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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
クソ面倒でクソ厄介なクソ仕事

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先ずは手始めに


 冒険者ギルドを後にしたヘルガは自宅へ帰ると、ちょっとした遠出の為に支度をしていた。

 目的地は此処から3日ほど徒歩で東へ進んだ先にある、サマリアル王国とガイラス帝国の国境とも言える緩衝地帯たる荒野。

 其処には知識や知恵。更には手段を提供出来るであろう、ある専門家が住んでいる。

 そして、その専門家はヘルガに"借り"があり、ヘルガは今まで取り立てずにいた"貸し"を取り立てれば済むだけの話でもあった。

 それ故に普段通りの武器と装具を纏い、シレーラスで残った食糧と予備の着替えをバックパックに詰めたヘルガは自宅を後にする。

 自宅を出ると、異端審問官の彼が待ち構えていた。

 そんな彼に対し、丁度良いと言わんばかりにヘルガは尋ねる。


 「帝国との国境に住んでる魔(・)女(・)……相変わらず、ダンジョンに籠もってる?」


 その問いを投げられると、異端審問官の彼は「歩きながら話そう」そう前置きし、歩きながら肯定する。


 「あぁ、籠もってるんだろうな……だが、ここ1(・)0(・)0(・)年(・)以(・)上(・)は(・)彼(・)女(・)の(・)顔(・)を(・)見(・)た(・)者(・)は(・)居(・)な(・)い(・)。それなのに何故、私に聞く?」


 魔女が今も居るのか?解らない。

 異端審問官の彼が正直に答えると、ヘルガは共に歩みながら次の事を尋ねた。


 「なら、魔女のダンジョンを踏破した者は?」


 「監視報告に間違いが無いなら、こ(・)こ(・)ず(・)っ(・)と(・)1(・)人(・)も(・)居(・)な(・)い(・)筈だ」


 居ない。

 そう返されると、ヘルガはポーカーフェイスで尋ねる。


 「なら、監視してる連中はダンジョンに足を踏み入れた冒険者やら何やらの顔はキチンと掌握してる?」


 「一応、入った者達の顔は押さえる様には指導されている」


 異端審問官の彼が当然の様に返すと、ヘルガは要求する。


 「だったら、ここ最近で足を踏み入れた連中をリストアップしといて」


 「何故だ?」


 首を傾げると、ヘルガはアッサリ答えた。


 「運が良ければ、ルシアンの仲間が解るかもしれないから」


 「そう言う事なら用意しておく。だが、1つ聞かせてくれ……君は何故、魔女の所へ向かうんだ?」


 問われると、ヘルガはまたも涼しい顔でアッサリ答える。


 「単純な話。私は彼女のダンジョンを踏(・)破(・)し(・)て(・)る(・)から……ただ、それだけ」


 その答えに異端審問官の彼は驚きながらも直ぐにポーカーフェイスを保つと共に納得すると、好奇心から尋ねた。


 「嘘か?真か?それは知らないが、噂は本当なのかい?」


 「噂?あぁ、魔女が創り上げたダンジョンを踏破せし者には魔女が願いを何でも叶えるってアレ?」


 「あぁ、それの事だ。君は踏破したんだろう?なら、何を願ったんだ?」


 当然と呼べる疑問を口にすれば、ヘルガは涼しい顔で答える。


 「それを今から叶えて貰いに行くのよ」


 その答えに異端審問官の彼は流石に唖然としてしまう。

 だが、ヘルガは気にする事無く思い出した様に要求する。


 「あ、悪いんだどさ……ツァールス各地にある街と村。それにダンジョンの位置を記した全体地図と、その各地の街と村の内部を詳しく記した地図を用意しといてくんない?私が此処に帰って来た時で良いからさ」


 「良いだろう。上層部は君に協力し、同時に利用しろと私に命じてるから喜んで手配しよう……」


 異端審問官の彼が自身の都合を教える様にして快諾すれば、ヘルガはもう1つの頼みを口にした。


 「なら、お願い。後、ツァールスに密輸して商売してる奴に伝手があったら教えて……これは直ぐじゃなくて良いから」


 「それも地図と一緒で良いか?」


 「ありがと、それで構わない」


 そんな遣り取りをすると、異端審問官はキチンと問うべき事を尋ねた。


 「それで?例の2匹の忌々しい大罪人に勝てる見込みはあるのかい?」


 その問いにヘルガは正直に答える。


 「その為に準備をしてる。でも、勝ち目はハッキリ言って薄いし、ブッチャケ回れ右出来るなら回れ右して、ベッドに飛び込みたい」


 ヘルガの答えに異端審問官の彼は呆れるしか出来なかった。

 しかし、それでも今の段階で2匹の大罪人を倒せる見込みがあるのはヘルガしか居ない。

 それ故に異端審問官の彼は言う。


 「君で駄目なら世界は終わるかもしれない」


 「それは滅茶苦茶困るから、どんな手を使っても殺す取り組みはするけど……期待しないでよ?流石に人間辞めて、死ぬのを忘れた様なバカ2匹に勝てる保証も無いし」


 「それでも君には勝って貰わないとならない」


 「私だって勝ちたいわよ。賞金欲しいし、世界が滅茶苦茶になった結果として滅びるとかマジで勘弁して欲しいし、それだけは絶対に嫌だから」


 ヘルガが本心から勝ちたい理由を返すと、異端審問官の彼は珍しそうな面持ちで尋ねた。


 「普段の君なら世界なんてどうなろうが気にしないだろう?」


 「そうでもないわよ。世界が滅びたら私が今まで必死こいて稼いだ金が全部パァになるのはマジで願い下げだし、その稼いだ金も世界があってこそ使えるんだから世界が滅びて欲しくないし、それを回避出来るってんなら私は動くわよ?」


 「そう言う事にしておこう」


 異端審問官の彼はヘルガが答えた理由は一部に過ぎない。

 それを察しながらも、敢えて踏み込もうとはしなかった。

 踏み込もうとしないつもりであったが、やはり気になるのが人情と言うもの。

 それ故に彼は問うた。


 「いや、この際だ。君が素直に請け負った理由を聞かせてくれ……」


 問われると、ヘルガはスンナリと答える為に敢えて問い返す。


 「其処はもっと単純。私、エルフじゃん?」


 確認する様に問い返せば、何を当たり前の事を言ってるんだ?そう言わんばかりに彼は肯定する。


 「そうだな」


 「つまり、私はこれから先……数百年どころか千年以上を生きなきゃならない訳よね?」


 「そうなるな」


 其処も当然の様に彼が肯定すれば、ヘルガは答えた。


 「その間、人間……獣人やエルフとかも含めた者達って括りとして聞いてね。そんな人間達は物語を創るわよね?」


 「それ以外にも彫刻に絵画も創る」


 「生きてる間、ずっと血腥い事をしたくないし、気分転換にそう言うのを楽しみたい。で、それは世界が滅びたら消え失せ、新作を楽しめなくなってしまう……だから、私は私の都合と欲望の為に引き受けた。それだけの話よ」


 本心から自分が素直に請け負った理由を嘘偽りを交えずに答えれば、異端審問官の彼は呆れながらも感心した。


 「君らしくない様に聞こえる。だが、変に正義や人々の為と言うよりは信じられるな……」


 「酷い言い草ね。でも、腹が立っても原因が私の顔しか浮かばねぇのが一番腹立つわ」


 「それは君の自業自得だし、残当って奴だ。楽しい会話を続けたいが、私にも仕事があるからこれで失礼するよ……」


 その言葉と共に人混みの中へ彼が消えれば、ヘルガは気にする事無く街の外へ向かって歩みを進めるのであった。



ブクマと星評価。

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