賭けは私の勝ちで良いかしら?
2人が買い出しから帰って来た後。
準備は直ぐに完了した。サリーとネッドは3人分の食糧を1日分買ってきたが、其れ等全てを持っていく事になった。
万が一……ヘルガの計画に狂いが生じた等を備えるならば、それは当然の事とも言えた。
その後。ダンジョン内で一食浮かせる為、パフォーマンスをキチンと発揮出来る様にする為、前回と同じ様に食事をしてから出発となり、今はシレーラスの中に居る。
「それで?何処をどうやれば、7階層を進むだけで済む様になるんだ?」
サリーが訝しむ様に問い、ネッドが好奇心を露わに見詰めてくれば、ヘルガは雑嚢からある物を取り出して見せる。
「ソイツは転移スクロールか?」
確認する様にサリーが問えば、ヘルガは暢気に肯定する。
「そうよ」
その肯定にサリーはハッとした様に気付くと同時、先日の事を思い出す。
そんなサリーとは対照的にネッドが首を傾げると、これから悪戯しようとする悪童の如き笑みを浮かべるヘルガは今居るエントランスフロアの床に魔力でタグ付けした。
タグ付けが程なくして終わると、ヘルガは転移スクロールに魔力を通し、発動させる。
そして、眩い魔力光と共に数秒後。
ヘルガ達、3人は27階層目に転移していた。
「はい、27階層目に到着ッと……」
その言葉にネッドばかりか、サリーも啞然として言葉を失ってしまう。
だが、ヘルガは気にする事無く悪戯に成功した悪童の様な笑みと共に告げる。
「今居るのは27階層目の途中。此処から逆走する様に進めば、20階層目まで7階層進めば良い……でしょ?」
私の計画通りでしょ?
そう問う様に笑顔で告げられると、ネッドはヘルガが今した事に理解が及ばずにポカーンと呆然。
だが、啞然としていたサリーは直ぐに気を取り直すと、呆れの籠もった言葉を漏らしてしまう。
「真面目に20階層まで地道に進もうって考えてたのが、アホらしくなってくるな」
普通ならば、サリーの言う通り、大量の食糧と水を用意して食糧と水の消費を計算しながら地道に進まなければならない。
だが、こうして実質的に1日で終わる状態に持ち込まれてしまえば、アホらしくなるのも当然と言える人情と言えた。
そんなサリーに対し、ヘルガは笑顔でしてやったりと言わんばかりに宣う。
「賭けは私の勝ちで良いかしら?」
しかし、サリーはヘルガの勝利宣言に対して水を指した。
「いや、未だお前の勝ちじゃねぇ」
「何でさ?」
ヘルガが少しムッとした様子で問うと、サリーはハッキリ言う。
「7階層進むだけで済む。これに関しては文句の付け所が無い。デタラメ極まり過ぎて真面目に冒険者してる俺的にはムカつくがな。だが、お前は1日も掛からずに帰れるとも言った……だから、その言葉通り、1日も掛からずに行って帰れたら其処でお前の勝ちになる」
理路整然とした正論をサリーから叩き込まれると、ヘルガは更にムッとしてしまう。
「屁理屈捏ねやがってこの野郎」
「屁理屈じゃねぇ。事実だ」
今度はサリーがニンマリと笑って宣えば、ヘルガは少しムカつきながらも認めるしかなかった。
「はいはい、解りましたよーだ……帰ったら覚えとけよ」
そんな和気藹々とした遣り取りを啞然としたままながらも見ていたネッドは「相変わらず仲良いな」と、呆れるしか出来なかった。
ヘルガのデタラメ極まりない計画に関しては触れない。
何故なら、ネッドの中でヘルガは自分の常識外なデタラメ極まりない存在として認識されている。
それ故に「ヘルガだから……」と、言う理由からツッコむのを辞めざる得なかった。
「じゃ、さっさと行きましょうか……賭けに勝ちたいから」
手にしていたMk18のセイフティをフルオートに合わせたヘルガが言えば、2度目の探索が始まるのであった。
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