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前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
ヘルガという冒険者

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私にどうしろって言うのよ?


 ヘルガが宿に戻ると、サリーとネッドは着替えを持って公衆浴場へ向かった。

 そんな2人を見送ったヘルガは床にドカッと胡座をかいて座ると、目の前に硝煙の臭いが濃いMk18とGLOCK20を置いた。

 それから直ぐに銃のメンテナンスに必要な各種道具とガンオイルを用意すれば、ヘルガは何時もの様に整備を始める。

 20分ほど使ってMk18とGLOCK20の分解と清掃。

 そして、組み立てと動作点検を完了させたヘルガはダンプバックから弾が空っぽ。または中途半端に残ってる樹脂製の40連弾倉を取り出せば、バックパックに袋詰めされていた5.56㎜の徹甲弾を取り、弾倉に1発ずつ詰めていく。

 沈黙の中でカチカチと言う小さな金属音が暫くの間、響き続けた。

 弾倉を弾で満たしていくヘルガの顔に一片の迷いも無かった。

 だからこそ、扉を静かに開けて何も言わずに入って来た邪(・)竜(・)た(・)る(・)彼(・)女(・)は(・)野暮だったと漏らす。


 「我のせいで腑抜けたと思ったが、どうやら杞憂であったな」


 邪竜の言葉に対し、ヘルガは弾込めをしながら尋ねる。


 「なら、これから決着を着ける?余人交えず、静かで誰も居ない場所でさ?」


 だが、ヘルガの誘う様な問いを邪竜は意外にも呑まなかった。


 「魅力的な誘いだが、今は興が乗らん」


 「そう。なら、何しに来たの?」


 「何、大した事ではない。貴様とこうして語らってみたくなってな……此処座るぞ」


 その答えと共にベッドに優雅に座った邪竜は言葉を続ける。


 「貴様から迷いが消えた事は好ましく思う。だからこそ、我は余計な事は問わぬ……気にならないと言ったら、嘘偽りになるがな」


 「だったら、私が死ぬ前に教えてやるから楽しみにしとけ」


 「そう言う事なら聞かぬ。愉しみが増えるのだからな……」


 邪竜に敢えて聞かない方が良いとさせれば、ヘルガは黙々と弾込めを続ける。

 そんなヘルガの背に邪竜は語り掛ける。


 「我の元への、変な奴が来おった。其奴は我に力を貸せと抜かし、無礼極まりなかった」


 「それでどうしたの?」


 弾倉の弾込めを終えたヘルガが興味無さそうに問い返しながらGLOCK20の15連弾倉を手に取ると、邪竜は続きを答える。


 「その無礼者は世界を滅ぼすとかいう大言。否、大言と言うよりは妄言じゃな……兎に角、世界と戦い、滅ぼす為に我に力を貸せと抜かした」


 その答えに手を止めると、ヘルガは目の前に弾倉とセミジャケットのソフトポイント仕様の10㎜オートを置いた。

 そして、立ち上がって振り向けば、ヘルガは真剣な眼差しと共に尋ねる。


 「乗ったの?」


 「興味が無い。そういえば、嘘になるのう。だが、我は世界があってこそ、我が我たる所以と言える我(が)を通せるのを弁えておる……」


 「意外ね。貴女なら世界を相手にする大立ち回りを嬉々としてやると思ってたわ」


 ヘルガが意外そうにすると、邪竜は涼しい顔で返す。


 「だから、興味が無いと言ったら嘘になると言うたであろう?」


 「で、その誘った野郎の顔とか特徴を覚えてたりしない?」


 ヘルガが問うと、邪竜はヘルガが聞いてくるのを察していた上で答えた。


 「其奴を捜そうと思っておるなら、聴くだけ無駄ぞ」


 「何でよ?」


 返ってきた答えにヘルガが首を傾げると、邪竜は涼しい顔で告げた。


 「其奴なら既に我の糞となっておる。無礼で不愉快であったでな……腹が立ったので喰ろうてやった。味は不味いの一言に尽きる」


 邪竜が邪竜たる所以を示すかの如き答えが返ってくれば、ヘルガは呆れ混じりに返す。


 「私を喰う時は私が死んでからにしてくんない?生きたまま貪られるのは流石に嫌過ぎるから……」


 「良かろう。我は寛大だからな……その望みを受け入れてやろうぞ」


 ヘルガの望みを邪竜は笑顔で受け入れると、次の事を語った。


 「其奴等は下から数えた方が早そうな者。言うならば、キリのカスと言う奴じゃった……其奴は嘘偽りに満ちた偽善の世界を滅ぼす何という夢物語を熱く語ってきおってた」


 「アッレェ……なーんか、昨日辺りに聞いた覚えがあるなぁ……」


 「ほう。貴様の所へも来おったか……なら、我の知る友にも誘いがされてると思って良いな」


 ヘルガの素っ頓狂な言葉から察すると、邪竜はヘルガとこの語らいを盗(・)み(・)聞(・)き(・)し(・)て(・)る(・)者(・)達(・)に(・)向(・)け(・)て(・)前置きする様にして告げる。


 「我の知る友の大半は誘いに乗らんだろう。じゃが、面白半分に受けるだろう奴は出ないとは言わん……じゃから、餞別としてその内の2人を教えてやろう」


 その前置きにヘルガばかりか、ヘルガと邪竜の遣り取りを盗み聞くと共に監視していた者達が固唾を飲めば、邪竜は名前を明かした。



 「"死を弄ぶ者"。それと、"魔となった者(魔人)"。あやつは世界がどうなろうが、気にせんし、嬉々として世界を滅ぼさんとする。我から見ても生ける災いと言っても過言ではない……」


 邪竜の出した2つの名……"死を弄ぶ者"と"魔となった者"。

 その2つの名前を聞いた瞬間。

 ヘルガばかりか、盗み聞いてた者達は言葉を失い、顔を青褪めさせる事しか出来なかった。

 そんな様子に邪竜は愉快な面持ちを浮かべながら立ち上がると、更にオマケとして告げる。


 「もしも、あやつ等を殺さんと考えているならば……ツァールスの何処かを捜すと良いだろう。今のあやつ等は己の巣穴に居らぬ」


 世間話という形で情報を提供すれば、邪竜は用が済んだと言わんばかりに部屋を後にしようとする。

 すると、ヘルガは邪竜を呼び止めた。


 「待てよ」


 「何じゃ?」


 「アンタの狙いは何だ?」


 その問いに対し、邪竜は嘘偽り無く正直に答えた。


 「面白そうな歌劇が始まる。英雄譚となるか?それとも世界の終末となるか?何れにしろ、面白くなるだろう事は明らかだ……ならば、我は互いに激しく鎬を削り合うのを眺めたい」


 「だから、互角の戦いとなる為に貴女は教えた。そう言う事?」


 「捉え方は好きにせよ。我は我のしたい事をしたから帰るだけじゃ……」


 そう告げれば、邪竜は今度こそ部屋を後にした。

 独り残されたヘルガは大きな溜息を漏らして「私にどうしろって言うのよ?」と、盛大にボヤくしか出来なかった。



ブクマと星評価。

感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます

なので下さい。マジで下さい


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