サリーはあー見えて滅茶苦茶強い
前回と同じ様にヘルガが先頭となり、目に付く敵モンスターを片っ端から撃ち殺しながら突き進んでいた。
前回と違う点があるとするならば、背後を突く形となり、背中からヒグマの様なデカさのモンスター達を撃っているぐらいだろう。
モンスター達は背中から5.56㎜徹甲弾を叩き込まれた事で分厚い毛皮と脂肪。それに筋肉を貫かれ、心臓を始めとしたバイタルパートが貫かれて死んでいく。
時にはフラッシュライトの明かりに気付いて振り向くモンスター達も居た。
だが、彼等は顔面にフラッシュライトと言う強烈な眩い光を浴びせられ、暗闇でも見通せる目が仇となって何も出来ずに射殺されてしまう。
そんな中、サリーが珍しく自分が前に出ると突如言い出して来た。
「お前さんにばかり戦わせるのもどうかと思うし、俺も弟子の手前、良い所を見せる必要がある」
前に出て戦う事を敢えて選んだ理由が告げられると、ヘルガはフラッシュライトで照らされる前方を警戒しながら承諾する。
「別に良いわよ。でも、年寄りの冷や水にはならない事を願うわ」
「抜かせ」
その言葉と共にヘルガが援護という形でサリーの後衛となれば、再び前進する。
歩みを進めていると、背を向ける敵モンスターが見えた。
ヘルガがフラッシュライトで照らして位置を解る様にすると、先日の得物でもあるミスリル製の片手剣と盾で武装したサリーは駆け出す。
駆けてるにも関わらず、足音を一切出さぬサリーにヘルガは流石と思いながらも周囲を瞬時に見廻して警戒。
その援護の下、モンスターの背後に忍び寄ったサリーは駆けた勢いを上手く利用し、その背に刃を深々と突き立てる。
刃を突き立てられ、心臓を上手く貫かれたが故にモンスターは断末魔の叫びを上げ、動かなくなる。
屍と化したモンスターから刃を引き抜くと、悲鳴に釣られてやって来たモンスターが見えて来た。
「敵!数3!!」
ヘルガが通知の叫びと共にフラッシュライトで3匹のモンスターを照らし出せば、サリーは瞬時に行動へ移す為に剣を振り上げながら駆け出した。
3匹のモンスターの内、一番手前のモンスターはフラッシュライトの眩い光に目が眩んでいた。
そんな隙だらけのモンスターの頭に剣を勢い良く振り下ろし、一撃で頭をカチ割って殺害したサリーは振り抜いた勢いを利用する様にして2匹目のモンスターの頭もカチ割った。
そうして2匹のヒグマの如きモンスターを一瞬の間に殺すと、3匹目が腕を振り上げ、サリーに叩きつけようとする。
だが、それよりも早くモンスターの懐に潜り込んでいたサリーは勢いそのままに心臓に刃を突き立てていた。
モンスターの一撃よりも素早く殺害し終えると、サリーは新たな得物となった血濡れの剣を一瞥してからヘルガの照らした先を警戒しながら感心の声を漏らす。
「この剣、スゲェな。斬れ味抜群だから簡単に頭カチ割れた上に刃毀れ1つ無ぇ」
「そりゃ良かったわね」
ネッドはサリーに尊敬の眼差しを。
サリーの使った剣に羨望の眼差しを向けていた。
そんなネッドにヘルガは警戒しながら言う。
「しっかり見なさい。アレが私の知る銀等級の中で最も優れ、強い冒険者よ」
その言葉にネッドは何も言わない。
だが、自分の師が白金等級の冒険者の口から最高の銀等級と言われ、誇らしい気持ちとなっていた。
だからこそ、ネッドはその後の戦いを食い入る様に見続ける。
サリーがキチンと後方警戒しろと、怒鳴ってしまう程に。
「俺ばっか見てねぇでキチンと周りの警戒しろクソガキ!」
「あ、あぁ!わりぃ!!」
怒鳴り声と共に自身に課せられた役目を思い出せば、ネッドは慌てて後ろを警戒する。
敵の姿が無く、音や匂いもしなかった事にホッとすると、ネッドは再び前を向いてサリーの勇姿とヘルガの援護を見詰める。
ヘルガがフラッシュライトで照らすと共に索敵し、モンスターの姿があればサリーが前に出て斬り捨てていく。
数が多い時にはヘルガが発砲し、数を減らしてからサリーがタイミングを計った様に突出して斬り、突き、斬殺していく。
ソレは見事なコンビネーションと言うしかなかった。
それ故に前回のヘルガ単独での殺害よりも早く敵が死ぬ様をネッドは目の当たりに出来た。
そんなネッドにサリーは師として言う。
「良いか、坊主。今見た様に単独でやるより、2人や3人でやる方が勝ち目は増す。数は力でもあるんだ」
サリーの言う通り、数は力でもある。
だが、同時に……
「だけどな、数だけあったって意味無ぇ。仲間同士の連携が出来なきゃ、烏合の衆でしかねぇし、雑魚の群れと変わらねぇ……だからこそ、仲間が何が出来て、何が出来ないのか?ソレをキチンと把握するのが必要不可欠だ」
「あぁ、覚えとくよ」
「覚えるだけじゃ駄目だ。しっかり学べ……冒険者として食っていきてぇなら絶対だ」
サリーが師として厳しく指導すれば、ネッドは真剣な眼差しと面持ちで学ぼうとする。
そんな2人を見ると、ヘルガは少しだけ羨ましさと懐かしさを覚えてしまう。
「私も弟子取ろうかしら」
そんなボヤキをポツリと漏らすと、サリーはフラッシュライトで照らされる前方を警戒しながら呆れ混じりに返す。
「寧ろ、おめーは何で弟子取らねぇんだよ?お前、何だかんだ教えるの上手だし、締める所はキッチリ締めれるんだから弟子取りゃ、優秀な冒険者を育てられるべよ?」
「面倒臭いのもあるけど、私の場合は私自身がレアスキルに依存してるから駄目な育ち方しそうだし、弟子が独り立ち出来なくなりそうだからさ……」
ヘルガの答えにサリーは納得するしか出来なかった。
「あー、お前のデタラメ過ぎる装備や武器が当たり前となっちまったら、そりゃ健全じゃねぇわな……だから、ブライディの新人育成手伝えを毎度拒否ってるのか?」
サリーはギルド長であり、共に冒険者となった旧知の友でもあるブライディがヘルガに後進育成の為に教官もやれと言われてるのを知っていた。
だが、ヘルガは言われる度に拒否し続けて来た。
その理由がヘルガの持つレアスキルが理由なのか?そう問うと、ヘルガの答えは違った。
「いや、単に面倒臭いから」
「だと思ったよ。このクソエルフがよ……だけど、お前さんの身体を鍛えて力強くなったり、動き続けられる体力の付ける方法は誰でも出来るだろ?そう言うの教えてやれば良いじゃねぇか」
「嫌よ。面倒臭い……」
またも面倒臭いと言う答えが返って来ると、サリーは呆れてしまう。
「お前、デタラメ過ぎる装備と武器を差し引いても冒険者としての腕は最高なのにそれはねーだろ?まぁ、気持ちは分からんでも無いけどよ」
「じゃ、それで良いじゃん」
ヘルガが悪びれる事無く笑顔で返せば、サリーは諦めと共に前進を再開する。
そうして各階層を突き進んでいく内に27階層から22階層へ到達したばかりか、21階層目に昇る階段の前まで来た。
時間にすれば、前回よりもとても早く5階層分進めている。
それ故に未だ空腹になっていないヘルガは敢えて、どうするか?2人に尋ねた。
「どうする?此処で大休止する?私はどっちでも構わないけど?」
その問いに対し、サリーはベテランとして答える。
「無理する必要もねぇし、余裕ある内に飯喰っとこうぜ」
そう言う事になれば、前回と同じ様にヘルガが警戒に立ってからサリーとネッドが食事を始めるのであった。




