↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世持ちのエルフ冒険者さんは、気楽に生きたい  作者: 待っててコイサンマン
ヘルガという冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/90

決闘開始


 「おい、本当に大丈夫なのか?」


 サリーが背後で自分達を眺めて煙管を燻らせる彼女……邪竜を恐怖と警戒心と共に一瞥すると、恐る恐る尋ねる。

 すると、ヘルガは暢気に返した。


 「あのクソアマの狙いは私一人だし、奴はあー見えて約束は違えないタイプでもあるわ。だから、私がヤラかさない限りは安全である……多分ね」


 呑気ながらも安心させる様に返すが、安心出来る要素はサリーには無かった。


 「ホントかよ」


 「兎に角、サリー達は急ぎでお宝を確保して」


 「…………解った」


 諦めと共に返すと、邪竜はネッドと共に宝箱の中身を引っ張り出して背嚢に詰め込んでいくサリーを見詰めながら言う。


 「ふむ。猿と呼んだのは謝ろう。その者も優れた戦士の様だな」


 伝説に謳われた邪竜として数多の戦士と戦い、それを屠り続けて来た。

 だからこそ、彼女はサリーを優れた戦士である事を看破した。

 そんな邪竜の言葉を聞くと、サリーは「止してくれ」そう返す。


 「俺はどう逆立ちしてもアンタに勝つ俺の姿が見えねぇし、そのアンタから逃げる為にやるべき事をしてるだけに過ぎねぇ、情けねぇ男だよ」


 サリーは本心からその言葉を漏らす。

 実際、ミスリル製の片手剣と魔法を打ち消す盾で武装していても、サリーは自分ではどうやっても勝てない事を悟っていた。

 だからこそ、本心から勝てないと認めていた。

 しかし、邪竜はそれを好ましく思っていた。


 「つまり、我を倒す算段が付くなら我を倒せると言う事か?」


 「好きに考えりゃ良い。何れにしろ、俺はコイツ(ネッド)と共にさっさとアンタの前から逃げてぇだけだ」


 その言葉に対し、煙管を燻らせる彼女は罵る事は無かった。

 寧ろ、サリーの言葉と態度を賞賛した。


 「良いな、貴様。名を何と言う?」


 「サリーだ」


 「サリーとやら、貴様の判断は尊敬に値する。蛮勇や無知から挑む愚かな弱者と違い、貴様は生きる事に真剣な強者だ。我はそういう者が好きでな……」


 邪竜が褒め称える。

 しかし、サリーは嬉しくなかった。

 だからこそ、吐き捨てる様にして否定の言葉を返す。


 「俺は単に死ぬのが恐いだけの臆病者なだけだ」


 「だとしてもだ。貴様は其処の小僧とヘルガを見棄てる事無く、我の前に居て、己が為すべき事を為しておる……真に臆病な唾棄すべき雑魚ならば、2人を見棄てて逃げておるわ」


 邪竜の言う通りであった。

 本当に臆病な者は自分の命惜しさに仲間を見捨て、逃げ出している。

 だが、サリーは恐怖に押し潰されながらもネッドと共に己の成すべき事を為している。

 それは邪竜が好む強者の条件を満たしていた。


 「貴様のしている事はのう、サリー……我に負ける事を、殺される事を承知の上で仲間の為、護るべき者の為に生命を賭す事と変わらん。それが出来る者は強者しか居らん……だから、誇れ。貴様は立派な戦士だ」


 「止してくれ。俺は死ぬのが恐いだけのオッサンでしかねぇ……」


 サリーの言葉に邪竜は益々好ましく感じた。

 それ故に気分が良かった。

 そんな邪竜を他所にネッドが詰め込み終えた。


 「サリー!入れ終わったぞ!」


 「よし、コレで全部だな!」


 お宝の確保は全て完了した。

 その様子に漸くか……と、邪竜がそう感じる。

 だが、ヘルガはソレに水を差す。


 「悪いんだけど、私は2人を送り届けたい」


 要求とも言えるその言葉に邪竜はどうするべきか?煙管を燻らせながら思案すると、ヘルガは畳み掛ける様にして言葉を続ける。


 「アンタと殺し合うなんて予定は私には無かった。だから、その支度をしたい……私に言い訳の余地を残さない状態で私を殺すのが目的だって言うなら、呑めよ。テメェの望み通り、私は4年前の決着をどんな形であれ、着けてやるってんだからよ……」


 ヘルガの言葉は邪竜を納得させるには充分過ぎた。

 特に、ヘルガ自身に言い訳の余地を一切残させないという点は邪竜にとって魅力的過ぎる理由であった。

 だからこそ、邪竜はそれを呑んだ。


 「良かろう。だが、我を謀った時は4年前の契約を即座に破棄し、我はその二人を貴様の目の前で喰らい、この国を我の食卓にするだけだ」


 「何で範囲が広がってるのよ?まぁ、逃げないから別に良いけど……」


 涼しい顔で邪竜に約束を違えた時のペナルティを聞き流せば、ヘルガは背にお宝をギッチリ詰め込んだ2人と共に転移のスクロールで邪竜の目の前から消えた。

 数秒後。

 シレーラスのエントランスフロアに到着すると、ヘルガは2人に告げる。


 「つーわけで、私はあのクソトカゲ(邪竜)をブチ殺しに行くから2人は先帰ってて」


 さも当然の如く涼しい顔でヘルガが告げれば、血相を変えたネッドは声を荒げながらサリーに言う。


 「本当に良いのかよ!?サリー!ヘルガと一緒にアイツを倒せば片付くんだろ!?」


 「いや、奴はヘルガとの決闘を優先してる。だから、余計な手出しをしたら奴は約束を違えたとしてこの国を文字通りの死の国に変えかねん」


 ネッドと違い、サリーは解っていた。

 余計な手出しは厳禁のヘルガと邪竜の決闘である事を……

 だからこそ、自分達に出来る事は無い。

 それを承知しているが故にサリーは告げる。


 「賭けはお前の勝ちにしてやる。だから、生きて帰って来い……俺が好きなだけ飯と酒を奢ってやる」


 勝利の祝杯を用意して待つ。

 そう告げられれば、ヘルガは笑顔で返した。


 「なら、負けられないわね」


 ヘルガは死地に赴くというのに恐怖の色は無かった。

 そんなヘルガは自分のMk18とバックパックを2人に渡すと、チェストリグも脱いで差し出し、頼んだ。


 「悪いけど、私の武器と装備。後、背嚢預かっといて」


 「あぁ、キチンと管理してやるから帰って来い。分け前の払いも未だなんだからよ」


 「益々、負けられなくなったわ」


 そう返すと、ヘルガは残り3つの内の1つと言える転移のスクロールを手にすると、邪竜の待つ死地へと転移して2人の前から消えた。


 「約束通り、戻って来たな」


 邪竜が戻って来た事に好ましく感じていると、ヘルガはゲンナリとした様子で本心を述べていく。


 「戻りたくなかったわ。でも、戻らなきゃ、アンタはこの国を死の国に変えるって言うんだから選択肢なんて無いじゃない」


 「安心せよ。貴様がこうして戻って来た時点で我はこの国に一切手出しせぬ……4年前、我と貴様で交わした契(・)約(・)通(・)り(・)な」


 4年前。

 邪竜とヘルガの戦いは痛み分けと言う結果であった。

 だが、当時の邪竜はヘルガに対し、自分の負けで良いと宣言。

 その際、勝者の権利として望みをヘルガは1つだけ言った。

 そして、その契約は今も生きており、この国では邪竜の被害は4年前から今も起きていない。

 そんな契約を護る事を煙管を燻らせながら邪竜が宣言すれば、ヘルガは確認する。


 「その契約って私が死んだ後も果たされる?」


 「それは貴様次第だな」


 「だと思ったわ。さて、末期の一服も済んだでしょ?なら、私にも末期の一服をさせてくれないかしら?」


 ヘルガが遠回しに煙管を強請ると、邪竜はそれをシュッと投げた。

 難無くキャッチすると、ヘルガは紫煙立ち昇る煙管を咥えて吸い込んでいく。


 「すぅぅ……ふぅぅ……良い葉を使ってるのね」


 「我の好みをお気に召して何よりだ」


 程なくして一服が済むと、ヘルガは煙管の火皿に残る燃える葉を地面に捨てた。

 そして、それを胸ポケットに納めると、GLOCK20を瞬時に引き抜きながら告げる。


 「返して欲しけりゃ、私の死体から取れ!」


 その言葉と共に引金を引いて銃声が響けば、それが決闘開始のゴングとなるのであった。




ブクマと星評価。

感想とかレビューを貰えたら滅茶苦茶喜びます

なので下さい。マジで下さい


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。