秀な研究者でもある。ソイツが勇者召喚を自分なりの形で復元しようとしている」


 ヘルガが告げると、エヴァンジェルは言う。


 「勇者召喚は人の手では無理よ。アレは神の力と手で行われたからこそ、人の手は其処への誘導をする用途の術式しか無い」


 当時を僅かながらも知るエヴァンジェルが人の手では不可能。

 そう断じると、ヘルガは自身が請け負った不可能や無理レベルの仕事が少しだけマシになった様に感じた。


 「成る程。魔に堕ちたバカにすれば、やり甲斐溢れるバカの所業って訳か……でも、そうなると、神の力と手をどう代用するのか?其処が狙い目で猶予は未だあると見ても良さそうね」


 そんなヘルガにエヴァンジェルは指揮官に意見する部下の如く言う。


 「なら、このままエレンミアの元へ向かう方が良いわ。彼女は当時、人の手側として勇者召喚の術式に携わってた」


 エレンミア。

 その名前を聞くと、ヘルガは複雑な想いを抱きながらも自身が決断した予定変更が正鵠を射ていた事に安堵する。


 「良かった。私の予想は外れてなかった」


 「どういう事だ?」


 話の見えぬダヴィドが尋ねると、ヘルガは答える。


 「ほら、ハイエルフの里に行って魔法に詳しい専門家に話を聞きに行くって言ったでしょ?」


 「えぇ、言いましたね」


 「その専門家がエレンミアなのよ」


 返って来た答えにダヴィドが驚くと、エヴァンジェルは呆れてしまう。


 「何で、自(・)分(・)の(・)母(・)親(・)に対して他人行儀なのかしら?」


 エヴァンジェルの言葉にダヴィドがまたも驚き、言葉を失った。

 だが、ヘルガは何も言わない。

 沈黙するヘルガにダヴィドが何も言えずにいると、エヴァンジェルは気にせずに尋ねる。


 「それで?エレンに話を聞いた後はどうするの?」


 「貴女のお友達でもある魔女に会いに行って、貸しを取り立てる名目で協力を取り付ける。嫌なら、契約不履行って言ってゴネまくってやる」


 八つ当たりする様に言えば、エヴァンジェルはまたも呆れてしまう。


 「ティナは約束を違えないタイプだから大丈夫。それでも不安なら、私にした様にティナにも腹を割って話せば良い。そうすれば、あの娘は何だかんだで甘いし、優しいから協力してくれるわ」


 その言葉にダヴィドは思わず聞いてしまった。


 「迷宮の魔女を御存知なのですか?」


 「偶にお茶を飲む程度の仲だけどね。で、ティナとお茶を飲んできたからエレンに会いに行って、王都に向かって歩いてたんだけど……まさか、戻るとは思わなかったわ」


 何と世間の狭い事か。と、言うよりはエヴァンジェルの顔が広いと言うべきか?

 何れにしろ、即席で出来た今のパーティは同じ目的の為に歩みを進め続けた。



ブクマと星評価。

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