旅は道連れ。そう言うけど、五月蝿い奴は勘弁して欲しい
"死を弄ぶ者"。
コイツもコイツでクソトカゲに並ぶ、この世界と言うか、この地域一帯で危険極まりない最悪の存在だ。
勿論、もう1匹のクソである"魔なった者"も残念な事にクソトカゲと同等に危険極まりないクソだ。
話を"死を弄ぶ者"に戻すけど、私はコイツが戦場に出ると言うなら、その戦場に絶対行きたくない。
多分、コイツを知る者達も私と同じ様にコイツの居る戦場には行きたがらない。
何せ、死者を容易く操る屍霊遣いであり、高位の魔導師でもある。
オマケに今の奴はリッチーに転生して人間を辞めてる。
だから、尚更当然と言えるだろう。
そして、周りは侮蔑と嫌味。憎悪やら嫌悪をタップリ込め、奴を"死を弄ぶ者"と呼んでいる。
そして、私は過去にコイツと一度だけ殺し合った事がある。
結果は見ての通り。
私は今も生きていて、奴も生きている。
リッチーと言う死体になのに生きてる。って、いうのも変だけど……
兎に角、私も奴もこうして生きている。
だから、奴を地獄に蹴落としてやる為に準備として私は魔女の元へ向かっている。
それなのに、何で旅の道連れが出来るのか?
私にはサッパリ解らない。
「いやぁ、実に参りましたよ。"小さなお隣さん"は盛大にバカをやろうとしてて、"因縁深い少し大きなお隣さん"は私達よりも詳しく知っているんだから……私達だって真面目に仕事してるのにですよ?」
ガイラスの訛り付きで陽気にマシンガントークをするのは、褐色の肌を持った20代後半か30代頭ぐらい男であった。
腰にシミターを差し、背には帝国の短弓。腰には矢筒を装備する彼は辟易とするヘルガを気にせず言葉を続ける。
「でも、そのお陰で高名な白金等級の冒険者と巡り会えた。その点は感謝してるんですよね」
「そう。だったら、自己紹介してくれない?どうせ、帝国の間諜なんだろうけど……」
辟易としながらも所属を見透かす様にして名を名乗れ、ヘルガが要求すれば、彼は名乗る。
「これは失礼しました。私はそうですね……ダヴィドと呼んで下さい。あ、出身はちゃんとこの国ですし、冒険者でもありますよ」
簡単な謝罪と共に彼は自らをダヴィドと名乗り、サマリアルの冒険者である事を告げると、ヘルガは面倒臭さかったが故に前置き無しに問う。
「アンタが知りたいのは何?"小さなお隣さん"のツァールス?」
「自らを腹を割って話してくれるなら、あらゆる事を知りたいですね。勿論、貴女のスリーサイズとかも」
飄々として掴み所の無い振る舞いをするダヴィドに面倒臭いモノを感じながらも、ヘルガは言う。
「ツァールスに飛び切り危険なクソが2匹居る件なら未だ裏は取れてないわよ」
「それなのに貴女は何故、高貴なる御方の依頼を受けたのです?」
「クソ2匹の情報をくれた奴が一応は信頼出来る奴だからよ」
情報提供してくれた存在。
それを聞いた瞬間、ダヴィドは踏み込んで来た。
「かの伝説が貴女に教えた点も実に興味深い疑問でしてね。私個人としても強く気になってるんですよ」
ダヴィドが間諜。
即ち、サマリアル王国内で活動するスパイとして、好奇心を露わにする冒険者を演じながら尋ねれば、ヘルガはアッサリ答えた。
「あのクソトカゲは観客としてツァールスと帝国、此処の立ち回りとかを高みの見物に洒落込む腹積もりだから、敵として現れる可能性は低いと見ても良いわよ」
「そんな大事な事をアッサリ言っちゃって良いんですか?私、帝国の人間なんですけど?」
困惑混じりにダヴィドが漏らせば、ヘルガは気にせずに問い返す。
「そっちはどう言うスタンスなの?」
「私は御仕えさせて戴いている御方と民の為になるなら、何も気にしません。これは独り言なのですが、御仕えさせて戴いている御方は今回の件でサマリアルとは事を構える気は無いとの事です」
「つまり、偉大なる帝国の偉大な皇帝陛下はツァールスの件に専念したいって事?」
ヘルガの問いにダヴィドは答えない。
ただ、人の良い笑みを浮かべるだけであった。
そんなダヴィドは思い出した様に尋ねる。
「これは私が御仕えさせて戴いている御方からの言伝なのですが、その御方も私と同様に無駄なのは承知。それでも命じられたので、お尋ね致しますが……帝国に仕える気は御座いませんか?かの御方は最高の待遇で貴女を御迎えしたいとの事なのですが……」
この時ばかりはダヴィドも真面目な面持ちであった。
だが、返って来る答えは決まっていた。
「悪いけど、私は国に仕える気は無い。つうか、渡世の仁義から見ても、私は帝国に仕えるのは駄目でしょ……後、アンタのせいで私を尾行してるおっかないのが滅茶苦茶おっかない気配をさせてるんだけど、良いの?」
自分を尾行しているトミーの部下であろう暗部の人間が少しばかり殺気立ってる事をヘルガが敢えて教えると、ダヴィドは気にしない。
「ええ、存じ上げておりますよ。ですが、私はこの国で粗相を働く気は無いので、監視をしてくれるなら私の身の潔白を証明出来て都合が良いから気にしません」
その答えに嘘偽りが一片足りとも無い事をヘルガは察すると、確認する様に問うた。
「それで?私から話を聞いたら帰るの?それとも同行したいの?」
「当然、同行出来るならしたいですよ。その方がいち早く知る事が出来そうですし、場合によっては貴女やこの国が私の同僚や御迎えさせて戴いている御方との共助する際に円滑になるので」
その答えはダヴィドがヘルガやサマリアル王国に対する連絡将校の役目を担ってる事を意味していた。
それ故、ヘルガは面倒臭いと感じながらも同行を許した。
「なら、一緒に居ても良いわよ。ただし、私の指示には従って欲しい……嫌なら、帰って欲しい」
条件付きで許せば、ダヴィドは感謝の言葉を持ってヘルガの条件を呑んだ。
「ありがとう御座います」
そう言う事になると、ヘルガは直ぐに行動を移した。
手始めに自分達を尾行する旅人に扮する暗部の2人を招き、ダヴィドは自分と行動を共にする事。
次に帝国はダヴィドの嘘じゃないなら、今回の件でサマリアルと事を構える気は無い事を。
そして、最後にダヴィドは場合によっては帝国と自分。更には帝国とサマリアルが共助する為の連絡将校として居る事を教えた。
2人の暗部は驚きの余り、目を白黒させてしまう。
だが、ヘルガは気にせずにダヴィドと言う五月蝿い同行者と共に歩みを進めるのであった。
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