予定変更。旅の道連れ追加
出発してから1日が経った翌朝。
ヘルガは朝食としてビスケットと干し肉にチーズ。それに干し葡萄を食べると、意を決した様に言う。
「行きたくないけど、話を聞いた方が良いか」
その言葉に干しナツメと煎られたナッツ。それに干し肉を食べていたダヴィドは首を傾げる。
「何処に?」
「魔女に会う前に昔の魔法から今の魔法を詳しく識る専門家の所」
本来の予定と異なる事をヘルガが言うと、ダヴィドは監視役兼連絡将校の立場として尋ねる。
「それは必要だと貴女が判断しているのは理解しているつもりです。しかし、何を聞きに行くのですか?」
問われると、ヘルガは正直に答えた。
「勇者召喚に関して。ずっと昔に禁忌にされてから今でも使われずに失った技術を今の魔導で再現出来るのか?って確認したいのよ」
その答えにダヴィドが止まると、ヘルガは気にせずに続ける。
「ツァールスで勇者召喚が行われようとしている以上、可能ならそれを止めたい。その為に妨害方法や無理矢理止める方法を獲られる可能性があるなら聞かないよりは聞く方が良いでしょ?」
「…………貴女の考えは分かります。私も貴女と同じ立場なら私も同じ様に専門家の元へ赴いて知識や知恵をお借りするでしょう。しかし、私自身は正直言って、勇者召喚が出来るのか?懐疑的です。ですが、貴女はそれが行われる前提で考えているのは何故です?」
ダヴィドが自身の意見を交えて問えば、ヘルガは1つの名前を挙げた。
「魔になった者」
「大罪人の1人ですね。私の記憶が正しければ、"死を弄ぶ者"と同じ学院に居たとありますが……」
ヘルガの言わんとする事にダヴィドは気付けなかった。
だが、ヘルガは気にせずに言う。
「魔になった者は魔導の専門家であり、研究者でもある。そんな邪悪な専門家なら勇者召喚を再現しても可笑しくないとは思わない?」
その答えにも似た問いに対し、ダヴィドは自身が迂闊であったと自覚する様にハッとしてしまう。
「だから、"死を弄ぶ者"だけでなく魔になった者も揃えたのか……」
「私の仮説でしかないけどね。でも、勇者召喚と言う古くに禁忌とされ、今となっては失われた技術を再現出来そう。オマケにそれを嬉々としてやろうとする頭のイカれたバカなんて、あのクソ野郎以外に適任は無いでしょうね……奴にすれば、禁忌として失われた技術を再現出来るなんてシチュエーションを捨てる方がバカだってタイプでしょうし」
その言葉にダヴィドは反論したかった。
自身は資料で知ってる範囲でしか知らない。
だが、今までの被害記録やプロファイリングから魔になった者がヘルガの言う通りの怪物である事は理解出来ている。
それ故にダヴィドは反論出来なかった。
しかし、疑問は持てた。
「魔になった者を用意した理由はそれで良いとしても、"死を弄ぶ者"もセットにした理由が今も解らない謎ですけど……やはり、戦力として利用する為と思います?」
「それに関しては私も戦力目的の徴用。そう考えてるんだけど、何か引っ掛かるのよ」
「何が引っ掛かってるんで?」
「"死を弄ぶ者"はその呼び名の通り、死者を操る高位のネクロマンサー。その力が戦場で発揮されれば、兵力差なんて容易く覆される……でも、勇者召喚とかの禁忌は奴の研究分野じゃない」
「では、何の為に居るのです?」
「それが解らないから頭悩ませてるのよ。それでも1つだけ言える」
その言葉にダヴィドがまたも首を傾げると、ヘルガはハッキリ告げる。
「何れにしろ碌でもない事極まれりのクソ迷惑をヤラかす。コレだけは確実に言える」
「あ、それは私に限らずバカでも解ります」
「ですよねー」
ダヴィドのツッコミにヘルガはそう返すと、真面目な面持ちで告げる。
「幸い、専門家も魔女の方向と同じ所にいる。厳密には途中だけど、そこら辺の細かい所は気にしなくて良いわね」
「それは解りました。ですが、その専門家は何者なんです?貴女の言う専門家が居そうとしたら、魔女の迷宮付近ならエルフの……まさか!?」
ダヴィドが気付いた様に声を荒らげれば、ヘルガは涼しい顔で肯定した。
「そう。私の故郷であるハイエルフの里……だから、行きたくないけど行かざるをえないって気分なのよね」
涼しい顔ながらも辟易とした様に漏らせば、ダヴィドはそれ以上は聞かなかった。
その後。
朝食を食べ終えれば、2人は歩き出す。
ダヴィドの意思を尊重する様にヘルガは速いペースで歩み続ける。
そのペースにダヴィドが難なく着いて来るのを後ろを一瞥する形で知ると、ヘルガは速いペースのまま歩く。
そうして歩みを進めていると、前から暢気に歩く綺麗な女性の姿があった。
その女性が動きやすい旅に向いた服装で武器を一切帯びずに居るのを見ると、ヘルガは立ち止まってポツリと漏らしてしまう。
「まさかね」
「何がまさかなんだ?」
ヘルガの呟きにダヴィドが首を傾げると、その女性は突然駆け出して此方に向かって来た。
その動きにダヴィドが弓を取ろうとすると、ヘルガは手で制して止める。
「辞めろ。それで死ぬんならアレはとっくに死んでる」
ヘルガの制止にダヴィドが益々首を傾げる。
だが、ヘルガは気にせずに手にしていたMk18を脇に退かす様にして首から吊るすと、走り寄って来た彼女に語り掛ける。
「久しぶりと言うべきかしら?」
その言葉に彼女……真祖の吸血鬼は暢気に返してきた。
「やっぱりヘルガだったか……久しぶり。元気?」
彼女は暢気に返すと、自分を警戒すると共に腰の刃に手を掛けるダヴィドを一瞥してから陽気に語り掛ける。
「其処の帝国の人は間諜?」
アッサリ見破る彼女にヘルガは答えた。
「そう。今請け負ってる仕事絡み」
ヘルガが平然と答えると、ダヴィドは正気か!?そう言わんばかりにヘルガを見詰めてしまう。
だが、そんなダヴィドを気にする事無く話は進んでいく。
「私が言うのも何だけど、王国の長年の敵と一緒に行動して良いの?」
「それ言ったら、真祖の吸血鬼である貴女はどうなのよ?」
真祖の吸血鬼。
その言葉にダヴィドが驚きを露わに彼女を見ると、彼女はダヴィドに向けて自己紹介した。
「あ、始めまして帝国の人。私はエヴァンジェル……ヘルガの言う通り、真祖の吸血鬼してる」
陽気な雰囲気と共に軽いノリで自己紹介されると、ダヴィドは剣を瞬時に抜こうとする。
だが、それよりも早く彼女……エヴァンジェルが何時の間にか剣の柄を押さえていた。
それ故に抜けずに居ると、ヘルガはダヴィドに言う。
「私でも勝てないのに貴方が勝てる理由が無いんだから辞めときなさい」
「しかし!」
「しかし!じゃない。後、彼女が殺る気なら私達はとっくに死んでる」
ヘルガが本心から正直に言えば、エヴァンジェルは「今の私はやたらと殺さないわよ」と、不満を漏らす。
そんな彼女にヘルガは尋ねる。
「それで?貴女は何してるの?」
「何時もの様に宛のない旅をして、土地の食事を楽しんでる」
その答えにダヴィドは本当に目の前の綺麗な彼女が邪竜に並ぶ邪悪で、強大な力を持った伝説の賞金首なのか?思わず疑ってしまう。
だが、一瞬の内に実力差を見せ付けられたが故にその疑いは直ぐに消えた。
すると、ヘルガは何かを思い付いた様にエヴァンジェルに尋ねる。
「エヴァ。貴女の元に変わった客が来なかった?」
「変わった客?どんな用件の?」
「力を貸してほしいだとか、世界を滅ぼすがどうとか抜かすアホな客」
そう問うと、エヴァンジェルは答えた。
「会ってないわね。まぁ、会ったとしても私は世界を滅茶苦茶にするとか、滅ぼすとかに興味無いし……」
その答えにヘルガは驚かなった。
驚かずに思い付いた事を頼んだ。
「だと思った。それでさ、頼みがあるんだけど……聞いてくれたりしない?」
そう前置きすると、エヴァンジェルは確認する様に問う。
「頼みって?」
「今請け負ってる仕事がさ、滅茶苦茶面倒臭い上に厄介。オマケに死ぬ可能性の方が高いってクソ仕事なのよ……だから、ブッチャけ言うと、助けて欲しい」
頼みを聞くと、エヴァンジェルはとても珍しそうにヘルガを見詰めながら問う。
「ヤバい仕事には首を突っ込まないを信条にしてる貴女が拒否らずに請け負ってる。とても、珍しいわね……明日は槍でも振ってくるのかしら?」
「それは明日になってみれば解る。私が払える対価なら払う。でも、生命とか私自身っていうのは無しにして……血なら提供するから」
ヘルガが対価を支払う意思がある事を聞くと、エヴァンジェルは平然と乗った。
「良いわ。対価は貴女の血で良い」
アッサリと手を貸す事を快諾されると、頼んだヘルガは困惑してしまう。
「頼んだ私が言うのもアレだけどさ、具体的な仕事内容を聞かないで受けるのはどうかと思うわよ?」
「貴女が珍しい事をしてるから、面白そうと思った。仕事の内容は歩きながら聞くわ」
そう言う事になれば、ヘルガは真祖の吸血鬼と言う同行者を交え、未だ困惑するダヴィドと共に先へと進むのであった。
ブクマと星評価。
感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます
なので下さい。マジで下さい




